第699話 22枚目:狙われる理由
居場所はあの超巨大な積乱雲で確定。そこへ近づく手段も、魔法なり箒なり、分かっていればどうにか出来る。誘い出す手段はと言うと、現地竜族の人達に聞いて、精霊が好むという木の実を用意すればいいらしかった。
だから問題なのは、私がステータスの暴力でしれっとスルーした、あの出合い頭の突撃だ。何せ素の状態とは言え、あのニビーさんで直撃を喰らうと死にかけてたからな。あの人も第一陣の魔物種族で、一般
「キッ、ぐふぅ。け、結構効きましたが、雷を自在に操る種族は是非身内に加えたいところです! その為ならこの程度! ウッキィイイイイ!?」
「大声を出すと寄って来るんでしょうか……」
『……精霊は感情に敏感だからな。言い方はあれだが、純然たる好意なのが伝わったんだろ』
「なるほど。……防御
『そうだな』
治療が終わって、バッチコーイ! とばかり両手を上げたニビーさんへ、ドドドドド! と推定精霊獣がたくさん突撃していったのを見ての感想である。ニビーさんを箒の後ろに乗せて飛んでいるラベルさんは呆れ顔だ。
流石に新人
……まぁ、無事に受け止めても、そこから好きに身体を歩き回られると、結局大怪我をしてしまうのだが。そこはどうにか【絆】補正とか地道な躾で、柔らかい所には触らないように教え込むしかない。
「とりあえず、情報としてはまとめられましたね。必要な情報ですので、ステージ終了後共有作業に入ります」
「お願いします」
まぁ私からもカバーさん達に報告はするし、他のステージでも何かしらのアプローチはある……と、思いたいので、そっちとのすり合わせもしてからだな。
あと精霊獣だが、メインとなる属性によって姿が変わるようだ。私はとりあえず様子見として増やしていないが、鳥っぽい姿や丸々しい姿が超巨大な積乱雲から飛び出してくるのが見えていた。
これは可愛い好き
「ところでエルル。精霊獣ってこんなにたくさん一度に生まれるのが普通なんですか?」
『いや、本来はもっと少ない筈だ。……といっても、この雲の大きさが大きさだからな。その分だけ生まれる数が多いと言われれば納得する』
「なるほど。サイズというか規模的に無くは無いんですね」
『そうだな』
珍しいには違いないが、理屈的に無理は無い、か。なら、この場の前提条件として使えるな。それにエルル曰く、いつかの嵐の壁のように、自然以外の力が混ざったら精霊獣は生まれないのだそうだ。だから、この超巨大な積乱雲自体は自然発生なのだろう。
だとすれば、不自然なのは精霊もしくは精霊の力を狙う“影の獣”と言う事になるのだが、これはもう人工生命体である事が分かってるからな。ある意味不自然で当然だろう。自然発生してないんだし。
では、“影の獣”こと人工空間獣が、精霊もしくは精霊の力を狙う、その理由と言うのは何だろうか。
「……普通に考えれば、動力、動く為の力ですよね。生物的に言えば食事で、より効率がいいか、得られるエネルギーの量が多い。だから優先して狙う。そう考えれば、理は通りますが……」
『わざわざ精霊を使わなくても、普通は自分の魔力で何とか出来るんじゃないのか?』
「ですよね。……もしかしたら、その辺りが制御不能になって暴走した理由か、理由に関係するのかも知れません」
『……なるほどな。確かに精霊は世界に満ちる力の化身みたいなものだ。それがより複雑な状態で凝り固まった精霊獣は、確かに、そういう目で見れば都合が良いだろうが……』
「まぁ普通は利用しようなんて思いませんよね。だって手に負えないのが分かり切ってますし。精霊にも精霊獣にも感情はあるのですから、いずれそっぽを向かれ逃げられて、詰むのが目に見えています」
『そりゃそうだ』
だから、普通はやらない。普通は。いいかここ重要だぞ。普通は、だ。
「……この時代は、あの「膿み殖える模造の生命」という前例がありますからね……」
『……同じ時代かどうかは分からないが、俺らやお嬢たちに比べれば近いのは確かだな……』
うん。
そういう事なんだ。
……頭が痛いんだよなぁ。厄ネタ的な意味で。
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