第47話 幕間1 『各国の動きその3』


 『七雄国』が一国である巨人の国『ブロブディンナグ国』は、北の果てにあるゾティーク大陸のヨトゥンヘイム地方にある。


 その首都ウートガルズは見上げればうなじが背に着くほどの大きな城壁をもつ城塞都市なのだ。


 このウートガルズを巨人の王、ウートガルティロキが治めている。




 ウートガルティロキは考える。


 かつてこの世界にあまたいた巨人種族。


 ヘカトンケイル族、キュクロプス族、ティターン族、ギガス族、霜の巨人族、山の巨人族、ネフィリム族・・・。


 栄華を誇った巨人勢力が、幾度となく行われた世界を巻き込む戦いによって、この北の大地に追いやられてしまっていた―。




 「世界を統べるのは、巨人種族なのだ。だが、今は・・・。」


 かつての戦争でティターン族やギガス族はタルタロス牢獄に封じられ、霜の巨人や山の巨人、ネフィリムも数を減らした。


 巨人種族の戦力は大幅に削られたのだった―。




 「じい。気づいたか?」


 「ええ。もちろんですじゃ。ウートガルティロキ様。」


 答えたのは、盤古という老人だ。




 「魔力爆発があったようだな・・・。この方角は『エルフ国』か。あそこは『海王国』と争っていたな。」


 「そうですじゃ。また以前の森水争乱(エルフカイマキア)の再来かもしれませんな。」


 「ほう。平和も飽きてきたところじゃ。すぐに情勢を探るのだ。」


 「はいですじゃ。では、ゲイルロズの2人の娘、ギャールプとグレイプを『エルフ国』への使者に立てましょうぞ。」


 「うむ。じい。任せた。」


 巨人の王は盤古に指示を出した。




 

 ◇◇◇◇





 サラマンダー種族の国『火竜サラマンダー連邦』には三皇五帝が支配していて、

五人の帝王と、三人の皇王が存在するが、そのうち二人の皇王と帝王も兼ねていて、皇帝が2名という・・・。


 五帝は、木帝・火帝・土帝・金帝・水帝である。


 複雑に権力が入り乱れているが、それはこの種族が戦闘民族だからである。


 とにかく好戦的で、戦士としての誇りが何より大切という思想もあり、それぞれが帝を名乗り、皇王を名乗っているのだ。


 だが、その思想はシンプルがゆえに、逆に種族としてまとまっているのも事実であった。




 皇帝のひとり、東の木帝である伏義(ふっき)・太皞(たいこう)皇帝は、いち早くその波動を感知していた。


 すぐさま、木帝の補佐役人である句芒(こうぼう)を呼びつけた。


 句芒(こうぼう)はいそいそとフッキ皇帝の下に馳せ参じた。




 「これはこれは、相変わらずフッキ皇帝陛下には、ご機嫌麗しく・・・。」


 「挨拶はよい! で、アレをどう判断する?」


 フッキ皇帝は単刀直入である。




 「はい。おそらくはメガラニカ大陸・・・それも『エルフ国』あるいはバビロン地方の『円柱都市イラム』周辺でしょうな。」


 「ほう。お主もそう感じたか。」


 「魔力の波動のゆれは2つの『波』として伝わってきます。

強力な魔力が発生してしばらくして、カタカタと小さな波動が伝わってきて、その後大きな波動が届きます。


 初期の波動の継続時間は魔力発生の起きた場所からの距離に比例します。


 そして、主要波動が始まった瞬間までの時刻から割り出し、魔力震源地からこの雷沢(らいたく)の地『木帝城』までの距離を算出しました。」




 「さすがは、コウボウ。完璧な答えだな。『生ける影』アドゥムブラリでさえ漏れ逃さぬ答えであるわ。」


 「これはありがたきお言葉。」


 「で、始まるか? 戦争が・・・。」





 「うーむ。それはまだわかりかねますな。ですが・・・。準備は必要でございましょうな。」


 「なるほど。まあよい。こちらから仕掛けていっても良いのだからな。」


 「ですねぇ。では、その辺りの動きも・・・。お任せください。」


 「うむ。今度こそ、『帝国』の領土を奪って見せるわ。」


 「さすがはフッキ陛下。その意気や素晴らしきことかな。」




 このサラマンダー種族は、火蜥蜴とも言われるが、まさに火のないところに煙をおこし、火をつける戦闘好きの種族なのだ―。


 この時、動き出したのは、木帝ひとりではなく、他の四帝もまた水面下で動き出したのだった。









 南の火帝である神農(しんのう)・炎帝(えんてい)、


 北の水帝である舜(しゅん)、


 西の金帝である少昊(しょうこう)、


 そして、中央・土帝の黄帝(こうてい)である。


 彼らもまた、来たるべき戦争に備え、水面下で動きを活発化していくのであった―。





 この動きが、この黙示録戦争後に残された世界、ロストワールドに新たな火種を産むことになっていくのだが、それはまだ先の話である―。

~続く~




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