第53話 7枚目:周辺探索
最初から、「たからばこ」が回収されなかった場合にどうなるのか書いていない事に対して、違和感はあった。あったが、ここまで緊急な事になると誰が思うよ。
まぁゲーム開始から既に半年以上が経過している。改めて攻略掲示板を見てみると、発見された街は第二の街『ホーピス』、第三の街『ステディア』、第四の街『ジャニパズ』の3つと、元々その近くにあったエルフ、ドワーフ、獣人、ホビットの4種族の街の一部となっている。
……が。『スターティア』を含む4つの街を要する国の首都はまだ見つかっていないし、各種族の首都も当然見つかっていない。他の国なんて、そもそも存在しているかどうかすら確認されていない。
「…………一番やばいのは多分、妖精族だな。あいつら攻撃も防御も物理に弱い上に、環境が変わるといきなり弱ってあっさり全滅とか有り得る。いや、魔物が敵視されている前提だと、魔族は全部まとめてヤバイか……?」
それを聞いて、考え込みながらエルルはそう言った。妖精に魔族、いるらしい。なおホビットは小人族でちょっと違う。エルルの言う妖精族とはフェアリー、2枚から6枚の羽で飛び回る、手乗りサイズの方だ。
魔族について聞いたところ、悪魔に属する相手はまとめて魔族らしい。知能の高い魔物、というとドラゴンも含まれるので、【人化】が必要かどうかで区別するのだとか。
「キュッ?(妖精族とドラゴンって仲良いの?)」
「あー……。俺らは精霊にめっちゃ頼るだろ? で、精霊と妖精はめっちゃ仲が良い。んで、俺らは妖精に悪戯される程度は何ともない」
「キュ(成程だいぶ仲良いと)」
サイズ差が気になった訳だが、仲自体は良好だったようだ。そりゃま気にもなるか。人間種族っていうか、人間はあんまり妖精族と仲が良くないらしいし。……悪戯好きの特徴が足を引っ張ったか。
エルルの様子を見るに、他にもヤバそうな種族は居るようだ。が、何より妖精族が群を抜いてヤバいという結論に至ったらしい。……まぁ、私も種族が絶滅する可能性が無いとは言えないからな……。
「しょうがない……肉の消費が進むけど、飛んで周囲を見て回ってくる」
「キュー……キュ、キュッ(はーいいってらっしゃ……あ、エルルちょい待った)」
「変なもん食うんじゃないぞ。って、何だよお嬢」
「キュキュ、キュッ(ヒトサイズの竜が直立したような種族が居たから、遭遇気を付けてね)」
「あぁ分かっ……待って他の種族近くにいたのかよ!?」
言ってないんだよなー。だってゾンビ時代に追い回されて怖かったからね。
「ここ、谷底だったぞ。ただし俺でも割と本気で真っすぐ上に飛ばないと半日以上はかかるぐらい深い」
「キュー……(エルルが本気で飛ばないと半日以上って相当)」
「こんな谷があったら流石に知ってる筈なんだけどなぁ」
2日後、ずん、と焦げドラ姿で着地したエルルが、青年姿に戻ってそう教えてくれた。あ、ちなみにあのグレートソード、普段の戦闘では使ってない。【人化】を解除するのに使うというか、【人化】するのに余計な力を剣の形に押し込めてるらしい。
別に振れないことは無いけど、あの剣を使う相手なんてそれこそドラゴン姿で相手する様な奴限定だって言ってた。え、今までのダンジョンはどうやってクリアしてたんだって? ……エルルね、普通に格闘も強い。
「ただ、谷の上に生えてた植物には覚えがあった。妖精族の一番大きな街までそうかからない筈だ」
「キュー(なるほど)」
「お嬢が良いなら早速向かうけど?」
「キュ!(いいよ!)」
私はね。私は。
「……なんで俺?」
「……キュキュー(自分の格好もうちょっと見直してみなよ)」
しばらく考えて、あ、って顔になるエルル。……うん。流石にその、血塗れ泥まみれ焦げまみれのボロッボロの状態はどうかと、思うんだ?
まぁ直しようもないのは分かってたから、私は何も言わないし気にしなかったんだけどさ。……地上に上がったら、身体ぐらいは洗おうか。
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