第574話 21枚目:依頼の内容
『……神と御使族からお嬢に話ってなると、そんなん絶対身体の一部の提供に決まってるだろうが……』
『前から言ってるけど姫さんはまだ【才幼体】なんだからね!? それに失礼なのは承知の上なんだけど神様って1回に持っていく量が多いんだよ大体の場合!!』
「それこそ手足の1本でも持っていかれるとかなら流石に「第一候補」が止めるでしょうし、髪ならすぐ伸びるじゃないですか」
『今後何かにつけて自分を削る癖がつきかねないだろうがお嬢の場合!?』
『神様相手でも理不尽に皇族のしかも子供を傷つけるならボクら戦争も辞さないからね!?』
「そこは辞してください」
過激派だな。いや、竜族的には普通なのか。あの世界規模スタンピートの前に起こった事件の事を考えると。なおエルルの声に返事をしなかったのは否定しきれなかったからだ。だって私のステータス準拠な素材って事じゃん?
まぁティフォン様達はエルルと同じ意見だろうし、ボックス様も自分を削って作るとかはあんまり好きじゃ無いから、少なくとも捧げものには使わないだろうけどさ。
しかし、少なくとも今回は神様からの直接の依頼、つまり緊急事態であり、恐らくは冷人族という種族そのものの存亡に関わっている。それに「第一候補」から聞いている必要量は髪を1房だ。これで「量が多い」とはとても言えないだろう。
「だからと言って、そもそも話を聞こうとしないのはどう考えてもダメだと思うんですよ」
『ぐっ』
『……だって聞いたら断れないじゃないか……!』
「だろうと思いました。とりあえず、「第一候補」。改めて依頼の説明をお願いします」
『うむ。すまぬな、手間をかけた』
「これに関しては全面的にエルル達が悪いです」
という事で、会話相手をカーリャさんに抱えられた「第一候補」にバトンタッチ。ついでに私も、分けて欲しいと言われた髪を何に使うのかについて聞く事にした。
現在エルル達も攻略中に参加しているクレバスだが、そこに冷人族の人達の身体が敵として姿を見せているのは既に分かっている事だ。こちらから攻撃する訳にはいかないが、あちらからは攻撃し放題という、割と最悪な状態になっている。
確保しようにもその逃げ足は速く、通常手段では到底捕まえられるとは思えない。そこで“雪衣の神々”は、彼ら自身の魂と相対すれば少しは動きを鈍らせられるか、少なくとも捕まえる目の1つぐらいは出るんじゃないかと考えたらしい。
問題は、何らかの手段で結晶化させられた冷人族の人達の魂を、どうクレバスの深部に保護しながら連れていくか、だが……色々試してみた結果、“雪衣の光雷にして飾雪”の神ことカホウポカーネ様手ずから作った簡易の衣装なら、ある程度の深さまでなら耐えられたらしい。
が、あくまで耐えられたのは「ある程度」まで。冷人族の人達の身体が出てくる深さまではどうしても耐えられず、表面を覆っていた雪が剥がれ落ちて「氷晶の核」に戻ってしまうらしい。
もちろん、信仰というか捧げものによる力の回復によって、作れる衣装の力を上げるというのが正攻法だ。だが、出来れば元凶との直接対峙の前に1人でも多く助け出したく、それではどうにも時間が足りそうにない。
そこで「第一候補」が思い出したのが……パストダウンさん経由で知ったあのランク高すぎなお札作成事件や、「第四候補」が作った杖の性能だ。
『純粋にその性能を強化する、という特性であれば、神の力の邪魔をする事なく、また余計な力を招き寄せる事も無いであろう。またあくまでも試しである故、いくらかの刺繍をするだけの量である。具体的には、1房もあれば十分だ』
「別にざっくりショートにしてもいいですよ? 一度に助かる冷人族の方は多い方が良いでしょうし。魂と合致する身体にしか効果が無い、とかだと試行回数が大変な事になるでしょうし」
『うむ。気持ちはありがたいが、彼らがギリギリ飲める範疇を越えるであるからな。それに衣装の大きさ自体が小さい故、そこまで貰っても恐らく使いきれぬ』
理の通った丁寧な説明と、最後で私が口を出したものの断られた追加の理由で、どうやらエルル達もしぶしぶながら納得してくれたらしい。……これ以上ごねたら、私が勝手に髪をざっくりやりそうだ、っていうのもあったかも知れないけど。
無事に納得と了承を貰ったところで、“ナヴィ”さん達にお礼を言ってテレビ電話状態を終了だ。
「使い切れないって言っても、使い道なんていくらでもありますよね?」
『使い道を説明して説得した以上、他の用途に使うのは約束破りであるよ』
との事なので、主にサーニャの心配は杞憂なんだよな。あとエルルの「癖がつきそう」っていうのは、中の人の問題なのである種どうしようもない。
ともあれ、だ。その衣装が上手く働いて、冷人族の人達の救出が、せめて開始出来ればいいんだけどな。流石にそろそろイベントも終わりが見えて来たから、ここで何とか大きく動いておきたいところだ。
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