第5章 第5話

「全く…あれだけ有名な方、調べればすぐに女性プレーヤーと分かるはずです。

 なのに性別すら理解していないとは。」

本気で呆れたのか、蔑みの目に変わっている。


「しかし、エアスタ様を貶めようとしている訳では無いと、

 少しだけ様子を見ても良いとも思いました。」


「マスター!?」

「そりゃないぜ、ここで認めないようなら痛い目見せるって話だろ!」

「何のためにわざわざ逆走までしてきたんだよ!」


取り巻きが好き勝手に騒ぎ始めた。

HoneySwordが両手をバッと広げて黙らせる。


「とは言え、この通り。ここに集まった連中には納得できない者もいます。

 こうなっては、私の口約束でこの先の妨害をしないというもの難しいでしょう。

 元々私を筆頭に血の気の多い人間の集まりです。」


HoneySwordが振り返り、親衛隊に問う。

「あなたたち。チート疑惑はともかく、何が何でも倒したいという者は前に出なさい。」

ぞろぞろと10人程が前に出てくる。


「先ほどの会話に納得が行かない者も前に出なさい。」

さらに4人。


「私の様子見という意見に納得が行かない者も。」

さらに1人。


「他にはいないか?」

残るメンツは5人程度。目が泳いでいるのもいるが、なんとなく頷いたりしている。


「15人ですか。少し多いですが、団体戦で解決しませんか。」

『はぁ、結局最後はそうなるよな。』


「私は、そこの5人と一緒に傍観します。」

「なっ…マスター!どういうことだよっ!」

最初の10人の中でも真っ先に足を踏み出した男が文句を言う。


「だから言ったでしょう、私は様子を見ても良いと。

 妨害しなければ、監視は続けて良いという条件もあります。

 ここで戦闘を仕掛けて敗けようものなら、

 その後の監視は恥を晒しながら練り歩くようなものですよ。」


「おいおい…チートじゃねえっつーなら、やれば倒せるってことだろうが。

 タイマンは知らねぇが、数の暴力を分らせるにはもってこいの機会じゃねーか。

 しかも全員揃ってないとは言え、12エリアでやってるメンツが半分だぞ?

 6エリアのバトロワとは状況が違うんだ。

 8エリアに来たばっかりの奴に敗ける訳があるかよ。」


「それも分かりますが、それでも今回の私は傍観者です。

 あなた達に敗けるようであれば、その程度。

 勝ってしまうようであれば、外から冷静に観察している人間が必要です。

 中に入ってしまえば、じっくりと観察することもできなくなります。

 戦う可能性があるのは今回だけでは無いのですよ。」


『おいおい、そういうのは俺の居ないところで話してくれよ…

 じっくり見るから丸裸になれ、なんて言われて気持ち良いもんじゃない。

 しかも、この団体戦で俺たちが得られるものは何なんだ?

 勝とうが敗けようが監視されるんじゃ割にあわないんだが。』



HoneySwordが取り巻きを見回してから口を開く。

「まず、今後あなたへの妨害をやめさせると約束しましょう。」


少し間を置いて続ける。

「それから、あなたがチーターではないということを

 SCARSの名の元にアナウンスします。

 運営の精査の結果から得られた回答なので、

 チートでは無いと認めざるを得ないのですが、

 これは負け惜しみみたいなものです。」


『ちなみに俺たちが負けた場合は?』


「チーターだと騒がれていても、所詮SCARSには敵わなかったと

 宣伝させてもらいますよ。

 私たちも親衛隊同士の勢力争いがあるのです。」


やれやれ、戦いを拒否してもこの先の面倒が目に見えるし、

戦ったとしても負けてしまえば変わらない。

随分と嫌な条件を押し付けられている。


振り返ってSeregranceとドリッピーを見てみると。

……2人とも目が輝いている。

Seregranceなんか、片手を突き出し親指を立て、

満面の笑みとサムズアップだ。


『オーケーだ。団体戦、やるとしよう。』

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