第378話 16枚目:箱庭案内
そこからルージュ達にエルル達の方から自己紹介をして貰い、顔合わせがひと段落した所で「庭」の中へ移動した。流石に海風吹き晒す場所では落ち着くも何もないからね。
なおルフィル達によれば、やはりボックス様からナビさん経由で連絡があったらしい。異世界に移動する事になった事と、その異世界の事情、そして今の私の姿について。どうやら彼らの方も私と直接会えるという事を喜んでくれたらしく、それがから回ったのがルージュのあの行動という事だったらしい。
「(´・x・`)」
なお本人はこの通り、大変反省している。だからルシル、せめて手合わせは落ち着いてからでね。
さて「庭」だが、北を上とすると南側の壁の真ん中にさっきの白い大きな扉が存在して、周囲がぐるっとレンガを組んで作られた壁で囲まれている。北、東、西にも移動用の扉はあるが、そちらはレンガの壁と似たような色合いだ。
そしてそれらの扉を塞がないように、角から建物が並んでいる。まぁ建物の間には細いとはいえ通れる場所があるし、そんなに数自体も多い訳じゃ無いんだけど。
「でー、入り口の横にあるここがお掃除とか全体で使う道具の倉庫だメェ」
「その隣がお薬とかの消耗品が入った倉庫だメェ」
「その向こうが鍛冶場だメェ。ルージュは普段此処にいるメェ」
「(○・v・)」
という訳で、入り口から見て右手側からルフィルとルフェルに案内してもらった。私にとってはおさらいだが、画面越しでは俯瞰視点しか見れなかったからなー。ロリ姿というのもあって、見上げる視点で見るのは新鮮だ。
「門への道を挟んで向こうが薬草とかの素材を入れてる倉庫だメェ」
「そこから壁までの角が畑になってるメェ。僕達は普段この辺りにいるメェ」
「その横にあるのが私達のお家メェ。お客さんも泊れるメェ」
「でも流石にこの人数は無理でしょう」
「「流石に5人ぐらいまでだメェ」」
「まぁ泊まる場所は、この後『牛肉工務店』の方々が作ってくれるでしょうから大丈夫でしょうけど」
ちなみに畑はコトニワ仕様のままらしく、野菜と薬草がごっちゃに育てられていた。私が育ててる時はもうちょっと整理してたんだけど、この2人に任せた途端この有様になったからな。それでも収量は上がったから首を傾げたもんだ。
「でー、門への道を挟んで向かいにある大きな建物が図書館メェ」
「別名記録館メェ。一応庭主さんに許可取ってから入ってほしいメェ」
「ここは後にしましょうか。本しかありませんし、よく使う資料とかレシピとかは他の場所に置いてある筈ですし」
「実際僕達もあんまり行かないメェ」
「その向こうはしょっちゅう行くけどメェ」
「で、その向こうっていうのが、門への道の向こうだメェ」
「実験とか調合が出来る実験室だメェ」
「ほほーぅ?」
北西の角を丸々占拠している建物をスルーして、西の門への道を越えてまず紹介された建物に予想通りルディルが食いついた。だろうと思ったよ。
「その横に開けてる場所が訓練所だメェ」
「ん」
「でも普段はルージュが素振りするぐらいにしか使ってないから、本気で戦闘するなら外に行ってほしいメェ」
「……残念」
「で、門まで戻ってきてその横が普段使わない物の倉庫だメェ」
「楽器とか可愛い置物とかが入ってるから、壊さなければ好きに見てくれればいいメェ」
「可愛い!?」
「置物!?」
で、訓練所でルシルが食いつき、倉庫でソフィーさん達が食いついたのも予想通りだ。くりっ、とこちらを振り返って来たので、ぐっ! と自信を持って親指を立てておく。なにせ私のお気に入りコレクションだ。厳選してあるとも!
やっほーい、とそのまま倉庫に向かったソフィーさん達を見送り、この「庭」にある最後の場所へ向かう。今までは建物の入り口にそって、ぐるりと外周を回っていた。だから残っているのは、それらの建物に繋がる全ての道と四方の門に続く道が合流する、中央だ。
ここには、私の記憶では代表オブジェクトとして設定していた「ル」の字の石碑が堂々と聳えている、筈だったのだが。
「……神殿、ですね」
「庭主さんへ神様から伝言があるメェ」
「あの石碑は持ち込み禁止らしいメェ」
「あぁなるほど」
そこにあったのは、その材質が白い石材だというだけで、印象としては小さい神社のような建物だった。もちろん鳥居は無いが、ほぼ装飾の無いシンプルな外見と三角屋根がそう見えたのだ。
どこからどう光を取り入れているのか、目に見える窓もこれと言った灯りも見当たらないのに、神殿の中は十分に明るかった。もしかしたらこの石材自体が光っているのか、と思ったが、それにしてはちゃんと影が見える。
中には椅子が数脚とシンプルな祭壇が1つあるだけ。その祭壇がいずれの神の物か、というのは、問うまでも無いだろう。
「それでも代わりに自分の神殿をくれるとか相変わらずボックス様は最高なんですから」
「神様がここから試練に行けるって云ってたメェ」
「神殿同士限定なら移動できるとも云ってたメェ」
「最高さが留まる事を知りませんね。これは働きで応えなければ」
つまり、この島から船を使わずとも大神殿に行けるって事じゃないか。大神殿からは大神殿に移動できるし、大神殿から戻ってくることも出来るって事だろう? ワープポイントを追加してくれるとか最高か? 最高だったわ。
「え、ちょっと待て。それって外部の奴が使えたらやばいんじゃないか?」
「庭主さん専用みたいなとこがあるから多分大丈夫だメェ」
「庭の中にあるから庭主さんがその辺管理できる筈だメェ」
「……まぁお嬢が管理できるなら大丈夫か」
これもう次のイベント期間中はこの島から出なくていいんじゃないかな。
……流石にダメか。
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