第228話 13枚目:決戦衣装
「『「できましたー!」』」
と、声を揃えるのは、アラーネアさんと『本の虫』服飾部門の人達だ。何が出来たかというと、「第一候補」と私の決戦装備だったりする。
いや、「第一候補」はともかく、私としては別にセーラー服(長ズボン)で良かったんだけどさ。私を着せ替えられるチャンスを逃す気は無かったみたいなんだよね。いやまぁ、私も他人事なら「絶対に逃さない」ってしてただろうけど。
タイミング的に良い感じでお盆休みが迫ってきている中、デビルフィッシュ(異世界タコ)とクラーケン(異世界イカ)を捕獲する為の大型投網を作るのに忙しかっただろうに、やり遂げるとは。すごいな。情熱が。
「えーまず出来るだけ長い時間装備してた方が良いって事で、まずは「第一候補」さん!」
『【人化】予想図ウィズ現代海軍風制服マント付きです!』
「あ、サンプルとして写真撮っていいですか?」
『構わんとも』
海軍の制服というとセーラー服がまさにそうなのだが、今回「第一候補」に用意されたのは肩章や各種徽章がしっかりついた、紺色ベースの士官用制服を着たぬいぐるみだった。等身の関係で若干デフォルメされてはいるが、それでも十分格好いい分類に入る。
ある程度関節が動くようになっているらしく、立っても座ってもバランスが取れるらしい。撮影会の様子を見るに「第一候補」も満足そうだ。性能の方も手抜きなんかしていないのだろう。
あと、ニンフのカーリャさんが「なるほどこれも有りね」みたいな顔をしていたので、今後についても良い影響があったようだ。まぁ一番いいのは【人化】が出来るようになる事だろうけど。
「そしてー、「第三候補」さんには!」
「こちら!」
『エルルさんに色々お話を聞いて竜族の皇族専用制服をとりあえず【人化】した分のデザインだけでも再現してみました!』
「いつの間に」
何かそういう事をしていたらしい。私が
で、実際身に着けてみてからのエルルの感想はというと。
「よくここまで再現したな。俺、本当に見た目の事しか知らなかったのに」
「「ドヤァ」」
『ドヤァです』
どうやら基本デザインはお揃いで詰め襟に五つボタン、違うのは、黒をベースとしてシンプルに見せつつ、よく見れば柄物ってとこだろうか。多分各属性の色を使って……麻の葉か、鱗文かな? 幾何学模様っぽい柄が入っている。
もっとも本当によく見ないと分からない程の淡さなので、これが遠目から分かるのは竜族ぐらいだろうけど。
で、ボタンや刺繍の色が全部銀色だ。まぁこれは今の私の色彩と、ティフォン様に教えてもらった事を考えれば分かる。銀色は皇族の色、特に金色が竜皇の色って事なんだろう。
ちなみに帽子と靴も込みでセット装備の性能としてはこんな感じだ。
[アイテム:竜族軍式制服(皇女専用)・レプリカ 子供服ver
セット装備(防御+++・魔防++++・状態異常耐性++・一部スキル効果+)
耐久度:100%
説明:伝聞を元に再現された竜族軍の皇族専用制服のレプリカ
【人化】の切り替えによる形状変化は無いが、それ以外は本物に瓜二つ
子供用のサイズで作られている為、身に着けるには特殊なスキルが必要]
最後に帽子を受け取ったが、こちらもエルルとお揃い、ただし帽章の所が空白だった。本来ここには個人ごとのシンボルが入るんだろう。……あれかな? 野良皇女だからかな? まぁ仕方ないね。
しかしこの性能、間違いなく今の最前線のステータスなんだけど。下手な金属鎧と喧嘩できるんじゃない? 流石【裁縫】スキル最高峰が文字通り全力突っ込んだ渾身の一作だ。
というか、何この、最後の「一部スキル効果+」って。こんなの『本の虫』の人達が作ってる攻略ページでも見た事ないんだけど。
「あー、それはですねー」
『多分柄の方の効果なんじゃないかと思っているんですが今の所何故ついたか不明なんですよね』
「出所不明」
「たぶん【鼓舞】とか、指揮系のスキルだと思うぞ? でもお嬢、そういう系統持ってないだろ」
なるほど、指揮系。あるかどうか知らないけど【カリスマ】とかもそうなるのかな。
……あ、ほんとだ。適用範囲と効果範囲が広がってるって注釈が増えてる。いやぁ、ヘルプは確認しておくべきだね。
「……お嬢。何か該当するスキルがあった?」
「えぇ。……【王権領域】が、竜族以外でも「私が味方と認識した相手」なら発動するようになりましたね」
「あれか……。今効果範囲どれくらいだ?」
「全力で展開したことが無いのでなんとも……?」
「確認しましょう」
「うわっ」
これまでは周辺の魔力を支配して吸収しやすくなることにしか使っていなかったが、本来の効果は文字通り、「範囲内の味方竜族のステータスアップ」だ。そしてこの装備を身に着ける事で、種族にかかっていた制限が外れたらしい。
で、そんな事を口に出せば当然カバーさんがやって来ると。……だから本当、あの無音無気配の高速移動はどうやってるんだろうね。
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