第2章 第12話

リフレッシュした心と体で、初心者ダンジョン周回の第2章開始だ。

とは言えやることは変わらない。


★★★★★スキルの獲得を目指すこと。

あわよくば装備を+21以上に強化していくこと。


強化に関しては、今までの確率から計算してみると60%程度の成功率のようだ。

初心者武器とは言え+20ともなると、実はそれなりに強い。

推奨攻撃力で調べてみると、最新のエリアでは流石に通用しないが、

中盤程度で手に入る武器のの+11~12程度と比べれば、遜色が無いレベルだ。


この強化し放題な状況も今の俺ならではと考えると、

やはり強化値の高い武器を作っておきたい。

…ところだが、正直普通にやって+30や+40といった強化値に辿り着ける気がしない。


そこで、またしても閃いたことがある。

今度は小夜香にまで苦行を強いることになってしまうのだが…

協力を惜しまないと言ってくれる以上、相談するべきだろう。



「もちろん協力するわよ。」

『いや、まだ内容も伝えてないよ。』

「めんどくさいことなんでしょう?

 でも私にしか出来ない事なのよね?もちろんやるわよ。」

清々しいまでの即答っぷりに、俺の方が悩んでしまう。

『小夜香にも狙ったスキルを手に入れて欲しいんだ。

 しかも今後の攻略には役に立ちそうにないスキルを。』

「なるほど。戦績は悪くなるし、その後の攻略も辛くなりそうってことね。」

『いや、戦績や攻略に関しては問題ないんだ。

 この間、実験のために作ったキャラを使えば良いから。

 ただし、その間費やす時間がSeregranceの為にはならない。』

「あはは、なんだ。そんな事なの。全然気にすること無いわよ。

 で、何のスキルを手に入れたらいいの?」

『★★★の強化職人スキルだよ。』


強化職人。装備の強化成功率が上がるスキル。

効果はかなり高いらしいく実用性はあるのだが、

戦闘がメインのゲームにおいて戦闘能力に全く関係ないスキルなため、

残念スキル扱いされている。


強化職人を持っているプレイヤーを探して強化を頼むという手段もあるのだが…

強化対象のアイテムは、強化職人スキルを持っているプレイヤーが所持している必要があるため、

自分の装備を強化してもらいたい場合は預けなければならない。

成功か失敗かのメッセージは他人には見えないため、失敗したと言って持ち逃げされたり、

そもそも強化すらしないで逃げられる可能性があることを考えると、

見ず知らずのプレイヤーに強化を頼む気になれないというのも、

残念スキル扱いされているポイントだろう。


「そうとなれば、早速ダンジョンに行っちゃいましょう。」

そそくさと食事を終わらせ、二人そろってログインした。

『じゃぁ、ひとまず周回効率上げられるように武器を渡しておくよ。どれが得意かな?』

「そうねぇ。片手剣が一番使い慣れてるかも。

 2種類使っていいなら、弓も一緒に欲しいわ。」

『良いけど、弓って使える?

 ワンパターンとは言え、ボスも結構動くし当てづらいんじゃない?』

「私もあなたのメモを読んでるからね。

 面白そうなことは試してるし、使えそうなら練習してるの。

 サイクロプスの目を突いた後、離れてから弓で狙えば、

 硬直があったとしても、多分2回は攻撃できると思うわよ。」


…この子、想像以上にやりこんでいらっしゃる!

そうか、弓はそんな使い方もあるのか。


『分かった。じゃぁ片手剣と弓を渡すよ。

 そして、その弓の使い方は俺も練習してみるよ。』

「ふふっ、私でもアドバイス出来る事があると嬉しいわね。

 じゃぁ、早速周回はじめちゃいましょ。」


こうして孤独なスキル選別作業に身を投じるプレイヤーが増えた。



はずだった。

「ねぇ、強化職人だったわよね。★★★の。」

『うん。』

「2周目で出ちゃったわよ。」

『いや、出るの早すぎるよねっ?』

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