第688話 22枚目:緊急メンテナンス
「ん?」
で。まぁ、カバーさんとパストダウンさんという元『本の虫』メンバーの中でも特に有名な軍師と、私及び「第一候補」という特級戦力。そして第一陣として活躍を続けている『ヒーローフラッグ』が揃っていて、言っては悪いがステージ自体のクリアに手間取る訳が無い。
追加でやるべき事が毎日の島の測量と周辺調査ぐらいだったこともあって、正直、スコアはともかく内容的には、現状出来得る限りの最高だっただろう。実にスムーズだった。毎回こうなればいいのにとかなり本気で思う。
それは良かったんだけど、ログイン制限を待つ間に、例によって外部掲示板で情報収集をしようと思って覗いてみた訳だよ。そしたらなんか、ちょっとした騒ぎ? が起こってるみたいでね?
「……削除の山、だなぁ」
あちこちのスレッドで、連続して数十から下手すれば百に届く数のレスが、「この書き込みは削除されました」っていう表示に変わってたんだ。そして見ている間に、1つ、また1つとスレッドそのものが削除されていく。
タイトルは普通に「サバイバルイベント報告会」とかそんな感じだったし、削除が連続で並ぶその前は普通にステージについての情報が話されていたから、すごく違和感だ。
普通に考えれば荒らしが湧いたんだろうが、今までこんな事なかったんだよな。何故ならフリアドのネットにおける見回り体制は徹底してるから。人数が増えたから変なのが増えたんだろうとは思うが、それにしたって急だな。
「うーん、他の書き込みもよく分かってない感じのばっかりか……」
まだ無事なスレッドを覗いてみるが、そちらにもほとんど情報は無い。まぁ削除されてるって事は不適切な内容だったんだろうし、内容を知りたい訳じゃ無いんだけど。
外部掲示板全体の空気も「情報交換はログインした後の方が良さそうだ」という方向になってるし、これは粘っても新しい情報が出てこないだろうか。種の回収で島が拡大していく現象、他のステージでも共通なのかどうか確認したかったんだけど。
それでもだらだらと外部掲示板を眺めていると、複数のスレッドに連続で、フリアドの公式HPのURLが載せられ始めた。一緒についてきている文章は
「は? このタイミングで緊急メンテナンス!?」
えっやっぱりあの魔族の人に通常時空で転移させられたのはアウトだったか!? と、慌てて公式HPに行ってみると、そこには確かに『緊急メンテナンスのお知らせ』という文字が。
血の気がちょっと引きつつ、その内容を確認する。……う、ん? システムメンテナンス……? しかも中身じゃ無くて、もっとこうシステム的な部分の……? うん? どういう事だ? 何か全く思ってなかった方向だぞ?
メンテナンスの終了予定時間は不明。開始時間は、これ、時間加速が終わったのと同じタイミングじゃないか。3回目のステージが終わってすぐに緊急メンテナンスが入ったって事か?
「しかし、終了予定時間不明とか……」
困ったな。急に時間が空いちゃったぞ。フリアドの場合、終了予定時間が不明だと、時間が長くなるパターンが多いし。下手したら夜の4回目のステージ開始までもつれ込むんじゃないのか。
その場合、準備が出来ないからとても困るんだよな。それだけじゃなくて、さっきのステージで回収した「人工空間獣の種」の入手を確定できない。ステージ中に開けていたとしても、出て来た便利グッズや装備はやっぱりポイントによる交換が必要だ。
外部掲示板に戻ってみると、当たり前だがスレッドがざわついていた。消された書き込みの数は大分減ったようだ。普通に会話が出来ているし。しかしシステムに関するメンテナンスってどういう事だ? さっぱり話が見えないんだけど。
「…………うーん?」
フリアドは原則「1人1キャラ」だ。それでもなおかつどうしても絶対にサブキャラが欲しい! という人はいるらしく、恐らく本体とソフトをもう1セット買うのは、そういう人に向けた抜け穴だったのだろう。
ただし。フリアドは、今まさに大人気のゲームタイトルだ。だからその本体もソフトも、例えば転売ヤー等の色々欠けている人間にとっては美味しいんだろうなぁっていうのは、まぁ、理屈上では想像できる。本体にしろソフトにしろデータにしろ、転売は絶対に許さないけど。
だから、対策するとしたらその辺りなんだろうけど……だとすると、このタイミングでやる理由が分からないな。それこそこのイベントが終わった後か、いっそ月が替わるタイミングでやってしまえば良かったのに。
「ていうか、神様は魂でプレイヤーを認識する事が出来るんだから、何かやらかしてキャラを作り直したところで、マークは外れないと思うんだけどな。身体が2つあったところで、物凄く忙しいのは間違いないだろうし。……その魂って言うのがどういう判定になってるのかが問題か。そうか」
しかし、それとこの緊急メンテナンスがどう繋がるのか分からない。……まぁ、メンテナンスが終わったら詳細が発表されるだろうし、その詳細を見て、賢い人が分かりやすく説明してくれるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます