第558話 21枚目:神格と性格
『……待て、「第三候補」。「本来の」だと? それは一体、いや、確かにその権能の幅が広いとは思っていた。思っていたし、この世界には創世の後に外からやってきて加わった神だというのも知っていたが……!?』
『話せば長くなりますよ。とはいえ準備すれば参考資料の類も用意できますけど、どうします?』
『それは…………いや、今は良い。そうか。守護を本分とする神格であったか。なるほど、それではあの、非常に守りやすく攻めにくい領域の構築は、司るもののど真ん中であったのであるな』
『得意中の得意ですね』
流石フリアドにおける現状最高の神官というべきか、私が伏せた部分をしっかり読み取る事が出来たらしい「第一候補」。うん。そういう事なんだ。だって私はここにいる、つまり
少しだけ追加するなら、現在のボックス様は、複数の神の権能を併せ持っている。だから、本来の神格である「守護」以外の権能と神格は、全部後付けなのだ。そしてそんな事が起こる状況は……そうは無い。
『……何と言うか、奇縁であるな。だが同時に納得もした。そういう経緯の末に招かれ、身を寄せた世界が「まだ間に合う」状況であれば……それは当然、自らを削ってでも全力を出すであろう』
『そういう事なんですよ。普通にしてても最高ですし感謝を忘れる事はありませんが、時々心配になります』
『うむ。まぁその辺り、同じく距離を測りかねていた他の神にも伝えておこう。召喚者が来てよりこちら、急速にその地位を上げている故、いらぬ懸念が向けられていたようであるからな』
『ボックス様の全力に邪念なんてある訳ないじゃないですかド失礼な』
『くはは。結果だけ見ればある種当然の懸念ではある故、あまり強硬に対応してくれるなよ』
『……善処します』
『確実に頼む』
しっかりと釘を刺されてしまったので、機会があったら殴るというのは無理そうだ。っち。ボックス様はそもそもたくさん色々くれるけど、匙加減は心得てるから過剰にはならないのに。ナヴィティリアさんこと“ナヴィ”さんだって、ちゃんと出したらダメな情報は自主的にストップかけてるじゃないか。
というか、
何? マスクデータにしてる事にも意味がある? それをほいほい暴かれると後が大変だ? 大丈夫だよ。本気でダメな情報は出さないから。聞かれて答えるのは出しても問題ない範囲の情報に限ってるし。
『その辺の匙加減含めて最高だって言ってるんですよ私は。……と言うのはともかく、ボックス様について知りたければいつでも語りますよ。時間さえあれば』
『そうだな。いずれ時間が出来れば聞かせて貰うとしよう』
大変納得してくれた「第一候補」はそう言ってウィスパーを終了した。やっぱり他の神からの問い合わせだったか。確かに、表面上の事実だけを見るならそういう懸念は、まぁ、実際、否定はしきれないけど。
だが。少しでもその性格を知っていれば、つまりのほほんとのんびりまったりお茶してるのが超似合う神様だっていうのが分かっていれば、そんな権力系の野心なんてある訳が無いのはすぐだろうに。某人間至上主義の神々じゃあるまいし。やっぱりド失礼では。
……まぁ、経緯が経緯だからな。混乱の中にあって輝く神格になっているのは、確かに、否定できないんだ。
「ボックス様も、この世界が平和になれば本来の神格に戻れるといいんですけどねぇ……」
『ふふ、ルミル様は優しいですね』
「優しいのはボックス様とナヴィティリアさん達ですよ」
『ありがとうございます』
ぽこぽこん、と笑顔と拍手の絵文字を追加して答えてくれるナヴィティリアさんに癒される。あーもう最高なんだから。頑張って雪像を捧げよう。いや、ティフォン様達やポリアフ様達にも捧げる手は止めないけど。
まぁその雪像作りも、人数が大幅に増えた
そしたらようやく氷の大地の本格攻略に取り掛かれるな。あくまで今回のイベントのメインはあっちだ。あんまり下準備に時間をかける訳にも行かない。何せ、高確率で大物がいるんだし。
「冷人族の人達は助けますし、モンスターは殲滅しますし、大物は沈めます。逃がしませんしこれ以上傷つけさせません。とはいえいずれにも相応に時間がかかるでしょうから、早め早めに動きたいところです」
『“雪衣の神々”の力もそれなりに戻って来たようですし、この調子なら、大神の定めた期間の内に十分対処に動けると思いますよ。雪雲を完全に防げるほどに力が戻れば、召喚者への保護も手厚くなるでしょうし』
うん。それはもしかして、ポリアフ様達に捧げものする量が一定値を超えると、北国の大陸をお任せした上でスキルや装備の足りない新人
相変わらず重要な情報をさらっとくれるんだからー! 本当に息をするように最高を塗り替えていくよなー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます