第59話 7枚目:宝石事情
随分前に取得して、けれど一度も発動させたことのないスキルをメインに入れて。翼を意識しつつ、スキルの発動を念じる。
……うん? 結晶化する魔力を選んでください? えーとこれは、魔法スキルを選べばいいのか。んー、とりあえずお試しだし【火古代魔法】で。えっ、アビリティも選べって? えーとえーと、お試しだし、一番最初の「ファイアバレット」でっと。
待ってまだ項目あるの!? えっ魔力量、えーと、あっ何発分か選べるのか! とりあえず1発分で、よしこれで全部いったな!? 実行!
「「「おわ!?」」」
「……はっ?」
実行、となった瞬間に翼から、氷が出来る時の様子を早回しにしたような音が鳴った。ほぼ同時に、こちらの様子を見ていたらしい妖精族3人とエルルの驚いた声が聞こえる。
集中するのに閉じていた眼を開けて、自分の翼を見てみると……左側の翼、その先端にあった、まだまだ丸い爪。そこに付け爪でも取り付けたように、長さ3㎝幅2㎝厚み1㎝ぐらいの赤い結晶が生えていた。
翼を下ろして尻尾でぺちっと叩くと、ぽろっと取れて地面に落ちる。うん、特に痛くは無いし、魔力も減った内には入らないなこれ。感覚だけど。さて【鑑定】。
「だっから……っ! この! 降って湧いた系お嬢は!!」
「キュー!?(何ー!?)」
……する前に、ガッ、とエルルに捕まって、顔をこねくり回された。何故!!
「えぇぇ……今明らかに生えたよな……」
「完全にこの子から生えたよな……」
「うわ。しかもこれ純度百パーの紅水晶、いや、色考えたら血水晶?」
「内部魔力も歪み一切無し、めっちゃ素直、加工し放題か」
「で、安定度ぶち抜きか。魔力親和性も当然問題なしと」
「密度も十分、質も大きさも十全、魔道具職人が涎垂らすなこれ」
「「「……控えめに言って戦争の種じゃね?」」」
あっれー何だか物騒な話が聞こえるぞー? いつの間にか生えてたスキルを試しに使ってみただけなのに何だか話が大きくなりそうな気配がするぞー?
「分かってるとは思うが……漏らすなよ?」
「零したら妖精郷が滅ぼされるのに?」
「というか妖精族が滅ぼされるのに?」
「古代竜族そのものが敵に回るのに?」
「「「そんなの流石に女王様にだって言えない」」」
「ならよし」
おっと何だかエルルが本気で口止めしてる。んー、たぶん今の物騒な感じからして、ガチでやりかねないな。えー、そんな大事? 大事か。そうか。
……なお、そこからエルルのお説教開始。
それによると、宝石というのは元々希少だし、魔法合金にするには質と大きさがある程度無いといけないという事で、その価値は現実よりお高めとなっているようだ。
で、宝石の中でも魔力親和性が高く、内部魔力が素直で、かつ物質的魔力的両方の意味で安定している……となると、そうでない宝石に比べて倍々算で希少度が、ひいては値段が上がるのだとか。
という事だから、そういう宝石が採れる鉱山は戦争が起こる程の重要資源地で、宝石の加工技術はどの種族でも最重要機密で、腕の良い宝石加工職人の囲い込みは文字通り死活問題となる程との事。
さてこれらの前提を元に、今ほいっと私がやらかしてしまった事を考えると。……属性も魔力の強さも自由自在、【魔力制御】が効いているのか安定度は抜群、かつ魔力的にとても素直な宝石が、さして負担なくすなわちやろうと思えばいくらでも作り出せる。
…………あぁ、うん。私の身柄、というか、宝石を作る能力目当てで戦争が……起こるか。起こるな。うん。ははは。やってしまった。
うん。アウト!!!
「……で、今作っちゃったこれは……」
「即加工しよう」
「兄ちゃんの剣に使おう」
「すげー偶然にいい感じに出来たって事で」
「それで頼むわ……」
「「「こっちも早く現物無くして忘れたい」」」
ははは。申し訳ない。
……いやほんとに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます