第741話 22枚目:攻略進捗

 問題と言うか、問題の原因となっている可能性がとても高い宿闇石だが、朝になって太陽の光が当たると宿光石に変わってしまったらしい。これで宿闇石という特殊素材を回収するには、太陽の光が当たらないことが絶対条件という事が分かった。

 インベントリの中に入っていた分は無事だったらしいので、これからは発見され次第インベントリに入れておくことになるだろう。これが原因だと分かったんだ。魔法的手段で探知できるようになったら、きっと色々捗るだろうし。

 と言う訳で4日目の昼が始まった訳だが、私は変わらず、引き続き上空で封印魔法を連打、時々圧縮する事が仕事となる。


「まぁ光の柱は設置しに行きましたが、レイドボスが出現済みですからね。動きを制限する事は必要ですし」


 夜と違って自分で設置した光の柱があるので、サーチライトを使わなくても種の回収が捗るのは朗報だな。……最初の大きさの箱がそろそろ一杯になって来てるから、一旦回収するべきだろうか。

 太陽の光が一番強い真昼に一度回収する事を決めて、地上の様子を見る。今は、片方にサーチライト、もう片方に宿光石の照明具を集中させて、水門のレバーを操作してみている所の筈だ。

 実はまだ水路、の上を塞いでいる橋と言うのは黒いものの中に沈んで見えていないんだが、幅自体は水門と同じに戻っている。その上で、完全に水路が隠れている間はロックが掛かっているかのように動かなかったレバーが、動く気配がしたらしいのだ。


「宿闇石の残りがどれだけあるのかも気になりますが、まず「密閉度の高い入れ物」となっている場所を全部潰してからの話ですしね。いずれにせよ」


 封印魔法の連打は続けながらその様子も見ていた訳だが、しばらくするとうまくいったのか、外海側の水門に接する位置の黒いものが、下から押し上げられるように動くのが見えた。

 それは実にゆっくり持ち上がっていき、しばらくすると、他のもの同様、黒いもので覆い尽くされた橋だと言うのが分かってくる。どうやら片方に持ち上げるタイプだったらしく、東側が根元になるようだ。

 動力は生きていたようで、じりじりとかなりゆっくりながらも動き自体は滑らかだ。……が。その角度が、多分45度を越えた辺りだろうか。


「まぁそうなりますよね。だからこそ沿岸部に巨大な氷の入れ物を並べた上で私が上空に居て、かつ灯りで対策してるんですし」


 恐らく、蓋が開いた、という判定になったのだろう。どばぁー、っと、よく見ればじりじりと動き続けている橋の下から、大量の“影の獣”が溢れ出てきたのだ。

 もちろん大体分かっている事だったので、巻き込まれたら逃げられないほど近くに居た人はいない。そして様子を見ていた数名も、素早く空か沖へと避難していった。

 ダムの放水のような勢いで地上に溢れてくる“影の獣”は、当然そのまま地上を伝い広がっていく。その表面には、動きがあるからだけではないさざ波が立っているが、おかまいなしだ。


「とは言え、行動原理は変わらないようですし。それなら入れ食いは変わらないんですけど」


 ……しばらく見ていると、溢れ出た“影の獣”は、大半が海岸と島の中心上空の二手に分かれて流れていった。もちろん、巨大な入れ物があるからだろう。

 様子は見ながらせっせと空間属性の封印魔法を繋げていっては圧縮を繰り返す。うーん、目に見える程種が増えたな。それだけ数が居たんだろうけど。というか、今も増え続けているんだけど。

 まぁ種が回収できて実質的な体力が削れるんなら何も問題は無い。群体を指してレイドボスという判定になっているのか、それともどこかに特大の宿闇石でもあって、それが核であり本体と言う認識になっているのかは分からないが。


「まぁ、順調、ですね? まだ他にステージが分かれている以上、この島に居る分を全部捕まえても倒した扱いになるかは疑問が残りますが」


 倒しきれはしないとしても、レバーの動かし方やレイドボスの気を引く方法が分かったのは収穫だ。出来れば核の位置を確定させるところまで行きたいし、何なら夜に宿闇石を抱えた塊が出現する位置も確定しておきたい。

 何故ならその近くに大きな入れ物を置いておけば、大増殖の原因を排除しやすくなるからだ。ただでさえ莫大な体力があるとアナウンスされているのだから、その再生能力から削るのは何も間違っていないだろう。


「……一部懸念事項はありますが、もし本当にそんな事態が起こったとしても、それは自己責任ですし……」


 ……ガチャ券に目がくらんだ召喚者プレイヤーが、わざと増殖させようとするとかな。イベント空間だとひたすら邪魔になるだけだが、通常時空でやると、何の為に今こうやって仕留めようとしているのかが分からなくなるし。

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