第223話 空中戦『軌道なり』


 一方そのころ、『ウルタール』の街ー。



 「アテナ様。ジン殿。それでは、『トゥオネラ』解放の件、よろしくお願いします。」


 神官アタル様がそう言ってオレたちを見送ってくれる。




 「もちろん、任せておくがいい。『法国』の名にかけても果たして見せよう!」


 「オレも頑張りますよ。」


 「ジン殿。期待していますよ。」


 「いやぁ。アテナさんにそう言われると、がぜん、やる気が出てくるな。」


 「ふふ……。卿はお世辞がうまいな。」


 「いやいや、ホントですって!」


 「まあ、よろしくな。」




 「あの……。ジンさん。ちょっと、いいかにゃ?」


 オレにそう言ってきたのはネコタマコ先生だった。



 「どうしたんだ? ネコタマコ先生。」


 「ええ。ジンさんは『トゥオネラ』の街に直接向かうにゃ?」


 「ああ。直接『不死国』の軍を叩きに行くんだ。……でも、それがどうしたんだ?」


 「うん……。にゃーはあの……、にゃんどるふのヤツについて行ってやろうかと思ってるにゃ。」


 「にゃんどるふ将軍に!?」


 「そうにゃ。アイツを放っておけないにゃ……。」




 そうか……。


 やっぱりネコタマコ先生は、にゃんどるふ将軍のことが気にかかるんだな……。



 「わかった! いいよ。ネコタマコ先生は将軍について行ってやってくれ。でも……。無理はしちゃだめだよ?」


 「にゃ! わかったにゃ! ジンさん。無理言ってすまにゃー。」


 「いいよ。それより気をつけて!」


 「ありがとにゃ!」


 ネコタマコ先生は急ぎ足で、走っていった。




 (アイ……。ネコタマコ先生にセキュリティを強化してやってくれ。)


 (マスター。すでに彼女にはセコ・オウムを設定済みです。そして……、『日本の銅像群』たちは、すべて地上の戦いに投入いたしますゆえ、ご安心ください。)


 (あ!? そっか! 銅像たちがいたの忘れてたよ。それにセコム? ……が入っているなら安心だな。それと……、誰か銅像たちの中で1体、ネコタマコ先生に護衛をつけておいてね?)


 (承知いたしました。……では、かつて「皇居外苑」の一角にあった『楠木正成像』を護衛に付けましょう。)


 (なるほど! 楠木正成といえば、建武中興の忠臣で……。)


 (忍者……と言われておりました。)


 (そうそれ! 楠木正成の妹は伊賀の服部氏に嫁いでいるんだ。伊賀の服部氏といえば伊賀忍者の祖として有名だね。そして、元々彼らは南朝に仕える技能集団で、南朝皇統奉公衆【八咫烏】の一派だった……って何かの本で読んだことがあったなぁ。)


 (さすがはマスター。よくご存知でありますね。後醍醐天皇の倒幕計画に同調し、兵衛尉の官名を与えられた楠正成は、当時、忍者の家系であった服部家の姻戚関係にあった関係から、服部家の協力を得て、敵を欺く忍者のゲリラ戦法を駆使し、後醍醐天皇の倒幕を成功に導いた人物として知られています。)


 (陰ながらネコタマコ先生を護衛するにはうってつけってことだな。)


 (Exactly(そのとおりでございます)!)




 「ジン殿! オレたちは遊軍として、まずはハセグやニルの村の様子を探ってこよう。」


 「うむ。百手巨人ヘカトンケイルは一見に如かず。百々目鬼(どどめき)は一考に如かず。百物語は一行に如かず。百鬼夜行は一果(効)に如かず。……と申しますからな。私たちは敵の動きをまずは探りましょう。」


 うん……。あいかわらずファット・フルモス大公はよくわからない格言を持ち出してくるな……。


 おそらくは、百聞は一見にしかず……って意味だろうけど、あれに続きがあったのか……。


 それ、オレも知らんぞ!




