第427話 18枚目:目標確認

 その後、掲示板を介せばいいという事に気付いてからは比較的スムーズに話が進んだ。どうやら割としっかり事前情報を調べてから取り掛かるタイプのゲーマー家族だったらしく、私達の事も当然知っていたらしいのだ。

 特に下の妹さんが可愛い好きで、私バージョンのCMにハートを撃ち抜かれたとの事。お陰で本体はともかく、ソフトを人数分揃えるのが大変だったと父親であるドッペルゲンガーのリジュさんは文字で語ってくれた。


「そのほかにも上の妹さんが「第四候補」に、お兄さんが「第五候補」にそれぞれストライクを貰ったと……なるほど?」

「あらぁ~、残念だったわね~」


 ちなみにソフィーネさんが2人を捕まえていたのは意地悪とかではなく、自分が何処に居るか把握するのも一苦労なので、まず位置を固定して空間的な位置の把握をするところから始めないとどうにもならない、という結論に至ったからなのだそうだ。

 彼らを最初に見つけたのは「第五候補」が連れて来た元海賊の皆さん。そう。ジョニーとお頭とゆかいな仲間たちだ。元山賊達の方は今回お留守番らしい。まぁ彼らの魔力を見る力は弱いので、どちらかというとポルターガイスト現象を目撃したというのが正しいようだが。


『む? 遅れたか?』


 そんな感じでわいわいやっていると、カーリャさんに抱えられた「第一候補」がやってきた。時計を見ると、10分前行動だ。うん。私達が早いんだよな。遅れてないから大丈夫。

 かくかくしかじかとリジュさん達について説明し、主に掲示板に上がっている第三陣についての情報を共有する。「第一候補」は自分でも内部掲示板を確認し、その様子を把握したようだ。


『なるほど。ともあれ、まずは新たにこの世界に来た事を歓迎しよう。苦労も多いと思うが、出来る限りの力にはなるつもりでいる故な』

『『きゃーっ!』』


 うーん、元気なお返事って言うのは分かるんだけど何を言っているのかは分からない。【魔物言語】のレベルをある程度上げるまでは私もこうだったのか。懐かしいな。

 しかしまぁ、最終的な相手はうっすら見えているし、私達もこの亜空間の中を探索しに回りたいし、新人育成に力を貸すのは大賛成だがそればかりに構ってもいられない。これが難しい所だ。

 その辺何かないものか……と、何の気なくイベントページを確認。前半は亜空間を構成する為の納品アイテムの数と、それによる管理割合で競っていた。どうせ後半も何かしらで競う事になっているんだろうと思っての確認だ。あの日付変更線前後の特殊ログインの時には何もなかったんだけど。


「…………」


 モンスター討伐数。ボスとかキングとかが付く相手はボーナス対象。レベルが高い程それに応じた倍率が掛かる。これは予想の範疇。

 攻略した簡易試練の数。既に現在いるのが試練扱いである亜空間の中だが、その中に更に異空間があるらしい。あの木のうろから行ける場所みたいなものだろう。ボックス様の祭壇からも行けるし。これも想定内。

 特殊な捧げもの。どうやらこれは試練ではなく探索の方らしい。神の力によって構築しているから、それらが混ざった結果特殊な物質と言うかアイテムが発生していることがあるようだ。まぁ違和感はない。


「…………「第一候補」」

『どうした?』


 亜空間内の探索率。これは特殊な地形や純粋に面積のようだ。ちなみに遠景をスクリーンショットに撮ったあれでもいいらしい。実際に足で稼いだ方が倍率は良いようだが。分からなくはないな。

 自らの信じる神の領域の拡大。あらゆる神の力を混ぜて、莫大な量が発生した空間の歪みを一気に押し込んだ影響で、一部どの神の領域かあいまいな部分があるらしい。要石的にポイントとなる場所で祈りを捧げるといいようだ。無理はないか。

 比重で行くと探索に偏っているのは、このイベントの趣旨を考えれば分かる事だ。だからこそ引っ掛かったというか、以前の話を聞いていたからこそそれが違和感だと分かったというか……。


「確か、神ならぬ祭壇は存在しない、のですよね?」

『うむ。その筈だ。祭壇と言う形をしている時点でそれは祈りの場である。捧げる先が無い祈りは存在せぬからな』

「……では、大神に祈る場合とかってどうすればいいんでしょうか」

『うむ? そうであるな。通常であればあまりに世界の根幹に直接関わる神である故、祭壇を作る事から非常に難易度が高い。というか、そもその製法が失われている筈である。よって、祭壇の作り方を探し、素材を集めるところから始めねばならんな』


 その話をしていた本人であるところの「第一候補」に確認を取る。そうだよな。召喚者私達はもれなく大神の加護を受けているし、【絆】や【契約】でテイム状態にある皆にも大神の加護は分け与えられている。

 だから身近に感じなくもないのだが、本来はものすごく遠い存在だ。何せ通常は、神としての名前を呼ぶことすらないのだから。

 返って来た回答を聞いて、うーん、としばらく考える。やっぱりこれは違和感だよなぁ。


「この亜空間において、主な目的は戦闘の付随する探索です。これは事前に分かっていました。うっすら見えた最終目標としてもその方向で問題ありません。そしてそれに付随して、いつもの神話同士で競う目標が出ているのですが……」

『ふむ』


 まだ「第四候補」は来ていないがまぁいいか。カバーさん達は既に気付いている可能性もあるが、一応口に出しておこう。


「その中に、どうも違和感のある目標がありまして。それで確認を取ったのですが、やはり違和感なんですよね」

『と、言うと?』

「亜空間内の調査、探索。その、探し出す目標の1つにですね。どうやら、「大神の祭壇」と「空白の祭壇」というものが、あるらしいんですよ」

『…………何?』


 探索目標に書いてある。「大神の祭壇」の発見と確保。及び、「空白の祭壇」の発見と確保。指でなぞりながら読んでも変わらないので、読み間違いとかではない。

 だがこの世界フリアドにおける宗教関係の知識は絶対にずば抜けて多い「第一候補」が、「無い」と断言するんだ。であれば、通常であれば「無い」のだろう。

 ってことは、すなわち、理が通らない……いつもの、問題へのヒントって訳だ。

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