03.18 「いいよ、ゆっくりね」

 今日は朝から強い雨が降っていて、日付が変わる頃には台風が最接近するみたいだ。


 「じゃあ、行ってくるからあななたちも気をつけてね。とおるちゃん、伊織いおりの御飯お願いね」

 「それは任されちゃうけど、こんな日ぐらい休んだ方がいいんじゃないかなあ。夕方から電車止まるって言ってたよ?」

 「そうだよ。帰って来れないかも知れないよ?」

 「そうもいかないんだよ。外せない打ち合わせが有ってな。最悪は……、そうだな、そのまま会社に泊まりか。だからって、間違い起こすなよ、とおる

 「間違いって、その場合、妊娠するのは僕なんだけど?」

 「そうか、ならいいのか」


 いいのかよ、バカ親父……


 「あらあら、この若さでお婆ちゃんになっちゃうのかしら、私。とおるちゃんと凜愛姫りあらの赤ちゃんかあ、可愛いだろうなあー」

 「もう、お母さんまでバカな事言わないでくれるかな。私、そんなつもりないし……」

 「やっぱりダメだ。とおるが出産だんなんて、考えただけで頭がおかしくなりそうだ」

 「はいはい。精々凜愛姫りあらを襲わないように心掛けとくから、とっとと行っちゃいなよ、父さん」

 「お母さんは応援してるわよっ、凜愛姫りあら

 「だから、そんなつもりは……、もう、行ってらっしゃい」


 という感じで両親を送り出し、暴風警報が発令されたため休校となった僕達は、期末試験に向けて一緒に勉強することにした。リビングに並んで座り、時々触れ合う肩にドキドキしてると、台風が接近してることなんて忘れちゃいそうだ。

 あの日、凜愛姫りあらにプレゼントを渡したけど、お互いにどう思ってるかは伝えあっていない。何となくなんだけど、お互いに思い合ってるんじゃないかって感じてはいるんだけど。


 事前の予想、というか予定なのかな。夕方には電車が止まったけど、未だ帰宅してない両親。


 『やっぱり帰れなくなっちゃったみたい。という事で、頑張ってね、凜愛姫りあら

 「もう、お母さんったら……」


 電話の声、全部聞こえちゃってるから反応に困るんだけどな……


 台風の最接近に伴い、建物の間を抜ける風が唸り声をあげ、閉じたシャッターもガタガタと音を立て始める。


 「とおる、大丈夫かなあ」


 絵的には女の子にしがみついているイケメンなんだけど、まあ、これは仕方ないか。


 「大丈夫だって。確かに風は強いけど、この辺りは直撃じゃないし台風の左側だから」

 「でも、家、揺れてるよ?」


 確かに、風が吹く度に家が揺れてちょっと怖い。


 「こうやって衝撃を逃してるんじゃないかなぁ、たぶん」

 「そう。とおるが言うなら大丈夫なのかな」


 あっ……


 「……」

 「あはは、電気、消えちゃったね」


 真っ暗闇で風が唸り、家が揺れる。僕もちょっと怖くなってきたかも。でも、凜愛姫りあらに抱きしめられてるからちょっと幸せ。


 「とおる、一緒に寝よ?」

 「う、うん、怖いよね凜愛姫りあら


 もう、義母かあさんが変なこと言うから意識しちゃうじゃないかぁ。それに誕生日の事もあるし……

 でも、こんなに震えてる凜愛姫りあらに一人で寝てなんて言えないもん。


 「暗くて何も出来ないから、寝よっか」

 「うん」


 そして僕は今、ベッドの中で背中に凜愛姫りあらの温もりを感じている。

 怖がって抱きついてくる凜愛姫りあらは全く遠慮することがなく、というか、余裕がないんだろうけど、上を向いていれば覆いかぶさってくるし、かといって向かい合わせというのは恥ずかしいというか、興奮して眠れそうにない。妥協案ということで、背中に張り付いてもらってるんだけど、これでも眠れそうにないかも。


 「ごめんね、とおる

 「気にしなくていいよ。僕もこうしてた方が安心だし」

 「うん。私も。ありがと、とおる


 いつしか凜愛姫りあらが寝息を立て始め、やがて僕も意識を手放した。


    ◇◇◇


 再起動したときには、もう明るくなり始めていたけど、何だか息苦しい。そう、凜愛姫りあらに締め付けられているのだ。


 【R18警告により削除】


 「とおる……」

 「おはよう、凜愛姫りあら。ちょっと苦しいんだけどさ」

 「……」

 「ちょっ、凜愛姫りあら


 【R18警告により削除】


 「とおる……一緒に……」

 「一緒に?」

 「……」


 【R18警告により削除】


 「とおる……」

 「何? 凜愛姫りあら

 「……」


 凜愛姫りあらは僕と……


 【R18警告により削除】


 義母かあさん、ちょっと煩い。


 【R18警告により削除】


 黙れ、バカ親父。二人とも僕の脳内で勝手なこと言わないでよ。


 【R18警告により削除】


 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】


 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】


 【R18警告により削除】


 「きゃあ!」

 「……」

 「私、何をっ。【R18警告により削除】」

 「凜愛姫りあら?」

 「とおる、私に何したの? 【R18警告により削除】」

 「えっと、どちらかというと、されてたのは僕の方かな……、もしかして自覚ない?」


 夢でも見てたのかな、凜愛姫りあら。【R18警告により削除】


 「私、何を……」

 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】


 【R18警告により削除】


 【R18警告により削除】

 【R18警告により削除】

 「気にしなくていいってば。僕も……」

 「とおるも?」

 「なんでもない。さあさあ、お風呂に行って」

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