第770話 23枚目:イベントのお知らせ

 どうにか無事テストも乗り越え、ボックス様の試練であるだだっ広い草原にひたすら巨大な土の壁を出現させ続ける事約リアル1週間。思った通り「築壁の小槌」は「築砦の小槌」へと進化した。これ絶対最後は築城になるだろ。

 砦と言っても本当に簡易のものしか作れないらしく、まだまだひたすら地面を叩き続ける必要はあるんだけど。しかし時々「月燐石のネックレス・祝」の鎖を巻いて耐久度の回復をしているとは言え、私が普通に振っても壊れない装備だからな。貴重だ。

 で、月が替わってリアル6月。北国の大陸ではあるんだろうが、その何処で城付きの本気戦争をやる事になるんだ? と思って、イベントのお知らせを確認してみる。


「……こう来ますかー」

「こうなるんすねー……」


 もちろん既に例の設計図は『アウセラー・クローネ』全体で共有してあるので、そちらは心配していない。「第四候補」辺りが何とかしているだろう。なので、問題はそのバックストーリーとイベントの会場なのだが……。

 例によって頭の上に乗っているフライリーさんと一緒に読んだイベントのお知らせによれば、会場は北国の大陸、というより、その東側の海になるようだ。海の上で何で城が出てくるんだと思うんだが、正しくはそこに大量に流れ出ている流氷が舞台になるらしい。

 そしてその流氷は、上にモンスターを大量に乗せた上に、流氷自体が大陸に辿り着くと巨大なモンスター(氷製ゴーレム)になるのだそうで、これを阻止・迎撃するのがイベントの趣旨となるようだ。さてそれでは、バックストーリーを確認してみよう。



 北の果てで起きた異常をどうにか抑え込むことに成功し、神々が安堵の息を吐いたのもつかの間。恐らくはこの大陸における、大半の異常の原因だと思われる不自然に巨大な流氷から、モンスターの群れが迫ってこようとしている事を神々は知った。

 異常を抑え込むことに成功したとはいえ、まだ通常の状態とは程遠い北の果て。辛うじて平和を取り戻したとはいえ、安定しているとはとても言えない雪に覆われた大陸。そのどちらも、モンスターの大きな群れに襲われてはひとたまりもない。

 しかし、異常を抑え込むために力を使った神々も万全とは程遠い。それでもどうにかしなければならないと、神々は疲れた身をおして話し合い、対策を講じて、召喚者へと託宣を下すのだった――。



 と言う事で、基本は防衛戦になるらしい。規模が違うとはいえ、例の世界規模スタンピートの再現だろうか。なるほど、城ぐらいは必要になるな? 完全にタワーディフェンスだ。

 お知らせによれば、大陸にある町や村、主要な施設などが防衛対象に設定され、それを壊されるとポイントに大幅なマイナスが付くらしい。もちろん修復すればある程度リカバリーは出来るが、これは壊されたら負けだと思った方が良いだろう。

 で、防衛目標は氷の大地にも存在していて、そっちは破壊されるとその瞬間にイベント自体での敗北が決定するというかなり厳しい条件だ。まぁ今回のイベントのバックストーリー考えれば、そりゃなぁ……って感じなんだけど。


「で、相手が流氷に乗って来る、及び流氷そのものと言う事は、寒い場所の方が大量に来るって事です。つまり北に行くほど防衛は厳しくなるという事ですね」

「まぁ寒いとこほど動くのは大変っすから、戦力分布としたらなんも間違ってないんすけどねー」


 そういう事なんだよな。多分欲をかいて海の上へ追撃しようとしたら、すり抜けられて大変な事になる奴だろうし。レイドボス「凍て喰らう無尽の雪像」の時の事を考えると、下手に超広域攻撃をしたら手痛いカウンターをくらいそうだ。

 もちろん冷人族を始め、現地の住民の人達も防衛には参加してくれる。……が、まぁ、主に補給や警戒で動いて貰う事になるだろう。前線を張るのは召喚者プレイヤーの仕事だ。

 死んでも死なないという特性があるから、というだけではなく、住民の人が倒されるとポイントがマイナスになるから。それ以前に避けられる犠牲者は出したくないし。


「まぁとにかく、出来る準備をするしかありませんね。小槌の進化とか」

「そういや先輩、あれって前は壁だけみたいだったっすけど、堀だけとか建物だけとか出来ないんすか?」

「魔力的器用値が必要そうですが、練習はしておきます」


 いや、器用ステータスは最初から物魔両方にかかるんだったかな? まぁともかく、ステータスなら後は私の慣れの問題だ。

 ちょっと荒っぽい応急処置をする必要があるかも知れないんだし、小槌を使い込んで進化させるまでの間に、その辺の制御も出来るようにしておくか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る