 「ジンさん。お気をつけて。」


 「ジンさん。僕とミナに地上はまかせてください!」


 「ミナさん。ジョナサンさん……。おまかせしました!」




 「それで、ジン殿。『トゥオネラ』の街へ向かうのは良いが、いかに攻めるつもりか?」


 アテナさんが聞いてきた。


 「はい。敵の本拠地を叩く……その前に、敵には近づいていることを悟らせないようにします。」


 「卿にはなにか作戦があるのだな!?」


 「はい。『兵は詭道なり』と言いますからね?」


 「んん? そんな格言は聞いたことがないな。」


 ファット・フルモス公が首を傾げていた……。




 「なるほど。ジン殿。して、その作戦とは?」


 梟の騎士グラウコーピスさんが今度は聞いてくる。






 「グラウコーピス殿。それには、ワタクシの座標特定と、この……化けも……いえ。こほん……。デモ子が皆様を彼の街の背後にお連れいたしますわ。」


 「うむ。そうじゃったか!? たしかに……、その……ば……、いや、デモ子殿がおったのぉ!」


 「しかし、その化けも……、デモ子殿の次元魔法『港』の呪文はすごすぎますねぇ。『港』の魔法の使い手など『法国』にもおりませんよ……。」


 へぇ……。


 デモ子のスキル『異界の穴』に似た魔法が存在するんだな……。




 「つーか、あーたたち……。あたしのこと、化け物呼ばわりしてんじゃないのぉ!?」


 「ああ!? なにかおっしゃって……?」


 「い……いえ……。なにも……ないです。はい。」


 デモ子がちょっと不機嫌になったが、アイのひと睨みで、またおとなしくなった。



 「ふむ。まさにアイ殿の『魔神のひと睨み』ですなぁ……。はぁーっはっはっは!」


 またファット・フルモス大公が変な格言を言ったのだった。


 アイが一瞬、それを聞いて、ハッとした表情を浮かべたのは気のせいだろう……。




 「いいかにゃ! 栄光ある『ウルタール』の猫たちよ! 配置につくにゃ!」


 にゃんどるふ将軍が猫たちに声をかけているのが聞こえてくる。


 「おおにゃ! 地獄猫マタゴット配下の者よ! 吾輩についてくるにゃ!」


 地獄猫マタゴットが一団を率いて進軍する。


 マタゴットは、南仏に伝わる精霊で、毎日欠かさず食事を与えれば夜明けに金貨を返してくれるが、礼を尽くさないと報復されてしまうという。また、9人の主人に仕え、最後の主人を地獄へ導くと言われるのだ。


 そんな地獄の使い猫マタゴットが猫の軍を率いている姿はなんだか頼もしい。





 「では、この猫の王の余に従うものはついて参れ!」


 猫の王と名乗る猫が、また違う猫たちを率いる。


 まさか、猫の王って、あの?


 北アイルランドの昔話で、棺を運ぶ猫を見た男性が帰宅し家族に話していると、寝ていた飼い猫が起き上がり「なんだって? なら僕が次の王だ!」と叫んで飛び出して二度と家には戻ってこなかったという話が伝わっていた。


 猫の王様ということで、ペルシャ猫のようだが……。


 まさにその猫の王と思わしき猫が、一団を率いて進軍していく……。




 「では、マヘス。それにマウアーさん……。妾たちも参ろうか。」


 「御意。」


 「……であるな? バステト……、いや、今はバーストであったな。向かおうぞ!」


 そして、猫の女神バーストもまた、その侍従者(?)らともに戦地へ向かう。




 「よぉーしにゃ! わしらも行くぞ! ……ってタマコ……!?」


 「ふんにゃ! あにゃたがドジ踏まないように、にゃーがついててやるって言うにゃよ!」


 「おおおお……! タマコ……。ありがたいにゃ!」


 「行くにゃよ! ほら、しっかり号令かけるにゃ!」


 「ええーーっい! みにゃのもの! 気合いを入れるにゃよ! 敵は……、サターン・キャットどもと、ズーグ族どもにゃ!!」



 「「おおおおおおーーーーーっ!!」」


 みんな大声でそれに応え、士気高く猫たちは進軍していくのであった。





 うん……。


 にゃんこ大戦争の始まりだにゃ……。いや、だな……。




~続く~


※イメージ参照

添田一平の「ウルタールの猫」

©「港」(曲:吉田信太/詞:旗野十一郎)



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あっちゅまん




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