第502話 18枚目:最終幕本戦

 そして、リアル午前10時半。ここからログイン制限いっぱいの3時間……内部時間12時間が正念場だ。ここで仕留め切れなければ、後が大分苦しい事になる。

 お昼は遅めに食べるつもりというのも伝えたし、おやつで軽食もとった。さて……。


「丸2ヶ月のイベントにふさわしいボリュームだったけど、だからこそ、完全勝利で〆たいよね」


 ログインだ。




 ログインしてすぐ、裏口経由で中心壁内部に合流する。現在巨人型ナマモノの残り体力は2割を切ったところで、後方にある乱立した塔の群れに特段変化は無し。周辺環境の変化も無し、という事だった。

 とはいえ、無視するという選択肢は無い。どうやら体力が残り3割を切った辺りからビームを乱射してくるようになったらしく、前線は阿鼻叫喚なのだそうだ。それでも、誰も退くつもりは無いだろうけど。

 そしてまぁ、対巨人型ナマモノの戦線が今の所維持出来ていて、削れ方も、ちょっとペースが落ちた物の順調、となれば、特級戦力をどこに割り振るかと言うのも決まって来るって話だ。


「で、一応確認ですが、全力で【王権領域】を展開していいんですね?」

『うむ。こちら半分はともかく、あちら半分はより「異なる理」が強く出ているであろう。防御と言う意味でも、攻撃を通す為という意味でも、展開しておいた方が良い。流石に距離がある故、干渉もそこまで考えなくて良いであろうしな』

「クカカカカ、「第三候補」の全力の補佐でどこまで自分の実力が底上げされるのか、今から楽しみじゃわい」

「……仕方ないのは分かってるし、そうなるだろうなって気はしてたが……」

「他に手段が無いから頷いただけなんだからね、姫さん」

「知ってます」


 私が【王権領域】と全力のバフを乗せた上で、「第二候補」とエルルとサーニャの4人で、向かって左側から群れになっている塔に突っ込み、端から削っていく、という形になる。【王権領域】が大活躍だな。まぁ「第一候補」が忙しいって時点で分かってた事か。

 火力って意味だと間違いなく現在のフリアド最高峰のパーティだろう。なお「第二候補」は、こちらもようやく自分の作成使徒だった使徒生まれの子達と合流できたそうで、どこかで見た覚えのある感じの刀を腰に下げていた。

 なお両側からじゃないのは、【王権領域】の範囲に収まっていた方がいいだろうっていうのと、万が一があっても4人いれば逃げるぐらいは出来るだろうって事だ。そうだね。私と「第二候補」をそれぞれエルルとサーニャが運べばいい。


『それでは、頼んだぞ』

「頼まれました。綺麗さっぱり更地にしてやります」

「根っこがあったら特大の穴じゃの」

「やる気十分なのはいいけど何でそんな楽しそうに……」

「姫さん? 頼むから前に出過ぎないでね?」


 という訳で移動だ。当然手には神器がある。……うん。やっぱりほんのりと赤い光を纏ってるな。テンションの変化なんだろうか、これ。分かりやすいからいいんだけど。

 前線を張っている一般召喚者プレイヤー達の後ろに隠れるようにして、半円を描く形で移動する。前線の端っこまで来たところで、私が全員に(刀の形をした物質系の住民の子も含め)バフをかける。

 そのタイミングで、ちょうどよく右手の薙ぎ払いが入った。わぁっ、と一般召喚者プレイヤー達が前に出る。その動きに合わせて、


「それじゃあ、行きましょうか!」

「応さ!」


 声と共に【王権領域】を展開。そのまま、全速力で、塔の群れへと突っ込んだ。

 もちろんそこには雑魚処理を担当している一般召喚者プレイヤー達が居る訳だが、ここまでバフが掛かっていると問題なく「飛び越える」って芸当も出来たりする。ステータスは全員問題なく高いからね。

 大ジャンプで飛び越える距離が半分になったところで、私は神器を真上に振り上げ、「第二候補」は刀を居合の形に構える。タイミングを合わせて、せーの。


「――[ショックウェーブ]!」

「――[水影月]!」


 どちらも広範囲薙ぎ払い系の技が、モンスターの群れに触れるか触れないか、という高さで発動した。ぼっっ! という感じで、結構な範囲のモンスターが、文字通り跡形残さず「消し飛ぶ」。

 ははは、ここだけ見ると過剰火力極まりないんだよな……。と思いつつ、「それでもなお火力が足りない」事に対する警戒だけは忘れないまま、前へと進む速度はそのまま、再度神器を振りかぶった。

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