第672話 22枚目:準備期間
何と言うか、フリアドというゲームを完全に侮っているその集団に、流石の「第一候補」も擁護の言葉が出ないようだ。本当、人数が増えると変な奴も増えるなぁ。
まぁそういう態度を取り続けるならその内通報からの警告がいくだろうし、それでも文句を言うなら
とりあえず私の方にもそのスクショを送って貰う。まぁ見た所で覚えられる訳じゃ無いんだけど、一応ね。ほら、警戒は必要だから。
「そういう訳でー、俺の成果は無し! 以上!」
「成果なら有るでしょう。近寄るな危険の集団を2つも確定させたんですから」
「そうね~。竜族の人達も~、脱出には成功したんでしょう~?」
『で、あるな。それに、最終的に話が通じる相手は纏め上げ、その全員ぐらいは最終日まで逃げ延ばせたのであろう? 十分成果は出ておるではないか』
「仲間が優しい!!」
私と「第五候補」の報告の時に、モルたん(=目立つ新人)に『バッドエンド』が接触したらしい、という話は出したんだが……たぶんその仕切り屋集団っていうのは、ゲテモノピエロ関係ないな。
獣型戦闘狂、TPOも何もなくただひたすら暴れ続けるPK集団の方はその内吸収合併されそうだから、戦闘力のある手駒が増える可能性が高いって意味で要注意だけど。
とりあえず、私と「第五候補」が見つけた「人工空間獣の種」が目的である可能性が高いって事で、カバーさん達は資料類の解読とバックストーリーを含む舞台設定の考察、私と「第四候補」は生産作業、うちの子含む残りの全員で、今回持って帰って来た種の開封作業をする事になった。
「ただし、空間属性の封印魔法は色々悪用できるので、身内に配るだけとします。一般販売は無しで」
『うむ。妥当であるな。外に出すのは闇属性の壁魔法と、その壁を吹き飛ばせるだけの光属性の攻撃魔法だけで良かろう』
「異議なーし。まぁ俺は俺で宿光石の大出力照明器具と、持ち運びしやすくて密閉度の高い箱を作るので忙しいんだけどな!」
「折り畳みになるのかしら~? 宿光石の光で照らすなら再利用できるから~、楽しみにしてるわね~」
報告会自体はここまでだ。もともとそんなに時間は無かったし、明日の午前中に作業は持ち越しだ。いくら休みの日とは言え、日付変更線を越えて起きてると、次の日が起きれなくなるからね。
で、翌日。午前中のログイン。
「あ、これってログインするたびに自動で出てくるんですね」
呼び出した覚えのないポイント交換画面(メニューのイベントページからも呼び出せる)が目の前にある不思議について数秒考え、そう結論を出した。途中でリタイアする事になった場合は時間制限があるからとかかな?
ポイントの交換し忘れが無いようにする為かも知れない。最終日の夜を生き残ればポイントは引き継げるけど、リストは新しいステージが始まった時点で消えるから、特に【絆】で竜族の人達と縁を結んでいたりすると交換し忘れが大変な事になるし。
とりあえず、今日と言うか今回のログインは生産作業を頑張る予定なんだ。何せいくら作っても足りない系のお札を、文字通り山ほど作る予定なんだから。と気合を入れて、よいせっとベッドから降りた。
ガタッ
「!?」
途端、部屋の中で聞こえた物音に、瞬時に振り返る。私はついさっきまでログアウトしていた。もちろん前回のログアウトの時はちゃんと扉が閉まって他に誰もいない事は確認している。つまり部屋は空間的にロックされていた筈で、それなら誰も途中で入れない状態な訳だ。
なのに物音がした。明らかに不自然だ。幽霊!? と思いながらもそちらを見ると――
「は……?」
「ひっ」
そこには完全に見覚えのない、燃えるような赤い髪を振り乱し、濃い赤紫の目を目一杯に見開いてこちらを見る、非常に黒い肌の誰かさんが居た。え、待って、理解が追い付かない。誰、っていうか何をして、
「ごめんなさいっ!」
混乱して思考が止まっていても、私はその誰かさんから目を逸らしてはいなかった。この
が。その一瞬、確かに私はその誰かさんの姿を見失った。次に聞こえた声は、私の背後だ。
混乱に混乱が重なって上手く頭が回せない。というか、頭がいつも通り動かせていても、それへの対処は間に合わなかっただろう。
「は?」
何故なら、とん、と優しくすらある動作で触れられた、次の瞬間には……目を閉じているのか開けているのか分からない程の深い闇の中へ、放り出されていたからだ。
……え? いや、待って? 何が起きたんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます