第767話 22枚目:最終決着

 その後誰が思いついたのか、恐らく風属性の封印魔法を溶岩に撃ち込み、同じく風魔法の縄っぽい物で引っ張り上げて、アーチ型になっている「伸び拡がる模造の空間」の上からぶっかけたりしている内に、順調に体積は削れていった。

 内海の底から吹っ飛ばされたのは、やはり巨大な「1体」だったらしく、いくら捕まえても消しても種も柔種も出てこないようだ。なので、召喚者プレイヤー達から更に容赦が無くなっている。

 なにも反撃しないなと思っていたのだが、前線からの手応えというか報告を聞く限り、防御力が随分と上がっていたようだ。なるほど、夜になったら増える以上、非常に面倒だな。


「まぁ溶岩をかけたら、大幅に柔らかくなるみたいですけど」

『流石は敵を許さぬ、破壊の権能持つ神格の力よな』


 ……だったのだが、そういう法則が分かったのもあって、非常に削るのは順調だったと言えるだろう。もはや大きいだけの的だ。もちろん、攻撃魔法を叩き込むと、種の形になって反撃されるのだが。

 溶岩が途中で尽きれば話は違ったのだろうが、この溶岩が湧いてくるのはティフォン様の権能であり、奇跡であり、そしてそれを起こしている私は必要なリソースを自然回復の内に収めている。つまり、尽きる事は無い。


『……まぁ、通常であれば、湧き続ける時間にも制限がついていたのであろうが』

「私がティフォン様のお力を借りている、という状態ですからね。種族補正とかが全力で入ってるでしょうし」

『それに、この土地と、地形自体がかの神に適した場である故な』


 もうちょっと現地竜族の人達に詳しい話を聞いていれば、どこかにティフォン様かエキドナ様、あるいは両方の祭壇があったりしたのかもしれない。後は、山を掘り進めていけば溶岩を刺激できるようになってたとか。

 超巨大な積乱雲に合わせて現地竜族の人達は旅立ってしまうから、積乱雲が移動した後って言う事を考えると、現地竜族の人達にお願いしてもらうっていうのは難しかったかもしれないが、まぁともかく。

 どうやらアーチ型の足元に根を張るようにして、事ここに至っても逃れようとしていたらしい「伸び拡がる模造の空間」。数の暴力でゴリゴリ削られていき、地上の分もしっかりと駆逐されたレイドボスは、水路を渡る大きさも無くなり水路の西側で一塊になった所で、複数人数が協力して起こしたらしい、溶岩の高波を浴びせかけられた。


「……普通の生物でも死ぬんじゃないでしょうか、あれ。というか、火事になってません?」

『まぁあれだけ人数が居るのだ。統率も取れているし、消火に関しては問題あるまい』


 どうやら1度では削り切れなかったか、それとも防御が高くなっているだけか、2度3度と溶岩の高波が浴びせられていく。もちろん周囲も大変な事になっているのだが、それはちゃんと消火する部隊が居るようだ。

 そして最終的に、たっぷりの溶岩を閉じ込めた風属性の封印魔法を、その真上から投下された所で


[件名:イベントメール

本文:レイドボス「伸び拡がる模造の空間」が討伐されました

   イベント空間内でレイドボスが討伐された為、全プレイヤーにボーナスポイントが付与されます

   イベント期間内にレイドボスが討伐された為、全プレイヤーにスペシャルギフトが送付されます

   今回のステージ終了まで、イベント空間内でのアイテム収集にボーナスが付きます]


 というメールが届いた。うん。やっぱり討伐に成功したらお知らせが来るんだな。おかしいと思ったんだよ。レイドボス出現メールは来たのに、討伐成功メールが来ないとか。

 南の空でも、いきなり曲芸飛行する召喚者プレイヤーが増えているから、聞こえないが歓声が上がっているのだろう。まぁ、しっぶとかったからなぁ。


「しかしギリギリ討伐できてよかったですね。お疲れ様でした「第一候補」」

『礼を言うのはこちらであるよ。情報と言う意味では大変と助かったである』


 さて問題は、この噴火から始まって溶岩が湧き続ける奇跡の終わり方なんだけど。

 ……気のせいかなぁ。終わるとなったら、もっかい噴火する気がするの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る