第704話 22枚目:波乱スタート

 ひゃっほいしているソフィーナさんからおやつを貰ったり、フライリーさんとのんびり話したりしながらお札を生産しまくり、平日は過ぎていった。捕縛魔法だけならそれなりに使える人は多いと思うんだが、それでも簡単に手数を増やせる方法だからか、人気が全く落ちないのだ。

 まぁ人気があるのは別にいいんだ。何かあった時、お金の力って言うのが物を言うかも知れないし。泥棒対策さえしっかりしていれば、あって困るものじゃない。それに、少しでも早く種を回収し尽くして、推定レイドボスを殴れるようにしないといけないからね。

 カバーさん達元『本の虫』組の人達の予測では、ステージの探索率が100%……本来の島の形が見えた状態で、ある程度の数の種を回収したら、そこからステージが終わるまでは戦えるようになるんじゃないか、という事だった。


「島が本来の形、というか、大きさになった時点で、1つのステージに全ての召喚者プレイヤーが集合する形になるでしょうしね……」

「っすねぇ……」


 うんうん。と同意してくれるのはフライリーさんだ。で、2人して何をやっているかと言うとだな。


「ここまで気合の入ったPKクランがあるのも初耳ですし、攻城兵器を作っていた集団が完全な死の商人だったのも知りませんし、そのタッグと正面から戦争ケンカする事になるとは思っても無かった訳なんですが」

「しかもその上、勘違い仕切り屋集団が垢BAN追放を逃れてるとは思わなかったっすよ。まともな召喚者プレイヤー集団は“権威の神々”にがっつり加護と祝福を受けたクランで、魔物種族に超敵対的っすし」

「私何かやりましたっけ」

「たぶん何もやってねーと思うっすよ」


 うん。……割と地獄だな? っていう中で、現地竜族の人達を守りつつ、精霊獣を超巨大な積乱雲からおいでおいでしている。もちろんうちの子はほぼフルメンバーだ。エルルとサーニャが揃っているって時点で察して欲しい。

 いや、最初は普通だったんだけどな。大岩の近くに出たから、とりあえず閃光で黒いのを引っぺがして、ついでに周りに落ちているアイテム用のイベントアイテムを回収。山を登って、円の3分の1ぐらいまで海岸が描く弧が長くなってるのを山頂から確認したんだ。

 で、南の海に超巨大な積乱雲があるのを確認して、南側の斜面でスキル用のイベントアイテムを回収。ステータスをざっくり戻してから予備を確保して、光の柱を設置して、洞窟に行ったんだよね。そしたらそこに居たのがフライリーさんで、それは素直に喜べたんだけど。


「それなら早回しと行きましょう、と、さくさく通路を開けたら、そこからが大変でしたねぇ……」

「っすねぇ……」


 まず上向きの通路を殴り抜いたら、その時点で既に喧嘩腰の声が聞こえる訳だよ。その時点で「ん?」と思ったんだけど、とりあえずその時は下向きの通路を開ける事を優先したんだよね。

 そしてこっちも同じく殴り抜いたら……開通を確認するのに様子を見ていたところに、山ほど攻撃が飛んできたんだ。もちろんすぐ防いだんだけど、それがまぁよくこんな狭い通路にここまで叩き込めるなって密度でさ。

 戦闘の音を聞いて様子を見に来たフライリーさんに手伝ってもらって壁魔法で埋めたのは良かったんだけど、そこに、上向きの通路から聞こえて来た声が合流して、通路のすぐ外で結構大規模な戦いが発生したんだよね。


「なんのこっちゃと思ってる間に、仕切り屋がヴォルケの一族雲竜族の人達に接触しようとするし、“権威の神々”に加護と祝福を貰った召喚者プレイヤーの集団、クラン『雷霆の使徒』はそこに怒鳴り込んでくるし、PKはお構いなしに攻撃してくるし、流石に通路を開通させたことを早まったかと思いました」

「まぁ先輩が大出力の防御魔法で全員叩き出しましたけどね。あれ、敵味方識別任意だったんすか」

「やったら出来ました」

「まさかのぶっつけ本番だったっす!?」


 スキルとステータスを戻しておいて良かったよね、ほんと。マジで。主に制御関係を。たぶん【魔力練化】とかの相乗効果だろ、ここまで細かい事出来るのって。

 で、そういうある種の籠城をしながらフライリーさんにスキル用のイベントアイテムを渡して、ヴォルケの一族雲竜族の人達に100mの組紐の作成を依頼。他の召喚者プレイヤーがそんな状態なので、これは最悪私とフライリーさんだけでどうにかしないとダメだって事で、組紐は2本お願いしたんだよ。

 そこからうちの子による反撃が始まって、どうにか2つの通路周辺とその間の斜面を確保。そこで気球を作って貰って、空へ逃れたんだけど。


「相当に強度がある筈のあの気球をぶち抜くとは、いったいどんな構造しているのやら。……回収した弾が相当特殊だったのであんまり数が撃てるわけではない、と、思いたいのですが」

「修理が素早く済んで良かったっすねぇ……」


 幸い私の防御魔法を貫くほどでは無かったので、防御力を上げる魔法アビリティを気球全体にかけた上で、現地竜族の人達自身に警戒してもらって何とか事なきを得ている。

 そこから気球で北の方に移動し、空からほぼ直接ネーベルの一族霧竜族へ合流、こちらも全力で警戒というか防衛しながら気球を作って貰って、以下同文。そこから、現地竜族の人達に精霊獣について説明し、保護が必要だと説得して、今に至る、と言う訳だ。


「どう考えてもハードモードなんですよね」

「全くっすね。明日の夜には落ち着くといいんすけど……」

「むしろそこが一番うるさいんじゃないですかね……何で乗せないんだって難癖を付けてくる気がするので」

「あー、めっちゃありそうっすねー」


 まぁ子供達に害が及びそうだから、エルルとサーニャも含めて完全同意で、絶対乗せない方向でまとまってるんだけど。

 どうにか現地竜族の人達の避難準備と、精霊獣の救出は進められてるけど……召喚者プレイヤー同士で乱戦状態だから、種の回収が捗らないんだよなぁ。

 自分でできる範囲では回収するとしても、限度があるしなー。ある意味非協力的な召喚者プレイヤーがこのステージに集中してるって可能性も高いし、今回は他のステージの成果に期待するしかないか?

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