第701話 22枚目:方針相談

 さて、ステージが終わったら日付変更線までの間に報告会だ。もちろん、種と一緒に精霊獣(雷)にはトルスと名前を付けて呼び出しておいた。……必要ポイント数はそれなりに高かったが、一番最初のステージで入ったポイントよりは低かったので、生存で入るポイントでも問題無いようだ。

 ざっくりと全員の話が出た所で分かったのは、あの超巨大な積乱雲は全てのステージで出現した事と、それに対する“影の獣”の動きも同じだった事、そして5日目の夜の終わりに見えた姿に、大体の召喚者プレイヤーは「膿み殖える模造の生命」を連想したという事だ。


『神殿から挑戦できるようになっているであるからな。数を相手に出来る上に対処は確立済み、本体そのものの攻撃手段がほぼ無いという事で、集団戦の訓練や新技の試し撃ちの相手として人気なようだ』

「まーあの並びの中だと一番サンドバックなのは確かだな!」


 そして精霊獣に関してだが、これは霊体種族の住民を呼んだ召喚者プレイヤーが居れば気づけたらしい。なので、私が居た場所以外でも、複数のステージで救出例が出ている。

 種の回収と生存方法の確立によって、テイムされた精霊獣は確認されている限りは正式に呼び出されているようだ。……予想通り、可愛い好きの召喚者プレイヤー達が新たなモフモフに狂喜しているらしい。

 あと、テイマークランも新たな種族に沸き立っているようだ。ははは。これは光属性の火力系魔法のお札だけではなく、防御魔法のお札も作らないとダメな感じだな?


「あっはっはそれを言ったら俺だって忙しいぞー? どっかのステージで罠の開発に成功して、それが有効だったってニュースが『アナンシの壺』から発表されたからなー?」

「ははは生産人口が少ない事が全部悪いんですよ」

「まぁそうなんだけど!!」


 宿光石を加工して作れるものが増えたことによる忙しさはとりあえず置いとくとして。

 どうやら、バックストーリーの続きを読み解く最後の鍵は精霊獣だったようだ。正しくはその元と言うか巣と言うか、あの超巨大な積乱雲だったようだが。カバーさん達曰く、明日の午前中にはちゃんとした形で発表されるらしい。

 ちなみに他のステージの状況だが、問題児の中でも特にどうしようもない奴がごっそりと排除された影響か、大分スムーズに動けたようだ。これは良い事だな。


「そうなると~。いよいよあの人工空間獣っていうのが~、色々な意味での元凶って事になるのね~」

「まぁ他に居ませんしね。ただ、あの形は露骨でしょう。もっとも、あまりにも露骨過ぎてフェイクか引っ掛けではないかという気もしてきますが」

「それな!! いやまぁ? ここまで来て? 本命は別でしたーなんてことは、流石に? 無いと? 思いたいんだけど!」

『まぁ、あの島に住んでいた住民ないし生物は、おおよそ出揃ったと見ていいであろう。後は、手数の勝負であるな』


 緊急メンテでスケジュールは若干ずれたが期間的には半分だし、進捗的にはこんなもんだろう。島の大きさについてはちゃんと昼になるたびに測っていたし、前回以上の幅で大きくなっているのが確認されている。

 それに現地竜族の人達も、現在の時点で相当な人数が救出されている筈だ。元々つけていった組紐は残るが、内部で作って貰って召喚に使った組紐は残らない仕様らしいので、完全救出が成立したらそれはそれでちょっと困ってしまうかも知れないが。

 昼になるごとに作り直した地図と最初に作られた地図を比べると、確実に弧の長さが伸びている。この分なら、島が元の形を取り戻すまではあと2回か3回と言ったところだろう。


『つまりは、良い塩梅だという事であるな』

「イベント進捗としては大変望ましい状態ですね。いつものようにギリギリですけど」

「ほんっとにな! もーちょっと加減してくれてもいーんじゃねーのと思わなくもない!」

「でも~、いきなり難易度が下がったら~、深読みして勝手に忙しくしちゃいそうね~」


 ……そうだな。否定できないな。「そんな訳があるか! 絶対裏になにかあるだろ!」って、使わない準備を山ほどする自分の姿が簡単に想像できるよ。今までが今まで過ぎるから。

 流石に時間軸ごとずれている異空間と言う事でゲテモノピエロもちょっかいをかける事は出来ないと思うが、それはそれで多分次の準備をしているだろうしな。あっちはあっちで種を開けてるだろうし、便利グッズだって使い道によっては大化けする可能性がある。

 うん。つまりはいつも通りなんだよな。すっかりフリアドに染まった、って言っていいんだろうか、これ。

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