婚約
06.01 「彼の子供を産みたいとは思わないかい?」
「ううぅ」
「ちょっと、
突然の激しい痛み。吐き気もする……
◇◇◇
「茎捻転を起こしてしまったようなので
私、お腹が痛くなって……
「
お母さんの声だ。子供を産めなく……。やだ。そんなのやだ。
「正常部分が温存できれば妊娠できなくなるという事は無いが、彼女の場合両方の卵巣に
女の子に戻ったときに見つかった
もちろん、受精なんかしてないよ?
でも私、
「しかし、これほど急速に大きくなるとは予想外だったな」
あれから定期的に経過観察をしてたんだけど、少しずつ大きくなっていっていた。そう、少しずつ、だったはずなんだ。前回検査を受けたときも、まだ経過観察で大丈夫だって言われたのに。何で急に……
「
「気がついたようだね、痛みはどうだい?」
「私、産みたいです」
「ああ、そうだね。丁度お母さんに説明したところなんだが、茎捻転を起こしてしまったようなので
「……はい」
◇◇◇
こうして、私は
手術は無事終わったけど……、私は卵巣の半分以上を失った。
「お母さん、
「解ってるわ。気持ちの整理が着いたら自分で伝えなさい」
「うん……」
「大丈夫よ。産めなくなったわけじゃないんだから」
そう、だよね。大丈夫なんだよね、私。
「元気だしなさい、
「う、うん……」
「もう……、何なら試してみてもいいわよ?」
「試すって?」
「
「こ、子作りって、こんな時に何言ってるの、お母さん」
「こんな時だからこそよ。不安なんでしょ? 色々と」
「そうだけど……、だからって。大体から、高校生の娘に子作り進める母親なんて何処にいるのよっ」
「あら、私、今すぐなんて言ってないわよ? それに、今の
もう、お母さんったら。
「どうかな、調子は」
「特に痛みとかは」
「まあ、今は鎮静剤も効いているからね。ところで、君に相談があるんだが」
「相談、ですか?」
「ああ。
「
「まあ、落ち着き給え。しかし、こんな状況でも恋人の心配とはね。妬けるじゃないか」
「先生、
「心配ないよ。彼が入院したのは成長期性反転症候群の治療の為だ」
「性反転……、じゃあ、
「ああ。今回はかなり期待していいだろうね」
「そこで、相談何だけどね……」
そこでって、
「手術を終えたばかりの君にこんな事を言うのは気が引けるんだが、彼の治療を始める前に卵子を保存しておいたらどうだろうか、彼の」
「
「ああ。万が一、君の卵巣が機能しなかった場合……」
「機能しない……、私の……、卵巣が……」
「そんな顔をしなくていい。あくまでもそういう可能性も有るというだけでそうなると決まったわけではない」
「可能性……」
「そう。可能性だ。それでだ、仮にそうなった場合でも卵子提供を受ければ子供を産むことは出来る。子宮には何の問題もないからね」
「卵子提供……」
「彼の子供を産みたいとは思わないかい?」
「
「理解が早くて助かる。赤の他人の、第三者の卵子で、なんて嫌だろ? だったら一層の事、彼の卵子と彼の精子で、って事なんだが。今の彼にはそれが出来るんだよ」
知らない誰かの赤ちゃんじゃなくて、
「先生、それってクローンと何が違うの? もともと
「それに、倫理的に問題があるんじゃ……」
「初めての事例なんでね、倫理的にどうかっていうのは何とも言えない。一人で卵子と精子の両方を作り出せる人間は居ないのだから。今のところはね」
「
「それだと、私の子供じゃなくて、きょうだいって事になっちゃうもん」
「
「まあ、そこまで心配しなくても男性はX染色体とY染色体を持っていてね、って、主席の君が知らないわけもないか。とにかく、X染色体を持っているということは、X染色体を持つ卵子も、同じくX染色体をもつ精子も作り出すことが出来るわけだ。これらが受精すると?」
「女の子……」
「そう。当然の事だが、彼のクローンなわけがないだろ?」
実際には減数分裂の過程で父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子との間で組み換えが起こるから、男の子だったとしても
「先ずは彼に事情を話して採卵する必要があるんだが、呼んでもいいかい、ここに」
「わかりました。呼んでください、ここに。私から
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