第752話 22枚目:削り後探索

 ……例によって予想通り、魔法的閃光弾が複数同時に炸裂して墜落者が出たり、当たり判定がどうなっているのか、光の柱が太陽代わりの光の天井をごっそり削ったり、相当に大変だった。

 でも火力を叩き込まない訳にはいかなかったし、それに3分の1を切った辺りで打ち止めになったのか、ほとんどが自然現象由来の抵抗になったから、(私基準では)まだマシになったのは幸いだろう。

 うん。順調だよ? 順調だ。順調すぎてちょっと警戒する程度には。


「順調なのは良い事です。……疑心暗鬼になり過ぎないように気を付けなければいけないのも、分かってはいるんですが」


 それに、そろそろ夜が終わるなーってぐらいの空にはなっているから、時間も相応にかかってるんだ。だって日が暮れる前に半分は切ってたんだから。そこから2割ぐらいしか削れてないって事になる。

 ……なんだけど。なーんか妙に引っ掛かるんだよな。この順調さが。そして私の嫌な予感は当たる確率が高い。


「いえ。削るのは良いんです。あれを削らないとどうにもならない。それは間違いないと思うんですが……」

『どうした、お嬢』

「……本当にこれで終わるか自信が無くなってきまして」

『それ、言い出したらキリがないやつだぞ。って言うか、これ以上は隠れる場所が残って無いんだろ?』

「まぁ、とりあえず、現在判明している範囲ではそうですね」


 ただし、今回の「災害」は、空間異常がメインである。見えている物が全てである可能性は、残念ながら相当に低いんだよなこれが。口に出したところで、実際なってみないと動きようがないのも確かなんだけど。

 拡声魔法の重ね掛けによる号令で、空を埋め尽くしていた光の天井が維持するべく飛び回っていた召喚者プレイヤー達の影が引いていった。ここまで夜通し動いていたから、気球に部屋を借りるか、(今はまだ)安全地帯の沖合にあるキャンプで休むのだろう。

 まぁ私とエルルとサーニャは関係ないので、「伸び拡がる模造の空間」の相手を続けるんだけど。次の昼までには、どうなるかはまた別として、とりあえず一旦目に見える範囲は削り切れる……筈だ。


「まぁまだ隠し札がある可能性もありますし、警戒はしておきましょう。何せ、大神が「災害」と認定した相手なんですし」

『何を、と具体的に言われると困るが、まぁそうだな』


 まぁレイドボスに限れば、討伐成功のシステムメールお知らせが来れば終わりは分かるんだけど。それが来れば、ようやく一息つけるかな。




 で、4日目の昼。太陽がほぼ真上だから、真昼だな。


「だから嫌な予感したって言ったじゃないですか。――なんで、見る限り黒いものの欠片も無いのに、討伐成功・・・・知らせが来ない・・・・・・・んです!?」

「その知らせって確実に来るものなのか? そもそも大神の加護も妨害されてるんだろ」

「逆に聞きますが、その大神が抱える傷に関する事に、大神が反応しないなんて事あると思います?」

「……なるほど」


 ははは。もうやっぱりなとしか言いようがないな!!

 もちろん現在進行形で、私とエルルとサーニャも含めた総員体制で探索は続けている。続けているが、とりあえずこれと言って異常は見当たらないんだよな。どうなってんだ。

 一応ワンチャン、ステージの終了と同時に届く……という可能性も無くは無いが、たぶんこれは核か何かを見落としている、つまり、仕留め切れていないってパターンだろう。


「で、問題は、それっぽいものがどこにも見当たらないって事ですが。……エルル、空間属性の強制解錠魔法とかありません?」

「なんだその凶悪な魔法。流石に俺は知らないし、知ってても教えないからな。というかどんな秘術の類だ」


 流石に無いらしい。しかしエルルの基準で凶悪とは。……空間属性ってのがまずかったのかな。他の属性に比べて、自由度が明らかに数段高いし。その自由度の分だけ危険度も高いから。

 とりあえずそれっぽい所に連打できそうな魔法は無いらしく、カバーさんたち探索班が使う探知魔法にも反応は無い。もぬけの殻になっていた研究所と推定魔族の人達の町も調べ直しているが、そちらも今の所特にこれと言った変化は無いとの事。

 そして黒いもの、「“影の獣”の欠片」を綺麗に剥がし終わった水路も調べているのだが……ちょっと呆れるほどに丈夫だというのが分かったぐらいで、こちらも成果なしだ。


「……これ、もう問題は解決したんじゃないのか?」

「私もそう思いたいんですが、そうだとは思えないんですよね」


 これは一回カバーさん達に合流して、直接話をしてみるべきか? 宿闇石の作り方も聞いてた筈だし、そっちに何かヒントがある可能性もある。

 ……ってか、そこに無かったらどうしようもないだろう。それこそあの超巨大な積乱雲にどいて貰って、島を丸ごと吹っ飛ばすぐらいしか思いつかないぞ。

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