第563話 21枚目:会場移動

 やっぱり大幅に召喚者プレイヤーの人数が増えたって言うのは助かるな。とにかく手数が必要な問題が、実にスムーズに片付く。まぁ、一致団結するだけの動機と、的確に指揮をする頭のいい司令部がいてこその話なんだろうけど。

 と言う現在は今月半ばを過ぎた土曜日だ。そろそろ追い込みをかけて行かないと時間的に厳しくなってくる。ましてあのゲテモノピエロ率いる害悪クランが動いている可能性が高いとなれば、なおさらだ。

 なので私も、いつものエルルとサーニャ、環境の影響を受けないルージュ、一足先に来ていて【環境耐性】が育っていたルチル、有志の好意と熱量で作られた防寒着が贈られたルフィルとルフェル、冬毛という寒冷地対応が可能だったらしいルシルと一緒に行動している。


「ルドルとルディルはちょっと間に合いませんでしたか」

「仕方ないメェ。そもそも僕らが前に出てる時点で、後方支援が足りないメェ」

「しょうがないメェ。むしろ本来なら、私達も後方支援に回るべきって話だメェ」

「種族特性って大変っすねぇ。まぁ雪像を作る手も必要ですし、メイン盾がいないのは不安っすけど頑張るっすよ」

「(・∀・*)(その分盾を多めに持ってきましたから、頑張らせて頂きますよ!)」


 ほぼフルメンバーな上に、ルージュの言葉が分かるって時点で分かる通り、ナヴィティリアさんも同行してくれているのだ。これで何とも出来なかったら力不足とかそんなレベルではない。

 だからルフィルとルフェルは私と同じ、もこもこに白い防寒着を着ている。ルチルも【人化】して同様に防寒着装備で、ルージュはその言葉通り、ごっそりと背負っている剣の半分ぐらいが盾に変わっていた。

 その中でルシルは1人【人化】を解いて、ふかふわで丸々シルエットな冬毛兎さんの状態で私が抱きかかえている。【人化】を解いても寒さ耐性は変わらない筈だが、こっちの方が寒くないらしい。


「かっ……わいいんだからもう……っ!」

「ちょっ……と破壊力が高いですね……っ!」


 そういう格好での移動なので、ソフィーさん達がちょっと機能不全気味だ。いやまぁ、何かあったらいつも以上に動いてくれるのは分かってるんだけど。今の悶えてる感情がそのままやる気になるって事だし。

 うん。だから、モンスターが一掃された中を一塊になって歩いていく私達の周りで、時々何もしてないのに召喚者プレイヤーが倒れるのは仕方ない、んだろう。たぶん。恐らく。


『主、抱え方も上手い』

「ははは、快適なら良かったです」


 もちろん、すっかりリラックスしてなんなら転寝しているロップイヤーな黒兎さんはその辺全く気にしていないが。くつろいでるなー。いやいいんだけど。これはこれで可愛いから。だからカバーさん、あとでそのスクショ下さい。そう、連写して撮ってるそれ。

 環境と状況を脇に置けば、ピクニックか? というほどほのぼのしている私達だが、当然周囲はそうではない。『可愛いは正義』の人達を筆頭に、可愛い好き召喚者プレイヤーの人達が全力で周囲の脅威を排除しているからの平和だ。

 ……私達、というか、私は快速快適エルル急行で一気に騒動の原因となっている場所まで行っても良かったんだが、こうやって移動するのはカバーさんの提案だったりした。


「まぁ、道中の安全を間違いなく確保する、という意味では、一回徹底的な火力で一掃しきる、っていうのは合理的ですし……それをするなら、士気的にも手間的にもリソース的にも、私が動くのが一番でしょうけど」

「俺らからしても助かるな」

「そうだね。周りが安全を確保してくれるならやりやすい」

「後の事を考えても、一度は確実に安全を確保した場所、っていうのは、あって困るものではありませんからね……」


 そういう事だ。あの大規模戦闘を指揮していた司令部からの依頼でもあるので、可愛いを見たいが故の暴走ではなくちゃんと合理的な理由がある。まぁ、可愛いを見たいっていうのも結構な割合で理由に入ってるだろうけど。

 一応移動しながら、ナヴィティリアさんに状況を聞いたり、掲示板を確認したりはしてるんだけどね。今の所、まだちょいちょいつっかかってくる雪像交じりの雪像型モンスターを対処するばかりのようだ。もちろん雪像は捕獲して「氷晶の核」を回収している。

 ……ま、実際戦闘に入ったら皆真面目になるから、大丈夫だろう。

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