第496話 18枚目:決戦最終幕
もちろん、「第一候補」が察した通り、私は「大神の祭壇」を提供するつもりで話に出した。仕方ない。この大神殿の倉庫に入れられないって事は、この亜空間の外に持ち出すことは出来ない、って事なのかもしれないんだから。
ちなみに、この亜空間にルイルが来ていないのは確定情報である。あの大規模スタンピートが起こった時に、ざっくり全体を調べてくれたからだ。主に『可愛いは正義』の人達が。
この亜空間には
『そういう事であったか。……すまぬな』
『お気になさらず。大事に取っておいてトドメを刺し損ねれば、それこそ合わせる顔がありませんから』
そもそも悪いのは、大規模スタンピートを引き起こした上に空間の歪みをどこかへ横流ししている奴らだ。絶対纏めて殴り飛ばしてやる。いくら召喚者と言えど、ここまでやらかしているんだから「敵」でいいだろう。つーか私的には完全な敵だ。
ウィスパーを終了してから一旦【王権領域】を解除して、「第一候補」に「大神の祭壇」を受け渡す。そこからまた大穴の上空まで戻って【王権領域】を展開し、動きの無い大穴の観察だ。
ちなみに「第二候補」からの連絡は無い。死に戻ったのか、連絡できる距離と時間を過ぎたのか、連絡を忘れているだけかは分からないけど。私は最後のが一番可能性が高いと思ってる。
「心の底から楽しんでたからなぁ……」
文字通りに切り放題で魔法も撃ち放題な相手だ。そりゃー楽しいだろう。戦闘狂に耐久度無限のサンドバッグなんて与えたらヒャッハーするに決まってるじゃないか。実際は無限じゃなくても、1人で相手する分には実質無限だから間違ってないし。
まぁその無限を有限にするのが今やってる努力で、詰みに持っていく為の動きなんだけど。しかし大穴に動きが無いな。どうした? 再生していいんだぞ? した瞬間に焼き尽くすけど。
……「必要だから壊れない」筈の階段と通路も焦げて炭になったように真っ黒になっている辺り、やっぱり相談してから撃ち込めば良かったかな。なお、撃ち込まないという選択肢は無い。
「まぁ、裏口からの進入が順調なら、こちらからの進入経路はほぼいらないけど」
そっちはどうなってるんだろうな。中心壁の内部に居ると、外の情報が確認できないから。大半の
既に「第一候補」は儀式に入っているだろうし、下手に神器の特殊能力を発動したら、その邪魔になってしまうかも知れない。全快したのは体感で分かっているから、動きが無いなら無いで他の場所に撃ち込みたいけど、もうちょっと待とう。
儀式の結果次第では、それこそ最優先でティフォン様の炎を叩き込む必要がある相手が出現するかもしれないのだ。その時に、回復しきってないから撃てません、というのは格好悪い。ステイ、私。ステイ、神器。
「っと」
そんな事を考えていると、何かの波動的なものを感じた。「第一候補」が儀式をしている方向を振り返ると、遥か上空から、淡い光の粒を含んだ滝が落ちて来たような……そんな、酷く色味の薄い光の柱が立ち上っていた。
いや、もしくは本当に「降って」来ていたのかもしれない。何故ならその柱を中心として、それこそ水をぶちまけたように。何か「おおきなもの」の力が、中心壁の内部を急速に満たしていったからだ。
まさしく空間を塗り潰すように、あっという間に私が居る場所も含めてその場にあった空気が変わっていく。操作していないのにメニューが開いた、と思えば、自動的にイベントページへと移動した。そしてその一番上に、大きな文字でこんなお知らせが表示されている。
『イベントの特殊条件が達成されました。
イベント空間全域での通信手段制限が全面的に解除されました。
一部イベント空間でのログイン可能時間の変化が解除されました。
レイドボスの能力の内「多様な復帰手段」の一部が封印されました。
レイドボスの討伐に失敗した場合に発生する特殊イベントが一部変更されます』
そのまま掲示板に移動してみると、わぉ、実に賑やかだ。流石に一旦大部分の
まぁ特殊条件って付いてるから、達成できればいいね? っていう
そしてその特殊条件が達成された以上、流石に元凶にも動きがあるだろう。と、円柱形の大穴を見下ろす。さーて、破壊不可能な物以外なら何でも来い。更に巨大化した巨人型ナマモノだろうが、高さ制限いっぱいの巨大な塔だろうが、それこそこの場を埋め尽くす様なモンスターの群れだろうが……。
「全部、片っ端から、消し炭も残さず焼き尽くす」
こっちのやる気は十分なんだ。流石にここから肩透かしは勘弁だぞ?
……「第二候補」ではないが、切り札らしい切り札ぐらいはあるんだろうな、元凶。
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