第293話 14枚目:合流と説明
「……これは一体、どういう状況です?」
『……そちらこそ、何処に居たのであるか』
これは神殿に向かい、ネレイちゃんに出迎えられた後、一緒に神殿の奥……ネレイちゃん曰く、普段の修行をする場所らしい……へ向かい、そこで「第一候補」と顔を合わせてお互いの第一声だ。
私が言ったのは、その場所の状況だ。何故かネレイちゃん以外の神官さん達が、滂沱の涙を流しながら精神集中、えーと、瞑想か座禅みたいなことをしているのだ。いや、何やってんの? それ本当に集中できてる?
対して「第一候補」が言ったのは、まぁ、サーニャの事だろう。流石に慣れてきたのか、何となく視線の向きぐらいは分かるようになってきた。たぶん。
「竜都跡を調べに行ったら、そこに忘れ物されてました。身体的及び精神的に封印状態だったので、【絆】を用いて現代知識をプレゼント後、残しておくのもあれなので同行者に加わって貰いました」
「姫さんの言い方が散々だ!?」
「間違っちゃいないが相変わらず言い方……」
『なるほど。こちらはようやく、神にも応答できない状態になる事がある、というのを納得してくれたところであるな。過剰な自責は毒にしかならぬ。その上で自らをある種見限り、他者に重すぎる期待をかけていた故に今回の事態となっていたようだ』
なので、お互いへの質問に回答する。あー、そっちかー。何でそんな無茶をしてたのかって、そういう事かー。問題(神の応答が無い)の責任の全てを自分達にひっ被せたせいで狂化スキルが入りかけてた感じかー。
種族単位の引き籠りだったせいで、誰も「神の方に問題があるのかも」って指摘しなかったんだな。そもそもそういう発想すら出なかったんだろう。……これ、もう少し遅かったら、殉教と言う名の自殺に走ってたかもしれない。あっぶな。
だから「第一候補」はその御使族というネームバリューを用いて、うつ病のカウンセリング的な事をしていたらしい。そしてその効果が出て、現在は「神の異変に気付けなかった」及び「祈りの方法を間違えた」に加え「自分達のやったことに対するまっとうな罪悪感」で、あの滂沱の涙を流しながらの精神集中になっているようだ。
『まぁ元より罪悪感はあったようであるがな。それを自覚出来ぬ程に自責の念が強かったという事だ。……とはいえ、一番効くのはやはり、海の神からの言葉がある事なのだが』
「“雪衣の神々”である3姉妹からの
『そうであるな。よろしく頼む』
という事で、カーリャさんから「第一候補」の「乗った」ぬいぐるみを受け取る。本人デフォルメなので前みたいなシリアスブレイクは起こらない。良かった。
そして大陸の北に向かうという事で、ネレイちゃんもズボン付きの長袖ワンピースに、毛皮で出来た分厚いコートという格好に着替えていた。白さともこもこ具合が私とお揃いなので、多分モンスターかこの大陸の動物の毛皮で作られた物なのだろう。
……長袖ワンピースとズボンはそれぞれ裾上げされているし、コートに至っては引きずりかけているので、たぶん元は大人用の服だ。もちろんしっかりしたブーツと手袋、帽子もセットである。全部大きいので、ネレイちゃんはちょっと動きにくそうだったが。
「うっわ可愛い。お嬢さん、ボクの背中に乗らない?」
「お前は人を乗せる準備なんかしてないだろうが。あとそうやって誰彼構わず声をかけるのはいい加減やめろ」
「無理! 可愛い女の子を口説くのは礼儀だからな! ったぁ!?」
性別を聞いて無かったら、うわぁチャラ男……と思っていただろう。そしてエルルが殴って話を終わりにするまでがセットのようだ。
結構な音がしてるんだけど、サーニャも大人の竜族なので大概丈夫らしい。効いたように見えないんだよね。まぁ帽子の見た目をしているがあれも性能的には竜合金製の兜だろうし、その上から殴ってるからダメージ的にはそうでもないのだろう。
もちろん「第一候補」を抱えた私と厚着をしたネレイちゃんが乗るのはエルルの背中、そこに背負われたあの籠である。鎧にしがみつくよりずっと安全だからね。
「だから、ちょっかいが掛かったらまず対処するのはお前だぞ」
「ちぇー。まぁしょうがないか、役割分担するならそっちのが妥当だし」
まぁ言動はあれで懲罰房に入れられる程度には不真面目だが、サーニャも一応竜族における正規の職業軍人だ。実力は確かだってエルルも言っていたし、真面目にさえしていればしっかり仕事をしてくれるのだろう。
……その、真面目にしてるっていうのが、限られた状況なだけで。
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