第226話 空中戦『マジックパワーゼロ』


 女・吸血鬼アスワング。


 女吸血鬼伝説としてフィリピンの土着伝承に語られる存在であり、同地のパラワン島に出没するといわれる。


 総じて、ヒツジ男やワニ男のように「体は人間に似ている」といわれており、二足歩行をすることから、一種の獣人と考えられていた。


 伝承では、アスワングが現れる時は、多くの吸血鬼伝説と同じく満月の夜とされるが、出現に際しては近隣の犬が騒ぎ出すと言われる。


 また、人間の血を好むと同時に、コウモリを捕食しそれを主食とするとされる。




 そんな伝説の女・吸血鬼が現実に今、まさに目の前に迫ってきてるのだった!


 「アイ! ヤツのつけている腰の装備をを見ろ!」


 「イエス! マスター! あれは……、サッシュと呼ばれる魔力強化装備のようです。」


 「まさかと思ってけど、やっぱりそうか! まあ、いい。……つか、オレ、勢いで空中に身を投げ出しちゃったけど、このままじゃ落ちて死ぬぅ!?」


 「マスター! ご安心を! 超ナノテクマシンが反重力推進エネルギーを調節し、空を舞うことも可能でございます!」


 「そ……、それって『舞う空の術』!?」


 「そうです! イエス! マスター! あの『七竜球物語』に載っていた技術を実用化いたしました!」


 「お……おぉ……。また、オレの自室のマンガを参考にしたのね……。」





 「な……!? なんだ!? 飛行の呪文『はるかな青空』か!? いや、魔力のカケラも感じないぞ!? あの人間……。雑魚だな! 我が眷属たちよ! 食らうがいい!!」


 アスワングが急上昇して、配下の吸血鬼共をオレの方へ向かって襲わせようとする。


 「ぐえっ! ぐえっ! ぐえっ!」


 「ぎゃぎゃぎゃーっ!!」


 「ゲッゲッゲッゲ!!」







 「マスターの出る幕もありませんわ! ワタクシが蹴散らしてみせましょう!」


 アイはそう言うが早いか、超ナノテクマシンを見えざる手に変える。



 「シャドウアーム!! 握りつぶせ! 心臓をっ!!」


 アイが指揮棒を振るうかのように手を前で踊らせると、アスワングの眷属の吸血鬼たちがバタバタと地上へ落ちていく……。


 「な……! なん……だと……!?」


 アスワングが次々と落ちていく周りの眷属たちを見て、オレたちのほうを振り返った。






 「きぃさぁまらぁーーーの仕業かぁああああーーーっ!?」


 アスワングが牙をむき出す!


 「精神魔法レベル5・煙幕呪文『あんたがたどこさ』!」


 『あんたがたどこさ、肥後さ、肥後どこさ、熊本さ、熊本どこさ、船場(せんば)さ! 船場山には狸がおってさ、それを猟師が鉄砲で撃ってさ、煮てさ、焼いてさ、食ってさ、それを木の葉でちょいと隠(かぶ)せ!!』


 アスワングが呪文を唱えた途端、周囲の空間が歪み、ものすごい熱い熱風とともに、暗闇が支配する。


 瞬間的に停電して真っ暗になった感じだ……。


 空間がねじれたのか……!?


 この感覚は前にもあったぞ……。




 (マスター! 電磁波モードで視界をクリアにしております!)


 すると、なぜかすぐに、視界がクリアになった。



 (助かった! アイ! どうやったんだ?)


 (イエス! この呪文はあの青ひげ男爵が使っていたものと同様のものです。ゆえに対処法も確立しておりますゆえ。)


 (ああ! そうか! 青ひげの時に経験したものだったんだ!?)


 (『魔力』とこの世界で呼んでいる時空に起因する素粒子間に働く力の効力で、この周囲の空間が捻じ曲げられたのだと解析しました。)


 (……というと?)


 (青ひげ男爵のときにもご説明しましたが、異空間に引きずり込まれたと言うことです!)


 (お……、おぉ……。わかっていたんだよ? ただ再度確認しただけだからな? 決して、忘れていたんじゃあないんだからな?)


 (イエス! マスター!)




 「そらっ! 喰らい尽くせ! い出よ! 闇のカラス!!」


 『烏 なぜ啼くの 烏は山に 可愛七つの子があるからよ! 可愛 可愛と烏は啼くの! 可愛 可愛と啼くんだよ!!

 山の古巣に行つて見て御覧! 丸い眼をしたいい子だよ!!』


 アスワングが呪文を唱えると、七匹の黒いカラスが召喚された。


 カラスたちは一直線にオレのほうへ向かってくる!!






