第3章 第11話

『ということで、第7エリアまでさっさと進めちゃおう。』

「良い友達ねー。妬けちゃうわ。」

『そうだね。自棄になってた頃も、

 Seregranceの次くらいに助けられた存在だからなぁ。』

「おっ!ちゃんと分かってるじゃなーい!」

『ささ、お喋りはダンジョンに行きながらにして、

 ログアウトするまでにこのエリアはクリアしちゃおう。』


第1エリアは単純だ。

パーティーを組んでダンジョンに入り、初心者エリアより強くなっているボスを協力して倒すだけ。

レア武器が手に入るクエストがあったりするが、この期に及んで第1エリアの武器では

例えレア武器であったとしても手に入れる意味が無いので無視だ。


1つ問題があるとすれば、ダンジョンには複数のパーティーが同時にいることになるが、ボスは1体だけという点。

一度倒されたボスが再度復活するまでの間、他のパーティーはボス部屋の前で待つことになる。

ボス部屋に辿り着くと、やはりそこには別のパーティーがボスの復活を待って並んでいた。


『こんにちはー。結構待ってますか?』

「こんにちは。今、前のパーティーが入っていったばかりなんで

 うちらで1時間待ちですね。」

『じゃぁ、僕らは2時間強ってとこですね。

 ありがとうございます。』

「あれ、2人だけなんですか?」

『ええ。そちらは?』

「うちらは4人ですね。」

「あっ!スピラーさん!」


奥の方にいた人物が唐突に叫ぶ。

「先日は初心者クエありがとうございました!

 おかげでちょっと楽しく遊べてます!」

多分、初心者エリアの対戦クエストを手伝った人物なのだろう。

申し訳ないが、手伝った相手の名前を覚えていない。

『いえいえ。楽しめてるなら何よりですよ。』

「あ、ほんとだ。スピラーさんだ。」



なんと、4人パーティーの内の3人は対戦クエストを手伝った相手だったらしい。

挨拶と雑談の中、気になっていたことを聞いてみた。

『そういえばスキル狩りって頻繁に遭遇するんですか?

 なんか俺が対人クエスト手伝ってたせいで、

 初心者エリア卒業したての対人戦に慣れてない人が

 スキル狩りから狙われてると聞いて…』

「あー、僕らは一度も遭った事無いですね。

 相手も★や★★手に入れてもしょうがないでしょうし。

 スピラーさん

 もしかしてスキル狩りからスキル奪われちゃいました…?」

『えっ?いや、俺もスキル持ってますよ。』

「あれ、おかしいな。

 スキル所有マーク表示されてないから、

 奪われちゃったのかと思って。」

そういえばシンカー達も、初めて会った時に同じようなこと言っていたな。

スキル関連は★★★★★を手に入れると固く決めていたせいで、

どんな効果のスキルがあるのか、という事以外ほとんど調べていなかった。


『そういえば、前にも言われた事ありました。

 バグかなんかかな?って話してましたけど。』

「バグだとしたらラッキーですねー。

 スキル持ってるように見えなければ、

 スキル狩りにも狙われませんし。

 僕らはほら、★か★★くらいしか持ってないんで、

 やっぱり狙われないんですよ。あはは。」

見ると、アイコンの色が違う。銅色のアイコンが2人、銀色のアイコンが2人。

『アイコンの色の違いがレア度の違いですか?』

「あ、そうですそうです。

 ★だと銅色、★★だと銀色、★★★だと金色です。

 ★★★★だと虹色らしいですよ。僕は見た事ないですけど。」

隣にいるSeregranceには、金色のアイコンが輝いている。


『★★★★★だと何色なんですか?』

「分かんないっす。

 多分誰も手に入れた事無いから、

 分かんないんじゃないですかね。」

『なるほど。

 確かにあの出現率の低さは、凶悪ですもんね。』

「あれ、出現率の情報とかありました?

 入手報告が無いから出現率分からないって書いてますけど…」

おっと、ヤブヘビだ。


『いや、★★★★ですら十分低いのに、

 いくつか入手報告されてるでしょ?

 それなのに未だに★★★★★が出てないってことは、

 ★★★★の何分の1とか、下手すると十分の1とかいった

 出現率の可能性もある訳だから。』

実際は十分の1以下だった訳だけどな。


「確かに。

 そう考えると★★★★ですら現実的じゃ無いですもんねー。」

「虹色のアイコン付けて戦ってるとカッコいいだろうなぁ。

 あこがれるなぁ。」

「そのためにエリアクリアするんだろ!

 ここじゃボスの競争率激しすぎるからな。」

スキル談義でワイワイ始まったところで、そろそろ1時間。

ボスが復活するころだ。

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