第444話 18枚目:要求レベル

 とりあえずその後は、ティフォン様の領域の端まで快適快速エルル急行で移動してボックス様の領域でワープポイントを登録。随分と山の高さもモンスターのレベルも下がっている、溶岩が見えない程度に大人しい山を登って、その向こう側に移動した。

 相変わらず最高なボックス様はその向こう側にも領域を点在させてくれていたので、再びワープポイントを登録。そこから残りの時間は周囲を探索してログアウトとなった。

 次の日からは自由行動なので、ひとまずは周辺の探索三昧かな。【鑑定☆☆】を使いまくろう。出来ればステータスを上げる冠付きアイテムを見つけられればいいなー。


「難易度いきなり上がり過ぎじゃありません?」


 で。翌日午前中のログインで、召喚者プレイヤー組の状況を見てこの第一声だよ。住民組の皆? ルドルの疲れと装備が酷い事になってるかな!


「いやぁ、いけるかなーと思って行ってみたら、きっつかったねぇ……」

「逃げ回るので精一杯だったっす……」

「あの竜素材で、一通り装備は更新した筈なんだけど……」

「むしろ更新していなければ死に戻ってましたね……」


 ちなみにエルルは撤退の時に付いてきちゃったらしいモンスターの群れを片付けに行ってるってさ。あれ? おかしいな。「第一候補」のグループは少なくとも複数個所踏破出来た筈なんだから、戦闘力でいくと私達でも行ける筈なんだけど。


「それはですね。恐らく、この試練の場が神々の力で構成されているという事で、神官の皆さんには基本的にいつも以上の補正が掛かっているのだと思われます」

「……なるほど」


 確かにあり得るな。で、普段の戦闘力の比較で挑戦したら文字通り痛い目を見ていると。うーんこれは、冠付きアイテムを探すどころじゃないか?


「ところでねぇ、マスター」

「何でしょう、ルディル」

「モンスターの中にさぁ、妙に強い奴が混ざってたんだよねぇ……。見た目がちょっと違うから、なんだろうとは思ってたんだけどさぁ。もしかしてあれって、あの木の実みたいな強化がついてたりしないかなぁ……?」

「…………十分にあり得ますね」


 そういう相手が居たのも理由の1つみたいだけど。それでもやらないって選択肢は無いから、私もこの後挑戦してみるか。


「……。カバーさん」

「はい」

「この難易度を掲示板に流せば、「第二候補」は釣れると思いますか?」

「そもそも掲示板を見ているかどうかが不確定ですが、目にすれば動く確率は高いかと。少々お待ちください」


 とりあえず何故か未だに行方が分からない戦闘狂バトルジャンキーへの釣り餌を垂らしておいて、エルルが帰ってきたら一緒に行ってもらおう。

 いやしかし、何で目撃情報の1つも無いんだろうね? ログインしてるのは確認してるし、それならこの亜空間に居る筈なんだけど。

 特級戦力が揃っている『アウセラー・クローネわたしたち』ですらちょっと例外とは言え中央付近に移動したんだ。「第二候補」だけ例外って事は、無い、と、思うんだけどな……?




「地形を壊すとご褒美が減るとか聞いてないのですが!」

「そもそも地形を壊すな」


 ぐうの音も出ない正論をエルルから貰った現在は1月7日だ。そうあれから丸2日フルログインして周囲の探索をしていたのだが、とにかく難易度が高い。正確に言うのであれば、敵が強い。

 ここはシナリオクリア後の秘境ダンジョンだったのか? と思う程だ。撤退時限定とはいえ、私が【王権領域】を解放したと言えばどれだけ非常識な強さだったかお分かりだろうか。

 いや各種スキルのレベルは上がるよ? ガンガン上がっていくから経験値的には美味しいんだよ? でもちょっと、流石に、推奨レベルが高すぎないかなって! 特級火力の私でこれって一般召喚者プレイヤーだと手も足も出ないと思うんだけど!


「何かギミックを見逃しているに一票です。これはちょっと、数でも個でもどうにもならないのでは?」


 最後まで追いすがって来ていたモンスターの群れを叩きのめし、【解体】でその素材を入手して、簡易版大神殿から倉庫に放り込んでおく。この素材もいい物なんだろうけどなぁ。

 そう口に出したところで何のギミックを見逃しているか、あるいは何らかの条件を達成していないかは分からないんだけどな。しかしどうしたもんか。これ、周辺探索どころじゃないぞ?

 と、考えながら休憩していると、ウィスパーの着信。うん?


『やっほー「第三候補」苦戦してるって聞いたけどどんなもんだー?』

『感覚が狂うから普段は使うなと言われている広域バフを解禁する程度の難易度です。突然何ですか、「第四候補」』

『うーわ「第三候補」のところでそれか、どーりで俺達じゃ蒸発する訳だ!』

『そちらもそちらで死に戻ってましたか……』

『見事にな! ここまで手も足も出ないと一周回って笑えてくる!』


 どうやら「第四候補」達も(移動速度の関係で)私達に遅れたものの亜空間の外縁部の探索を開始したらしい。そして、おそらくその初手で全滅したのだろう。まぁそうもなるか。

 戦闘力が高い私達や、信仰による補正が掛かっている「第一候補」、耐性さえ抜く事が出来れば相手の強さがそのまま武器になる「第五候補」と違って、「第四候補」はちょっと厳しいだろうな。ボックス様の領域で籠城戦するとかならともかく。


『つっても流石に難易度高くね? と思ってさー。その辺どうよ「第三候補」』

『難易度に関しては同意見ですね。特級火力が苦戦するって実質探索不可能状態でしょうこれ。何か難易度を下げるギミックを見逃しているか、何らかの条件が満たされていないのだと思うんですが』

『だよなー! じゃあその条件ってなんだよって話なんだけど! っつー訳で俺らは条件探しも兼ねて内側に戻るから! 外側はよろしく!』

『まぁ初手で全滅していれば探索も何もないでしょうからね。分かりました。私以外への全体連絡も自分でしておいてくださいね』

『ぐはっ! ちぇー見破られたら仕方ないかー』


 そして最後に釘を刺してみると、どうやら図星だったらしい。ほうれんそうはちゃんとしような。わざわざ私に言わなくても、フッダーさんがちゃんとしてくれただろうけど。

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