 「あれは!? 闇の召喚呪文『七つの子』か!? ジン殿! 聖なる魔法で防御するんだ! 闇のエナジードレインを受けてしまうぞ!」


 アテナさんが、オレに忠告してくれる!


 ……だが、オレはそんな聖なる魔法なんて……、知らないんだよぉおおお1!


 エナジードレイン攻撃……って、超ナノテクマシンの物理防御じゃあ防ぐことはできないのか……!?


 幾重にも張り巡らせた超ナノテクマシンの物理防御結界をカラスどもはすり抜けてくるのだった。




 (マスター!! この魔法は純粋な負のエネルギーを使用者の意思波動とリンクさせ操作していると推測されます! 物理防御では防御不可です! 電磁バリアに切り替えます!!)


 (わかった! 物理的な壁では防げないってわけだな……。)


 アイの思念通信が光速通信でオレの脳にダイレクトに届く。




 「超電磁バリアァーーーーッ!!」


 オレは急いで周囲の超ナノテクマシンで超電導の電磁バリアを張った。



 「くっくっく!! そんな貧弱貧弱ゥな結界魔法でワタシの闇のカラスを防げるとお思いぃ!?」


 なんと……!?


 カラスどもはその電磁バリアをもすり抜けてきたのだった!




 「くぅ……!? まずい! どうやって防ぐというんだ!? 闇の魔力……っていったい……?」


 「マスター! マスターの体内の超ナノテクマシンをすべて医療系モードに切り替えましたわ! しばし耐え抜いてください! ワタクシは闇のカラスの解析に入ります!!」


 アイがいつになく必死に焦っている。


 そうか。


 そんなにヤバい呪文なのか……。



 「頼んだぞ!! アイ!!」


 「マスター! おまかせを!!」



 アイが解析モードに入っている間、オレはこの闇のカラスどものエナジードレインとやらに耐えなければいけない……。


 死んでたまるかっ!!





 アスワングがあざ笑って叫んだ。


 「きゃぁーっはっはっはっ!! バカなヤツめ! その闇のカラスは魔力をすべて吸い尽くすのだよ! 魔力が空っぽになって生きていられる者などこの世に存在しないのだよっ! 死ぬがいいぃいぃいいいっ!!」



 「うわぁあああーーーーっ!!」


 オレの身体を闇のカラスどもが、取り囲み、そのクチバシでオレをつつきまくるっ!!


 あああ……。


 オレはこのまま、『魔力』を吸いつくされ……、死ぬ……のか……?




 ん……?


 魔力……!?


 つーか、ぜんぜん、なんともないぞ?


 クチバシでつつかれているのが、ちょっとばかし痛いってくらいだ……。




 だが、そのちょっとした痛みもすぐに消える……。


 体内の超ナノテクマシーンが医療モード全開で超回復状態となっているのだから……。


 そして、闇のカラスどもはオレの体内から『魔力』を吸い取ろうと必死になっているが、そう……。


 オレにはもともと『魔力』なんてヒトカケラもないんだよなぁ……。


 我が身体に一片の魔力なし!! ……って叫びたいくらいだよ。




 (マスター! この闇のカラスどもが最初から魔力を吸い取るべく近づいてきたことはワタクシは予想しておりました。100%想定の範囲内です。……ですが、コイツラのクチバシの攻撃は防ぐ方式の確立まで、計算が間に合わず、大変申し訳ありませんでした!!)


 (あぁ……、アイはなに? このクチバシのちょんちょん突く攻撃をも阻止しようと焦っていたの……!?)


 (Exactly(そのとおりでございます)!!)





 ふっ……。アイよ……。


 これくらいの程度でオレが死んでしまうかのように必死に焦らないでくれよ。


 こっちがビビっちゃったじゃあないか!





 「きゃあーっはっはっは!! 死ね死ね死ね!!」


 アスワングが喜々として叫んでいる。





 さぁて……。


 どう反撃しようか……。


 オレはちょんちょんとオレの身体をつついてくるカラスどもの中で、少し考えるのであったー。




~続く~


※参照

アスワングサッシュ/Aswang Sashとは、FF11用語で、腰装備の一つ。 2012年9月25日のバージョンアップで追加された。

©「はるかな青空」(作詞:平井多美子/曲/ポーランド民謡)

©「あんたがたどこさ」(曲:わらべ歌/詞:わらべ歌)

©「七つの子」(曲:本居長世、詞:野口雨情)


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あっちゅまん




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