第152話 10枚目:細かい仕様
結論から言うと、不特定多数に見られていた訳では無かった。
今更ながら、この『フリーオール・アドバンチュア・オンライン』というゲームにおけるログアウト中のアバターの扱いについて説明すると、ティフォン様やその他住民から散々「こちらの身体」と形容されたように、基本的にアバターは、ログアウト中も消えない。
そのままだと当然大変な事になるが、召喚者としての設定を思い出してみよう。そう、私達(
なのでステータスには表記されないが「大神の加護」というものが全員もれなく付与されている。そしてこの加護の効果は、「魂が元の世界に戻っている間の身体の保護」だ。
で。この「保護」が発動すると、不思議な膜に包まれるか、身体(アバター)が入っている空間が完全にロックされるかのどちらかが発動する訳だ。不思議な膜は色々と大変なのだそうで、発動までに時間がかかる。つまり危害を加えられる可能性のある無防備な時間が長い。
だから空間をロックするだけで済む、「自分しかいない空間」を確保するという意味でテントが必須、という訳である。
もちろん私はテントなんて持っていないので、ゲーム開始以降ずっと不思議な膜の方だ。こちらは発動まで時間がかかる上に、「移動させることは可能」なので出来ればテントを使った方が良い。
まぁ、エルルに運んでもらう事も出来ないから、私にとっては善し悪しだ。そしてこの不思議な膜、見た目には完全に透明……つまり、目では見えない。つまり、スクリーンショットにも映らないという特徴がある。
「スクリーンショットに、限定閲覧というものがありまして……」
「その設定に、「被写体のフレンド限定」っていうのがあって……」
「それに設定したら撮影が出来るようになったので……」
「余りにも可愛いおぶ可愛いだったから、つい……」
まぁだから、しっかりと個人情報保護のオプションは詳細まで設定した訳だ。危害を加えられないと言っても撮影はされる。そして私は、原則撮影ノーサンキューなのだ。
その筈なのにスクリーンショットが撮られていた不思議。どういう事か、と、ソフィーさん達の話を聞いてみると……うん。……この2人っていうか歌鳥族の所で出会った人間種族パーティの6人、フレンド登録してたんだよね。その後ルシルの所で魔兎族の訓練に付き合ってくれるって言ってたし。
まだ若干震えながら何故か私にくっついてくる黒猫魔族を翼でぺふぺふとあやしつつ、首を傾げた。
『ですが、ならそれを掲示板のトップに貼り付ける必要はありませんよね?』
「あれは私達じゃないです」
「次のスレッドが立ったらトップに貼り付けられていたのよ」
『……見れないんですよね?』
「見れない筈なんですけどね……」
「検証班の人に協力してもらって、見れないのは確認したわ」
『本の虫』の人達が噛んでいるなら、間違いなく見えないんだろう。そしてそれを聞いた上で様子見掲示板のレスを追っていくと、なるほど、そのほとんどが見れない事へのブーイングだった。
じゃあトップに上げたのは誰だ、と更に掲示板をさかのぼる。いやまぁレイドボス戦の真っ最中なんだけど、ちょっと待って。
えーと、あぁ、そもそもスレッドトップの画像は前のスレッドに載せられたものの内、次を立てる事になった人が独断で選んでいい物なのか。となると、これの前のスレッドを見れば……。
「…………」
無言でメニューを開き、ウィスパー起動。
『カバーさん。今ちょっとよろしいですか』
『はい、どうされましたか?』
『えぇちょっと、一言だけ。――あんた何やってんだ』
『はい?』
いやほんとに。素にも戻ろうというものだよ。
だってこの画像をトップに貼り付けたのはカバーさんだったんだからな!
あなたも可愛いもの好きだったのか!
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