第537話 20枚目:イベントのお知らせ

 テストとの戦いが佳境だが、それはそれとして月が替わった。って事は、次のイベントのお知らせが来るわけだ。息抜き程度の時間しかログイン出来ないが、お知らせを受け取って確認するぐらいは問題無いだろう。

 今の所の予想が大体合っているなら、最終的な目標と言うかイベント会場には予想がつくが、そこにどうやって行くのかは分かっていない。なので大人しくイベントのお知らせを確認してみよう。


「メイン会場はこの北国の大陸、及び氷の大地のまま継続するのは、まぁ妥当ですね。この大陸の問題を解決するのがメインな訳ですし」

「っすねー。第三陣の人達も、今月のイベントで耐寒準備は大分整えられたみたいっすし」


 ピンク色はそのまま、綿毛みたいにもこもこしたフライリーさんが私の頭の上に乗っている。イベントのお知らせはこのスタイルで確認するのがお気に入りになったようだ。なお、ルチルとルディルは寒さが寒さなので暖かい所に避難済みである。

 紅白饅頭、の単語が頭の隅で踊っているがそれは無視して、イベントのお知らせに目を通す。……ざっと目を通した感じ、探索系だろう。ただ、前にやったのが探し物とするなら、今度は推理物というのが近いかも知れない。

 まぁどちらにせよ元『本の虫』の人達が大活躍で、水面下に実体を隠した検証班が本気を出す案件になるだろうけど。何でそうなったかっていうのを確認する為にも、バックストーリーを見てみよう。



 この世界の神ならぬ雪の排除が順調に進む中、大神の加護を介する、という若干不可解な経緯を経て見つかったのは、本来この大陸に姿がある筈の種族の手掛かりだった。

 その種族のものとも、それによく似た別の何かともつかないそれの出所を神々は探したが、見つかるのはそれぞれだけでは到底決定打足りえない、情報の断片と言うべき物ばかり。

 その情報の断片を、一体どうすればその種族の現状を知る事が出来るのか。神々は頭を悩ませ、考え尽くし、可能な限りの手段を持ち寄って、相談し、話し合い、そしてその末に、召喚者達へと託宣を下したのだった。



 うん。ちょっとお手上げ感が透けて見えるな。そういうシナリオなんだろうけど、運営大神と神々が別物だってほぼほぼ確信してからは、割と本気で手詰まりって奴になってる感じがする。

 で、実際にどう動く事になるかと言えば、この北国の大陸にはあちこちに放棄された町や村の跡があり、その大半はまだ雪の下に眠っている。それら「その種族」こと冷人族の痕跡がある場所や物を調査し、バックストーリーに出て来た「情報の断片」という名のイベントアイテムを集め、それを解析して、正しい形にしてから神殿に奉納する、という感じのようだ。

 解析の方法は各種スキルを使ったり住民の人達に相談したり、自分に出来る事をすればいいとの事。そして例によって存在する競争要素は、その、正しい形にした情報の奉納量、という事になるようだ。


「ん? これもしかして、イベントアイテムの奪い合いにならないっすか?」

「いえ、大丈夫みたいですよ。注意書きの隅っこに『イベントアイテムはプレイヤーごとに独立して出現します』って書いてますから。……奪えないとは書いてませんけど」

「……それ、やっぱり奪い合いにならないっすか?」

「…………注意書きをちゃんと読まないかつ喧嘩っ早い人や、解析及びコミュニケーション能力に自信の無い人に、後はそっちが目的の人辺りが要警戒対象ですね」


 召喚者プレイヤー同士で争ってる場合じゃ無いと思うんだけど、そういう奴らってその辺気にしないか気付いて無いか、分かってて敢えて無視するからな。話すだけ無駄って奴だ。少なくともこの件に関しては。


「結局、いつもと同じです。すなわち、自衛するしかない。完全勝利で返り討ちにすれば何らかの収穫があると信じて守りに徹しましょう」

「転んでもただで起きるつもりが無いどころか、転ばしに来た相手を地面に叩きつけて取れるもんは取るスタイルっすかー。先輩流石っすわー」

「そこはかとなく物騒に言い換えますね……」


 まぁ実際やるとそういう事になるから、間違っちゃいないけどさ。こっちから手を出す事は無いんだから、平和主義者だよ? 協力しようぜ、世界の危機なんだから。

 ……その世界の危機を防ぐどころか加速させようとしたり、うちの子に手を出さない限りはな。

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