05.05 「私の事なんて覚えてないですよね」
冬休みも終わり、今日は入学式。口も利いてもらえなかった一年前とは違い、
というのも、評議委員は入学式の準備や案内とかで登校しないといけないのだ。他にも、ボランティアで登校してきてる生徒も居るみたいだけど、気にしないで手を繋いで歩く。もちろん恋人繋ぎで。
「おはよう、
「「おはようございます、会長」」
「
「まあね。これでも生徒会長なのよ? 登録情報に関する変更申請には目を通しているわ。女の子に戻れたようだけれど、おめでとう、でいいのかしら?」
「もちろんですよ、会長」
「そう、私も性別は気にしないのだけれど、気が合うわね、
会長とそんな挨拶を交わし、僕は入学式の会場となる第2体育館へ、
それにしても、
「どうしたの?
「えっ、はい」
そして、退屈な入学式が始まった。自分のときだって退屈なのに、他人のなんてね。特に、新入生代表の挨拶がなぁ。淡々と、用意された原稿を読み上げるだけの女の子。彼女が今年の主席かぁ、全然感情が篭ってないんだけど。
「
そうそう、そんな感じで。ん? 今、
「ずっと憧れてたのです。だから、宜しくお願いしますね、
うん、
えーっと、誰? 君。
「(
会場がざわつく中、隣にいた会長が耳元で囁いてくる。
「うーん、心当たりが無いと言うか、僕のことを先輩なんて慕う後輩なんて居ないと思うんだけど」
「なら、もう一人の
「
「でも、
「うーん」
そして入学式終了後、例の女の子が態々挨拶に来てくれた。
そういえば、
「先輩、お久しぶりなのです♪ って言うか、私の事なんて覚えてないですよね」
「えーっと、うん。ごめん、誰だっけ?」
「そうですよね……。私の事なんて……」
俯いて、今にも泣き出しそうになる新入生。
「うわあ、ごめん、本当にごめん。でも全然記憶になくて……。記憶喪失になってた所為かもしれないんだけど……」
「……まあ、影から見てただけなので、それは仕方のないことなのです」
「ええー」
もうー、記憶がちゃんと戻ってないのかと心配しちゃったじゃない。
「でも、学校紹介のパンフレットで見た時は運命を感じてしまったのです。誰に訊いても進路が判らなくて途方に暮れていたのですけど、まさか
なんか“ミス”に力が篭ってない?
まあ、後輩って言うなら僕の過去も知ってるんだろうけどさ。
「
「
「はい、
「実在したの?」
「えっ?」
「ええっ?」
僕の記憶が正しければ、確かにある日突然そんな名前で呼ばれるようになったんだけど、それは只の嫌がらせだった筈だけどな。
やっぱり、記憶の一部が欠如してるの?
「
他にも失われた記憶が無いのかと不安になっていると、式の後片付けの為に
「親しげって……、ちょっ、いつの間に」
僕が混乱している間に腕にしがみついて来てたよ、この娘。しっかりと柔らかな膨らみを押し付けながら。
「先輩、誰なのですか、この人。凄く可愛くて嫌な予感しかしないのですけど」
新入生がしがみつく腕に力を込める。
「先輩?
「そうだよね。良かった〜、記憶が欠如しちゃってるのかと思ったよ」
「で、いつまでそうしてる気なの?」
「あっ、うん、ちょっと離れてよー」
「嫌なのです。やっと
「
「いや、そんな人実在しないから」
大丈夫。僕はボッチだったんだ。そんな名前の人と面識はない。
「実在しますー。先輩たちのこと知らない人なんていないのです。それに、
「
「いや、僕は会ったこともないし、顔も知らないん……、
「緊急家族会議、かな」
いや、会議と言われても僕には心当たりがないんだけど……
兎に角、物凄い力でしがみつく後輩を
「で、さっきの女の子は誰なの?」
「そういえば、名前訊いてなかった。誰だろ」
「彼女は
流石会長。でも……
「トオルコって……」
「そう。
「
「記憶にございません……」
いや、ほんとに。
しかし、
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