第93話 8枚目:決闘?結果

 結論から言うと、決闘は人間種族召喚者プレイヤーパーティの降参リザインで、私勝利という結果になった。

 なお、あの案内していたカナリアさんが歌鳥族の族長で、ついでに白内障を患っていたことが発覚。それを誤魔化そうとしたのもあっての強硬路線だったようだ。真実なんてそんなもんだよね。

 という事であのカナリアさんはその場で族長の座から引きずり降ろされた。視力に難があるって言うのは、鳥系種族からすれば割と致命的だったらしい。で、当然次の族長を決める話になり、まぁ当然ルチルにも話が来るわけだが


「断固としてお断りしますー!」


 一刀両断、というやつだった。一般歌鳥族が可哀そうになる勢いだったよ。まぁルチルは私に付いて行きたいし、有難い事に尊敬してくれているようだから、私には分からない「灰色」呼びに怒っているのだろう。

 そうすると、今度は別の場所に向けて移動、となるのだが……


『で、エルル。次はどこ行くの?』

「んー、今の話聞いて、それならいっそお嬢の関係者拾って回るの優先するのもありかなって思った」

「それは嬉しいですー! ルシル先輩やルディル先輩がいたら百人力ですー!」

『ルドルとルイルもかなりだよ? ……いやまぁ前2人は能力値を思いっきり火力に振ったけども』

「何? お嬢が命名すると全部ルの字で挟まれた名前になるの?」

『カタカナのルをよく使うのは確かだよー』

「……そう言えば俺の時も、なんか名前聞いて更に機嫌よくなってたな」


 という訳で、次なるもふもふ、もとい使徒生まれな仲間を探しに行くことになった。するとまぁ、その話は、戦わずに済んだ人間種族召喚者プレイヤーにも聞こえている訳だ。

 …………うん。何も言っては、来なかったよ。言っては。詰め寄ってきたりもしなかったよ。うん。大変紳士的な態度でした。

 ただその視線がね。圧がね。じぃぃぃぃぃっっっっっと見られるとね……。


「……背中に乗せるのは嫌だから、あんた達のことは掴んで移動することになるけど、それd」

「「それでいいです!」」


 流石にエルルも無視できなかったよ。そして声かけたら食い気味で返事が来るんだよね。知ってた。


『女性陣が暴走しているようですが?』

「いや、あぁなったら止められないから無理」

「メイン魔タッカーとメインヒーラーだから放っておかれて困るのはこっち」

「むしろ俺達が付いてきて貰ってる側」

「あとぶっちゃけ俺らも空の旅には興味がある」

『……そうですか』


 なお、これが男性陣の反応。……可愛いに対する情熱ってすごいね。




 という訳で、一路空の旅だ。私とルチルはエルルの鎧の胸元、人間種族召喚者プレイヤーパーティはエルルの手(前足?)で男女別にがしっと掴まれての移動である。


「レイドボス感がすげー」

「実際やるとしたらレイドでも蹴散らされる気が」

「クラン連合?」

「それでも無理じゃね?」

「回復する間もなく薙ぎ払われるでしょうね」

「逃げる間もなく蒸発じゃない?」


 いやぁ、わちゃわちゃと賑やかだったよ? まぁ鎧込みで大の大人が4人掴まえられて余裕って言うのは、確かに敵に回った時のことを考えると大変恐ろしいが。たぶん10人ぐらいならいけるんじゃないかな。

 歌鳥族の里から今度は真西に移動する事3時間ほど。人間種族召喚者プレイヤー達から途中ログアウト者が出る事も無く、此処までのことを考えると短い空の旅は終わった。


『ま、俺もちょっと会ってみたいしな。首狩り兎』

『クリティカル兎ですぅー』

「いや首狩り兎だろ」

「あれは首狩り兎」

「間違いなく首狩り兎」

『クーリーティーカールーうーさーぎー』

「モフろうとしたらぽーんと首が飛んだのは忘れられないわ……」


 ……同行パーティがルシルと遭遇済みだったようで、エルルの認識がすっかり首狩り兎になってしまったが。クリティカルだと訂正しても聞いて貰えない。ルチル? 賢くそもそも会話に入ってこなかったよ。

 さて今度やってきたのは……山裾の森と草原との境目あたり、かな? 草原にぽつぽつと、草のドームみたいなものが点在している。兎さんらしくほのぼのした空気を感じるね。

 いつも通り、一度ホバリングの姿勢になってから、草原側の少し離れた場所にゆっくり降りていくエルル。同行パーティの女性2人が既にそわそわしてるけど、流石にもうちょっと待とうか。


『ん? うおっ!?』

「わー!?」

「きゃー!?」


 と、油断したのが悪かったのか。いや関係ないと思うけど。

 何かに気付いて、即座に翼で空気を打ち、上空へと退避するエルル。間一髪のタイミングで、首があった場所を黒い影が通っていった。一拍遅れて、すっかり降りるつもりだった人間種族召喚者プレイヤーが急な方向転換に悲鳴を上げる。

 …………何となく、原因に予想がつくのはこれ、なんでだろうね……。

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