第4章 第14話

「まぁ、ひとまず話はボス倒してからにしようよ。ほら。」

ドリッピーの言葉で、部屋の中央を見る。


部屋の中央には霧が湧き出していた。

「2人とも盾装備してるし、ガードしっかりね。

 このボスは霧状で、攻撃距離が異常に長いからね。

 その分攻撃はそこまで早くないから、

 しっかり見極めてガードすれば大丈夫だよ。」


なるほど、あの霧がボスそのものなのか。

『よくある、霧状だから物理攻撃が効かない

 とかいうのは無いの?』

「それあったら、誰も倒せなくなるじゃん!

 魔法とか無いんだから。」

『あ、そりゃそうだ。』

「発火能力の付与だって、ダメージ1.2倍ってだけで、

 別に火属性の付与とかじゃないからね。」


発火能力で思い出した。慌てて3人の武器に火を付与する。

俺もSeregranceも示し合わせて、武器は+25程度に揃えている。

第7エリアの+13ノーマル武器相当の攻撃力だ。


ドリッピーの武器がどれくらいなのかは分からないが、

3人いれば攻撃力に困ることはないだろう。


「ほら、くるよ。」

霧の中に目の様な2つの空洞と、口の様な大きな空洞、

そして腕のように長く伸びた部位が2つ。

その左腕が大きく振りかぶられた。


が、かなり遠い。まだ20メートル近くは離れている。

ひとまず様子を見ながら近寄ろうかと考えていると

真横から横薙ぎの攻撃が飛んできた。


Seregranceと2人、慌てて盾で受け止める。

『こんな離れてて届くのかー!』

「もー、だから言ったじゃーん。

 攻撃距離が異常に長いからねってー。」

「ごめんなさい、想像以上でビックリしちゃったわ。」

「左右の見えてる腕以外にも、正面からいきなり腕が生えたり、

 頭の上やら足の位置やら、色んなとこから攻撃がくるからね。

 のけ反り効果のある攻撃が多いから、しっかり防御しないと

 吹っ飛ばされたり、転倒させられたりするよ。」


言ってる傍から飛んでくる攻撃を、しっかり構えて盾で受け止める。

攻撃の頻度はそこまで多くないので、Seregranceにガードしてもらって突っこんでみようか。


『セレ、次の攻撃来たら早めに受け止めて。

 その間に突っ込んでみるから。』

「オッケー。」


Seregranceが横薙ぎの腕に向かって盾を構えて駆け寄る。

同時に俺は本体に向かって走り出す。


ガキンッ


Seregranceが攻撃をしっかりと受け止めるのを確認し、前を見た瞬間、

目の前には無数の足、足、足。

『うわっとぉ!』

慌てて盾を構えてガードに徹する。

連続する攻撃のノックバックで元居た位置に近いところまで押し戻されてしまった。


「スピさん、おかえりー。」

『た、ただいまー。』

「あんな感じで、

 遠くにいる間はゆっくりした攻撃ばっかりなんだけど、

 近寄るといきなり攻撃が激しくなって、

 なかなか近寄らせてくれないんだよ。

 元々8人パーティーで地道に削るボスだからねぇ。」


「1人が盾役やって、2人で弓使って攻撃してみる?」

俺も考えていた方法をSeregranceが提案してくる。


「それでもいいんだけど、

 弓だとすっごい時間がかかるんだよねー。

 そもそも強い弓使いって少ないし。

 あー…でもスピさんとセレさんは、

 なんとなく弓も強そうな気がする…

 それはいずれ教えてもらうとして!

 でもここは1つ。僕の自己紹介も兼ねて殴り倒そうよ。」

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