第705話 22枚目:対処と進行

 予想した通り、夕方に勘違い仕切り屋集団……どうやらクラン『ボランティアハウス』というらしい……及び『雷霆の使徒』が、気球に乗せろと文句を言ってきた。

 が、まぁ。竜族が子供、特に同族の子供を大事にするのは周知の事実。まして今回は幼い皇女わたしも居るという事で、いつにも増して警戒度が高い。エルルとサーニャも揃ってるし。

 その上で、内輪揉めしまくっている姿をたっぷり半日見ていれば。……そりゃ、出禁にもなるわって話だと、思うんだよなぁ。


「ま、そこで納得していればここまでごねないんでしょうけど」

「よくあそこまで自分に都合よく全てを解釈できるっすね。その意志の強さだけはすげーっすわ。見習う気は一切出てこないっすけど」

「あれは見習っちゃダメな類でしょう」


 てなわけで、真っ当なボランティアの方々に謝れと言いたい名前を掲げる集団と、選民思想と相性が良かったらしい集団は、気球というか、現地竜族の人達から締め出された。PK集団? あれはそれ以前の問題。具体的に言うとモンスターと同列。論外って奴だ。

 それ以外の召喚者プレイヤーは、初動で狩られてしまったかそれぞれに身を潜めているかで見つからなかったので、2日目の夜以降に合流する事を期待したいと思う。その為に出来るだけ日中に倒さないようにしたんだし。

 まぁその集団も、箒や便利グッズの中にあった浮かぶ絨毯を使って、それぞれに空へ逃れているみたいだけど。それを撃墜するまではしていない。こっちが悪者になっちゃうからね。


「ソフィーナさんが作ってくれたお菓子を私が持って近付けば、結構な数の精霊獣が出てきますからね。こちらの救出に重点を置きましょう。種の回収は出来る範囲で、と言う事で」

「種族補正なのか私にも結構寄って来るんで、ダブルで呼び寄せるっすよー!」


 魔力、ではなくマナが集まっているからなのか、それとも災害は災害と言う事なのか、魔力が低いとこの超巨大な積乱雲の近くではうまく飛べなくなるらしい。なので、空に逃れた他の集団は近寄ってこなかった。

 ……そしてPK集団もしれっと空に逃れているので、夜の間は空中戦が勃発している。ただ、遠慮なく気球を巻き込もうとすんな。その場合は地上に叩き落とされるとは言え。

 一般平均からすれば低いと自己申告があっても、ステータスの暴力が種族特性なんだぞ。弱い訳無いだろう。……その辺ちゃんと理解してたらそもそも気球を戦いに巻き込もうとしないか。しないな。そうだな。


『ところで姫さん。あの殺しにかかってくる召喚者、邪神の気配がするんだよね。狩ってきていい?』

「後で他の集団から難癖付けられても面倒です。大神の加護で顔を記録しておくので、行動を邪魔する者同士で遊んでいてもらいましょう」

『姫さん容赦ないなー。まぁこっちが消耗する事も無いか』


 なおPK集団については通報済みだが、“天秤にして断罪”の神に誓いを立てているサーニャからそんな確認があったので、どのくらい効果があるかは分からない。邪神がらみって事は、推測だけど悪属性でのセーフティが掛かってる可能性があるから。あのゲテモノピエロと同じく。

 それでもやらないよりはいいから、出来る範囲でやれるだけはするんだけど。カバーさんに顔の映ったスクリーンショットを渡して、他にもやらかしているなら、指名手配の資料になるかも知れない。

 どうしようもなくヤバい相手がいる夜の間はまだマシと言うべきか、夜の間はまぁそんな感じだった。攻城兵器からの攻撃も無いし、比較的平和と言えるだろう。


「問題は、朝が開ける直前に妙な動きをしているPK集団な訳で……エルル、サーニャ。トドメにならないように無力化って出来ます?」

『封印魔法って言うのはそういう時の為にあるものなんだぞ、お嬢』

『で、あいつら散り散りになってるけど何がしたいんだろうね?』

「多分昨日の朝一で仕留めた召喚者プレイヤーを、復活直後にもう一度殺す為でしょう」

「あー、まともな召喚者プレイヤーがかもしれねーっすもんね」

『なるほどな』

『それなら防御魔法でもいいのかな? あ、でもそうか。召喚者って事は何もない所から出てくるんだっけ』


 そういう事だ。……組紐が割と行き渡ってるって事と、このステージに居る召喚者プレイヤーの人数比を考えると、私達ではなく、残った集団のどちらかに属する可能性も高い。

 とはいえ見殺しにする訳にも行かず、大本かもしれないあの集団が助けに行ったり、その助けが間に合ったりするとは考えにくい。残念だけど。なので、とりあえず助けてみてから、ダメだったら夜まで放置する感じで。


「まぁ正直、不意打ちだったとしても、『アウセラー・クローネうちのクラン』所属であればしのいでいるとは思うんですが、まぁ、一応です」

『本当に「一応」なんだな……』

「まぁ所属してる人のほとんどが第一陣っすもんねー。それに、皆最前線に行けるって事は、あの不意打ち地獄な雪と氷の大陸で行動できるって事っすし」


 そういう事なんだよな。不意打ちへの対処も問題無いのがうちのクランの仲間です。基本打たれ弱い「第四候補」も、逃げるだけなら問題なくできる筈だし。……若干一部というか、1人例外が居るけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る