第486話 18枚目:決戦準備
しばしの決闘もどき(決闘システムは止まっていたので)の後、発動条件を「手による接触」に切り替えて【吸引領域】を発動し、一瞬の隙をついて仕込み杖の鞘を持った左手の手首を捕まえる事でようやく「第二候補」は大人しくなった。
まず真っ先に「筋は良いがまだまだ荒削りの身体能力任せじゃの」と先程の私の動きを評価した後に続いた話によれば、どうやら「第二候補」は12月31日から1月1日のカウントダウンである特殊ログイン時間にはいなかったらしい。生活リズムとかあるからね。それはしょうがない。
その代わり朝は早いのだそうで、なんと、午前4時には最初のログインをしたのだそうだ。で、ログインしてみるとあの石造りの空間で1人きり。まぁそれはしょうがないかと動いた瞬間、通路からモンスターの群れが押し寄せてきて――。
「斬って斬って斬り捨て続けて、もう何体斬ったのか分からんわい。そうしている間に黒い渦の様な物が出るからそこに飛び込んだら、もっとわんさかと斬る相手が居るじゃろう? つい夢中になってしまってのー」
ついじゃねーよ、と言葉にする代わりに、背中側に捻り上げた腕を更に捻る。十分に加減はしているのだが、痛かったらしく文句が飛んできた。
「ちょっとは年寄りを労わらんか!?」
「1人かつ現在位置も連絡手段も不明なのに一切気にせず結構な深度と相当な難易度のダンジョンを枯らし切るような人物は気遣いの対象外です」
「本当に儂に対しては辛辣じゃのー」
「自分の行いを省みてから言ってください」
思わずワンブレスで言い切ってしまいたくもなるというものだ。全く。余計な仕事を、とまでは行かないが、せめてもうちょっとこう、動きようがなかったか?
……無いか。無いな。戦闘狂だし。自己完結出来てしまったところが悲しい。
「とりあえず、「第二候補」。これ、受けて下さい」
「なんじゃ? ふむ……あぁ、あの騒ぎになっておった話じゃな」
とりあえず、特級戦力集団もとい『アウセラー・クローネ』としての目的……「第二候補」のクラン入り、を果たしておく。出来る時にやっておかないと後で面倒な事になりかねない。
とりあえず暫定の立ち位置として「
「……のう。もしや儂はそれで殴られるところだったのかの?」
「そうですよ? 破壊したものを薪として更に燃え盛る、という炎の側面の具現化です」
「素手じゃった分だけ加減はしておったのか……」
「素手でもなおかなり相当加減してましたよ。ぱきゅっ! といくのと、ぱぁん! するのとどっちが良かったですか?」
「流石にどっちもご免こうむりたいのう」
まぁ(一応)召喚者相手だから、殴ってたら何かペナルティがあってもおかしくないしな。神の敵じゃないから。
で、と仕切り直し、「第二候補」に改めてログインした時のリアル時間を聞いてみた。すると返って来たのは、12時過ぎという答えだ。やっぱりログインしてると時間感覚が狂わされていたらしい。
となると、私の残りログイン時間もいい加減少ない。なので、と、一旦護衛()の人達にも集合してもらった。
「とりあえず「第二候補」。さっき何か呟いていましたが、まとまった時間を確保できるのは何時ですか?」
「昼は仕事があるからのー。やはり夜じゃな。午後9時から日付変更線までがいつもの時間じゃ」
「じゃあそこを目安に調整ですね。私は一旦ログアウトした後、リアル経由でカバーさんに連絡が取れないか試してみます。出来ればそこに時間を合わせて、あの大きな扉の向こうで合流したいところですが……皆さん、都合の方は大丈夫でしょうか?」
「りょ」
「まぁ9時なら」
「外待機のリアフレがいるけど、そっちも?」
「そうですね。出来るだけ足並みは揃えた方が良いでしょうし。お願いします」
実際カバーさんに連絡がつくかどうかも、あの巨大な扉の向こうで合流できるかどうかも分からないが、イベントももう明日で終わりだ。流石にここから引っ掛けって事は無い、と、思いたい。
それでなくてもあのゲテモノピエロと「第二候補」のせいで予定が大幅に狂ってるんだ。それもあってティフォン様の神器貸し出しが成立したんだろうし、実質ゴリ押しとは言え最終手段染みた方法が実行されてるんだから、出来れば、今日夜のログインで決着をつけたいところだな。
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