第409話 17枚目:進むカウント
流石に森の中に隠れたままでは、町の手前側しか妨害できない。なので流石にこれ以上の隠密は出来ないと森を出て、ストーサーの町を大回りする形で走りながら足止めの魔法を仕掛けていった。
そうこうしている間に、遠く『ホーピス』の方向から灯りがやって来るのが見えた。視力があれな私とは言え、この距離で見えるって相当だぞ。どうやら、随分大掛かりな「祭り」になっているようだ。
「流石に事ここに至ってしまえば情報で止めるのは間に合いませんか。せめてもの救いは、情報の裏取りは大事だというのを嫌というほど学んでくれるだろうということですが……」
もしかしなくても、各クランに紛れ込んだ『バッドエンド』の工作員と呼ぶべき存在の仕事もあるだろうしな。もちろん最低限二重登録になっていないかどうかの調査ぐらいはしているだろうが、本当の信仰がどうかまでは調べていないだろうし。
念の為、『ホーピス』方面に妨害の魔法を厚めに仕掛けておく。ただ、相手の数が数だ。正面からなら負けるつもりは毛頭ないが、姿を見せるとそれはそれでややこしい事になりかねない。事前準備が精一杯だろう。
町の周りを3周ほどしたところで、空から近づいてくる鮮やかな空色を見つけて森の中へ撤退。いやぁ、直前に対空警戒の必要性を思い知ってて良かったよね。
「状況はどんな感じですか?」
「完全に大盛り上がりしていますね。恐らくサクラが混ざっているとは思うのですが、警告を流そうとしてもすぐに封じられます。……それに、どうやら元々ちぃ姫さん達「魔王候補」や『本の虫』に反発心を持っていたクランが中心になっているようです」
「反発心自体は構いませんが、上手い事転がされてますね。全く人心掌握という一点では本当に腕がいい」
カバーさんから聞く状況は良いものとは言えない。妨害するにも限度があるし、恐らく儀式を妨害する為に突入する中に混じって、儀式の開始トリガーを引く『バッドエンド』の人員が混ざっているだろう。流石にそれを見分けるのはカトリナちゃんでも難しい。
「(・∀・*)?」
「……確かにルージュは姿が知られていませんが、だからと言って“破滅の神々”の手先と思われるのは大変不本意です」
「(′・ω・`)」
「見られなければ、いい……」
「流石に数が数ですから、ちょっと無理があると思います」
「目指せ、千人斬り」
「その後に何が来るか分からないのでダメです」
やる気十分のルージュとルシルには悪いが、こればっかりはなー。言葉が通じるのは、こっちの話を聞こうという気が少しでもある相手だけだ。最初から決めつけてかかってくる相手だと、何を言っても悪化するだけである。
そもそも話をちゃんと聞く状態なら、悪い補正(『バッドエンド』のサクラ)が掛かっていたとしてもカバーさん達が止められてる筈なんだよ。それが止まってないって時点で、うん。
まぁ「ゲーム」だから楽しんだもの勝ちで、究極本人が楽しければ問題無いんだけどさ。
「……「出来る」事と、「やっていい」事が、イコールではない。それを、「ゲームだから」と無視するのは、やっぱり精神破綻者の素質ありですよねぇ……」
ま、そういう奴は「なら最初から出来ないようにしとけばいいじゃないか」って言うんだけどな。そして恐らく運営からすれば、「制限したら「どこが自由だ」って文句を言うくせに」って話なんだ。堂々巡りだな?
流石に……流石に、イベントの進行に支障が出るなら、制限が掛かる、と、思うんだけど。強制力はちゃんと存在している。だから「第一候補」も言っていたように、本気で世界が崩壊するまでには至らない、筈だ。
かと言ってアカウントのBANをやりまくると、それはそれで悪評が立つ。何をやろうと文句をつける奴がいるっていうのは大変だな。その文句をつける方が悪いとはいえ、きっちりと匿名性を盾にして絶対に姿を見せないようにする事だけは上手いんだ。
「…………阻止し続ければ、本来出ていた筈の被害が積み上がって、その内自滅……というか、「強硬な対処をしても誰も文句を言わない」状態に陥ると思うんですが」
そこまでが長いんだよな。そろそろイエローカードぐらいは出ていると思いたいんだけど。主に氷の大地での、隠しボスの先行出現辺りで。出来ればその前の、スタンピートもどきによるイベント進行が危うく不可能になりかけた案件ぐらいから。
いや、私と「第一候補」っていう特級戦力、それこそBANされないのが不思議なイレギュラーの力が無ければどうにもならなかった、と言えば、あの島でやろうとした儀式からだな。最終的に巨大化したクレナイイトサンゴが召喚されたやつ。
だってネレイちゃんとオープさんはあれ、確実に渡鯨族の港町に辿り着いて無きゃヤバいイベントの鍵だったじゃん。あの嵐を開く儀式、本来はネレイちゃんがやる仕事だったんじゃないの? その後分かった巫女としての力量とか、そもそも名前とかから考えて。
「……今回も、どうなることか」
正直に言おう。踊らされたクランの
だからその「後」に既に備えている訳で、そして不完全でも儀式が行われれば、そこは阻止しなければどうにもならない被害が出るのが分かり切っているからね。
……簡単に阻止できるようなもんじゃないだろうな、っていうのも、合わせて。
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