第565話 21枚目:雪の城

 しばらく色々試してみて、正面の大きな門を始め、扉の形をしている部分であれば動かして出入りが出来る事と、窓は内側からしか開かない事、火属性の魔法やスキルや道具を使うと雪の降る勢いが増す事、そして壁を壊すと、真横方向に雪崩が発生する事が分かった。

 いや、びっくりしたよね。溶かせないし硬いしかすり傷ぐらいなら秒で再生するしだったから、ものは試しって事で私が殴ってみたら、絶対そんな量無かっただろって言い切れるだけの雪がどばーっと吐き出されたんだから。

 もちろんその雪に流されている間に壁は直っているし、巻き込まれた他の召喚者プレイヤーが綺麗に氷漬けになっていたから、発生した真横向きの雪崩には「ヒット状態」になる効果があったようだ。


「まぁ私は平気でしたから、以前の雪合戦の雪玉に比べればその強度は低いんでしょうけど」

「とは言え、通常の状態で防げるものではないでしょう。正攻法で攻略しなければならない、という事ですね」


 なお雪合戦と言えば、雪玉で雪製の拠点を攻め合うルールだったが、今回の雪の城も一応そういう風に攻略できる様だ。雪像達が引き続き大活躍である。しかし消滅した雪はどこに行ってるんだろうね? それをいうと、そもそもこの大量の雪が何処から来たのかって話なんだろうけど。

 まぁ雪の城そのものを削って、中の変化が収まったり城自体が小さくなったりすれば儲けもの、という事で、内部の調査に加えて外部から雪玉を投げつける事で削っていく方針となった。


「まぁ実際減ってるかどうかは分からない訳ですが。流石に今回、どこかしらに冷人族の人達の身体があるという事で、最終手段も使えませんし」


 なので、エルル、ルフィル、ルージュ、フライリーさんのパーティと、サーニャ、ルフェル、ソフィーさん達のパーティに分かれて探索に向かっている。カバーさんとルシルは私と一緒に、除雪と言う名のお留守番だ。

 とはいえ、カバーさんは掲示板やメールで忙しそうに作業をしてるけど。ルシルは、うん。【人化】を解除したまま、除雪をしている私の頭の上に器用に乗って見学だ。


『冷たい』

「防寒着を動きにくいって着なかったのはルシルでしょう」

『それは本音』

「嘘だった方が問題です」


 雪に触りたくないんだってさ。たぶんだが、寒さ冷たさというより、主に手足が濡れるとか、毛並みがべっちゃりするのが嫌なんだろう。雪が嫌なら、休憩用の建物に籠ってた方がいいからだ。

 実際、屋外にいる現状では雪が降り積もっていくのに、それは時々軽く身震いして振るい落すだけで気にした様子は無いからな。私の護衛って言うのもあるだろうけど。

 まぁ、真っ白い中に真っ黒い毛並みなので、滅茶苦茶目立って隠密どころじゃないのも確かなんだけど。だから探索じゃなくて留守番組なんだし。保護色が悪目立ちする環境に連れてくる方が悪いのも確かだし。


『主、ぬくい』

「それはいいんですけど、転寝して落ちないで下さいよルシル」

『大丈夫』


 重さは問題無いし、周りの人達のやる気が急上昇してるからいいんだけどさ。……バランス感覚は確かだから、大丈夫か。たぶん。




 私とエルルとサーニャがステータスの暴力を発揮する事で土曜日中に除雪を終わらせ、原因と思われる雪の城攻略に取り掛かった訳だが、それでも結構苦戦しているようだ、というのを、夜のルーチンと言う日常を終わらせて確認した外部掲示板で知った。

 最大の敵はその広さなのだが、広い上に構造変化を起こすものだから、いくら地図を作ってもあてにならないらしい。しかも壁の厚みも時々で変化するらしく、ここは不思議のダンジョンか!? という叫びもそこそこ確認できた。

 司令部は頑張って作られた迷路を突き合わせる事で全体の大きさや違和感のある場所を探そうとしているようだが、どうやら壁だけではなく床と天井の厚みも変えられているようで、解析は進んでいないらしい。


「こういう時に大活躍だったエコーロケーション系の技も、雪は音を吸う特性があるからほぼ無力化されていると……」


 一言で言うと、いつも通りに難易度が高いんだよな。そして今回はちゃんと特級戦力によるゴリ押しを封じる工夫もしてある。厄介だ。


「……何でその難易度を上げる頭脳を、ヒントの上手な出し方の方に回せないんだっていう話でもある気がするんだけど」


 とりあえず、いよいよ月末が見えてくるまでは、あの雪の城周辺の除雪作業が続くっぽいな。エルルとサーニャが探索に行っていても、私のインベントリ容量だけで相当な量が除雪できるし。

 氷もしくは雪の上を高速移動するって事で、最近開発されたソリに乗るのが楽しいって言うのもちょっとはあるけど。

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