第7章 第19話
「やはり杉田さんの時と同じ状況を疑ってしまいますね。」
深谷が呟く。
『やっぱりそうですよね。なので、不明チップさえどうにかなれば、少なくとも強制ログインは回避できるんじゃないかと考えています。』
「不明チップが特定できて、さらに除去ができれば、その可能性は高いと思います。」
『そこで相談なんですが…』
自分の主治医である高山医師の協力が得られていること。
自分のCTスキャンの画像データがあること。
ErsterSpielerの正規コントローラと比較することで、不明チップが特定できないかと期待していること等を伝える。
「あたしはもちろん協力したいと思っています。」
ErsterSpielerも助け船を出してくれる。
「なるほど。やろうとしていることは理解しました。
まず、あなたの主治医である高山先生とお話をさせて頂きたいですね。
会話をして問題なさそうだという判断になれば、協力させてもらえると思います。」
『ありがとうございます!高山先生からも、そういう話になるだろうと言われていて、
そちらにお伝えして良い連絡先を聞いてきています。』
深谷に高山医師の連絡先を伝えたところで、今日出来ることは無くなったろうか。
協力に前向きな話が聞けただけでも収穫だ。
「お仕置き部屋への連行以外で、初めてデバッグルームに呼ばれるプレイヤーって
珍しいんだよ。」
今日の話の終わりを察したErsterSpielerが、話を振ってくる。
「お仕置き部屋って?」
Seregranceが応えて会話が続く。
「ハラスメントが酷かったり、バグを悪用しているプレイヤーを呼び出して、
警告を与えられる部屋があるんだよ。
もっと酷いプレイヤー相手だと、サポーターからがっつり対人戦しかけられて、
戦績悪化の刑をくらったりね。
それでもやめなきゃアカウントを停止させられるんだ。」
『サポーターってそんなに強いんですか?』
「んー、中にはプレイが上手い人もいるけど、装備が特殊なせいで強いのかなー。
ゲームマスターってのもいて、そっちはキャラクターも無敵なんだけど、
サポーターはあくまでサポーターだから、ダメージを与えられれば倒せるしね。」
『へー。どんな装備なんですか?』
「教えてくれないんだよー。でも、一度あたしも戦わせてもらったことあるけど、
手も足も出なかったよ。」
『エアスタさんで手も足も出ないのか…』
「全くダメージを与えられてなかったらしいなぁ。
無敵なの?って思わず聞いちゃったもの。」
サポーターの深谷を目の前に好き勝手に話しているが大丈夫だろうか。
「こればっかりは伝えられないんですってば。
僕らはこのゲームを運営している訳じゃないですからね。
あくまで間借りしてモニタリングツールとしても使わせてもらっているだけなので、
ゲーム運営側の情報をおいそれと話す訳には行かないんですよ。」
深谷が苦笑しながら話す。
『あぁ、そうか。ゲームのシステムを借りて研究してるってことなんですね。』
「ええ。なので我々がこのキャラクターでログインしても、動けるのはデバッグルーム内のごく一部のエリアだけですよ。」
「さっき言ったお仕置き部屋とかね。一度フィーアトさんも対戦してみて欲しいな。」
「エアスタさん…あれも超特別扱いだったんですから。」
『この部屋じゃ対戦はできないんですか?』
「できません。」
深谷の苦笑が俺にも向けられる。
「デバッグルームではエリア毎に戦闘可否やログアウト可否等のステータスが個別に設定されてますから。」
『そっか。エアスタさんがここまで言うなら一度経験してみたかったなぁ。』
「スピ、あなたもだいぶダンスプレイヤーとして染まってきたわねぇ。」
Seregranceにまで苦笑されてしまった。
「さぁ、今日のところはこれくらいで終わらせてください。
私はこれから高山医師に連絡を取ってみますから。対戦より優先度は高いでしょう?」
『おっと、そうだった。もちろんです。』
「結果は高山医師からお伝えしてもらうようにもお願いしておきます。
今日すぐに連絡が取れるとも限りませんので、先方からの連絡をお待ち下さい。」
『分かりました。よろしくお願いします。』
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