結果発表

「えーと、チーム『お子様ランチを極める部長と可愛すぎる後輩たち』の作ったお子様ランチは、まず、サラダやグリーンピースが添え物として巧みに使われていて見栄えが良く……」


「そんなところまで私たちのお子様ランチを理解してくださるなんて光栄ですね!」


「そうだな……」


「それから、デザートも一瞬普通のプリンに見えましたが、食べてみるとしっかり桃の味がして素晴らしかったです」


「ほらほら! 普通のプリンと見せかけた桃プリンも認めてくれたよたうちゃん! うれしいね!」


「おお、うれしいな……」


「あとはメインのハンバーグは、一般的なお子様ランチの平べったいものより少し厚く、こね方も工夫されていたのか、ジューシーさが保たれていました。あと、ふりかけにこだわっていたのも好印象で、これはレシピ提出の時点で、話題になっていたようですね」


「先輩が特に力を入れたところも褒めてくださっていますね。よかったですね」


「総合して、チーム……『お子様ランチを極める部長と可愛すぎる後輩たち』が作ったお子様ランチは、一般的な人気メニューのお子様ランチの形を維持しながら、オリジナリティあふれる形で美味しい料理になるような工夫がされていました」


 僕たちのお子様ランチの講評が終わった。


「なんでテンション高くならないんですか先輩!」


 隣の浜辺さんが乗り出してくる。ひじかけに置いた腕を少しでもあげるとおっぱいに触れそうなくらいだ。


「いや……あらためてチーム名を読み上げられるとやっぱ恥ずかしいじゃんかよって思った……」


「そんなこと気にしません!よかったじゃないですか! まあ……先輩が納得いってないのかもしれないですけど」


「そんなことはない……よかった」


 僕たちは入賞はした。


 だけど、次なるステージの、全国から集まって行われる料理コンテストの都代表には選ばれなかった。


 つまり上位三チームには入れなかったということだ。


 万佐樹のチームも入ることはできなかった。


 正直、悔しいというより、他の入賞したチームの講評を聞いているうちに、食べたくて仕方がなくなってきた。


 考えてみれば、それぞれのチームが、本気で作った料理が集まっていて、今この講堂には、本気で料理を作った人たちがいるわけだ。


 あらためてすごいと思ったし、その人たち全員に、チーム名がさらされたのがつらいと思った。


「たうちゃんすたんどあっぷあんどごーとぅーざすてーじ!」


「え?」


「賞状受け取りに行きますよ。みんなで」


「おお」


 男は僕一人なので、誰がどう見てもステージに上がった途端、僕が「お子様ランチを極める部長」だとわかってしまう。


 だけど、それでいいと思えるようになっていた。


 きっとこの講堂にいる人だって、自分たちの作る料理を極めてきたわけだし。もちろん僕たちだってそうだ。


 僕は立ち上がって、浜辺さん、萌門さん、木谷戸さん、中見さん、阿田さんと、一緒にステージに向かって歩き出した。

 

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