第584話 21枚目:危険物撤去
とりあえずその場でその爆弾を調べてみる。「離れた場所から任意で」の一文が怖いので、せめてそれだけでも無力化できれば大分違う。時間も無いしね。
幸い説明文に「一方の端に~」と書いてあるので、端っこからべりべりと剥がしてみた。そのものは、なんだろう、粘着力のある紙やすりって感じだろうか。それがバトンサイズになるまで巻かれているようだ。
で、どうやらそれっぽいものを発見。ぐるぐると巻かれた紙の束、その中心の端に差し込む形で、長さ1㎝ほど、直径1㎜ほどの大きさの、片方は水晶のように透明な石、もう片方は柘榴石のように赤黒い石だ。
「こっちの透明のが共鳴石だな」
「共鳴石って何ですか?」
「1つの塊を割って、その内の1つに刺激を与えると、他の欠片全部に同じ刺激が伝わるっていう特徴のある石だな。小さくなればなるほど細かい刺激は伝わりにくくなるし、伝わる距離も短くなる」
「……。なるほど。一定間隔でばら撒く分には小さくても連鎖的に伝わるから問題なく、起爆するのだから大雑把に発熱状態が伝わればいいわけですか」
「多分そういう事だ」
物知りエルルから聞いたところによると、もう片方の石は魔石といって、魔力が何らかの理由で石みたいな形に固まった物らしい。扱いとしては宝石の下位互換で、魔力の塊なので使ったら消える消耗品との事。
精霊が多い所には比較的出現しやすいらしく、その属性によって色が変わるんだとか。今回のこれは火と闇の属性で、一定時間後発火するように魔法がかけられていたようだ。
「そう言えばあの谷底には「精霊結晶」っていうのがありましたけど、あれとはどう違うんです?」
「あれはー……確か精霊が、魔力の循環をするのに、余分な魔力を固めて作る物だった筈だ。だから精霊が意識して作ったのが精霊結晶、勝手に固まったのが魔石だな」
「なるほど」
ちょっと話がずれたが、とりあえず無力化の方法としては、尖っている部分を切るかめくって、共鳴石と魔石を取り出すのが確実なようだ。私の場合はインベントリにそのまま突っ込んだら爆発までのカウントダウンも止まったので、どんどん突っ込んでいく事にする。
……そこそこ経ってから確認すると、一応秒数が動いているようだったから、止まっているのではなく物凄く遅くなっているらしい。
「他の襲撃を受けている場所からも同じ爆弾が見つかったみたいですねー。それも、門の近くとか倉庫とか、やられると被害が大きい場所により多く仕掛けられていたそうですよ?」
「共鳴石がある事で、爆弾と導火線を兼ねてるって事ですからね……」
「……逆に言えば、仕掛けられた場所を辿っていけば源に辿り着くんじゃないか?」
「十中八九罠に飛び込むことになるでしょうけどね。最悪、爆薬が山積みにされた中心に、特大の共鳴石と火属性の魔石が鎮座しているとかもありそうです」
「あー、そうか。それに探し当てた瞬間に爆発させられたら、除去が間に合わないと被害が出るのか」
「それでも一応辿ってみてはいるんですよー。任意での爆破が出来なくなれば、後は時間との勝負ですので!」
そんな話をしながらも、隠密状態でひたすらにリレーバトンのような爆弾を探しては撤去していく。時々戦闘している人たちにバフを飛ばしたりもするが、結構大変だな。というか、一体どれだけ持ち込んだんだ。
いやそもそもどれだけの量を作ってたんだって話だな。1つ1つに使ってる火薬の量は確かに少ないかも知れないけど、もうすぐ100本ぐらい行きそうな感じだぞこれ。特に
って事は総合すると……うん。ちょっとした小山が出来るぐらいは作ってるんじゃないか?
「火薬担当の労働環境がブラックですねー……本人が病的に火薬を作るのが好きとかでなければ」
「だったとしても、量産するなら他の人の手も使ってると思いますよー。実際のレシピは知りませんけど、初級ポーションでも1人だとこんな量は作れませんし」
「少なくとも普通の回復薬よりは作るのが難しそうだよな。しかもそこから、薄紙に接着剤塗って、その上に振りかけて、巻いて、魔石と共鳴石をくっつけてる訳だろ?」
「少しでも火の気があったら瞬間ドカンで全部ぱぁ、という危機感と隣り合わせの上で、である事を考えると、やはり労働環境的には酷いのでは」
なおかつ、それだけの材料を調達する事も出来てるって話だもんな。
…………まさかとは思うが、私達のクランハウスと同じように、どっかの陸地から離れた島を拠点化してたりするのか?
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