第452話 18枚目:参戦開始
まだぎゃいぎゃい言っている扉越しに怒鳴っていた誰かと、それに淡々と、たぶん笑顔で全ての言い分を封じているソフィーネさんの声が続く中、状況が分からないながら扉を開けて顔を出す。
どうせ最前線で暴れることは出来ないだろうしな。それにエルルも合流するんなら余計見た目はちゃんとしておいた方がいいだろう。主に大人しくしてるって主張する方向で。
「ソフィーネさん。ひとまずは来てくれてありがとうございます。しかし状況が状況ですし、動いた方が良いと思いますよ」
「うーん、そうなんですけど、この人が諦めてくれないんですよね。言えば言うほど自分の首を絞めていることに気付いていないようですし」
「あっ、ちぃ姫さんお久しぶりです! ドレス似合ってますね知ってましたけど今日も可愛い!」
「おやスピンさん。お久しぶりです」
「今回は『可愛いは正義』との連携確認要員で来ましたよー!」
どよよっ、と廊下の向こうでも後ろでもどよめきが走ったようだが、本当に知らなかったんだな、私(公式マスコット:可愛い担当)が此処に居るって事。まぁ広めるような情報でも無いか。逆に混乱しかねないからしょうがない。
そしてどうやらスピンさんは『可愛いは正義』に移動していたようだ。で、今回は『アウセラー・クローネ』と『可愛いは正義』でのやりとりと連携を円滑に行う為にこっちへ来てくれたらしい。
「…………は、はぁ? なん、なんでNPCを、そんな庇うんだよ!?」
「え、私住民だと思われていたんですか?」
「あははー、ちぃ姫さんちょっと待っててくださいね。流石にこれはしっかりオハナシして来た方がよさそうですから。スピンさん、後の事をお願いしてもいいですか?」
「了解致しましたソフィーネさん。私達同志にお任せを!」
「程なくエルルさんも来る筈ですので、ほどほどにお願いしますねー」
「おっとぉそれは聞いてて良かった。はーいそれではちぃ姫さん、同志の守りの輪にお連れします」
「よろしくお願いします。ソフィーネさんもいい感じに手加減してあげてくださいね」
「努力はしますー」
のんびりとした口調とは裏腹に、ゴキゴキと拳を鳴らしながらへたった姿勢の……見た目は青年だな。に近づいていくソフィーネさん。スピンさんはすちゃっとなんちゃって敬礼を返して、私の先導を開始してくれた。……一応声は掛けたが、まぁ本当の所は相手の態度次第だろう。
「……姫様関係は、姫様自身は穏健でも親衛隊がヤベェってのは本当だったんだな……」
そんな声が聞こえたが、私がスルーしたんだから皆スルーしような。限りなく真実な噂が更に信憑性を帯びちゃうぞ。
途中で色々足を引っ張られたというか手間を取られたらしく、エルルが合流したのはそこから30分ほどしてからの事だった。流石に『可愛いは正義』の人達も、エルル相手なら警戒しない様で一安心だ。
何か「保護者が居ると可愛いが増す」とか「完全に親子な身長差が良き」とか聞こえたがスルーだ。まぁ確かに身長だけで行ったら親子だけどさぁ。主に私がロリだから。
さてソフィーネさんはまだ戻って来ていないが、エルルが来たから前線の様子を見に行こう。なんならそこから魔法で支援ぐらいは出来るといいんだけど。
「うっわ、思ったより状況が酷いですねこれは」
「前には出るなよ、お嬢」
「前線が大混乱になるので出ませんよ」
その言い分にエルルが「理由……」って顔をしていたが、それはともかく。
少なくとも見える範囲は全部、地形のパッチワークが見えない程の密度でモンスターが蠢いている。それが押し寄せているんだから、そりゃ苦戦もするわって話だな。
ボックス様の領域を囲むようにして陣地を作って対処しているみたいだが、それでもちょっと間に合ってないか。しかしこれ、単純に吹っ飛ばしただけでは時間稼ぎにもならないな?
「そういえば壁系魔法はまだ使い手が少ないんでしたっけ。【○○古代魔法】自体はそれなりに習得する為の手順が確立していた筈ですけど」
「最低限必要な魔力の制御力が厳しいんですよねー。流石上位互換だけあります」
「……あぁ、なるほど。詠唱して魔力を流せば、後は全部勝手に動くって意味だと扱いやすいのか。融通利かないからどうやって使うんだと思ってたが」
「わぁ辛口。事実ですけど。だから初心者には厳しいんですよー。器用さが必要って事で、兼業魔法使いの方が先に使えたりなんかしちゃったりしてます」
「ですが兼業している方は前衛或いは生産の方に手を取られている、と。それではとりあえず、見える範囲に壁系魔法を設置しましょうか。どれだけ持つか分かりませんが、このままでは前衛の方々が持たないでしょうし」
「それでは全体連絡および戦況指示の受信を開始しますねー。ところでちぃ姫さん、武器は装備しないんですか?」
「私が武器を持つと、1回使った時点で粉々に砕けるんですよ。主にステータスの関係で」
「わぁーお。オススメ武器を紹介しようと思ったらもっとどうしようもない問題がありましたか」
「装備関係は流石にちょっとな。それでなくてもお嬢はまだ身体が出来上がってないってのに」
スピンさん、前から思ってたけどコミュ力高いな? 大分他人に慣れてきたとはいえ、護衛として気を張ってる状態のエルルが普通に会話に参加してるよ。
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