審査の待ち時間

「先輩! なんかほっと一息って感じで暇な時間ですね?」


「そうだな……」


 食堂が広々していて解放感があるのも少しはあるけどもちろん気持ちの問題ですっきりだ。


 空いている席は無事見つけられたけど、結構周りに人がいる。参加人数が多いのが改めてわかるな。


「そういえば田植先輩。私今気づいたんですけどこれ見ましたか?」


 みんなで座ってラーメンを食べ始めていると、左隣の中見さんがスマホを見せてきた。


「これは、今回の審査員のアカウント?」


「そうです。そしてほらなんかこんなこと書いてますよ」


「……今回の大会も変わったメニューで勝負する人が結構いる……! 中でも私の注目は堂々とお子様ランチのレシピを出してきた人たち……って注目してんのかよ」


「そうみたいです。よかったですね」


「まあ、即失格とかではなくて……受け入れてくれるみたいでよかった」


 僕は自分のスマホでも見てみた。


 そうか。じゃあ後は実力がどれだけ伴ってるかってところだな……。


 僕はスマホを閉じて、しょうゆラーメンを味わった。






 昼食後。まだまだ時間があるので、僕たちは、あたりを探検というかうろちょろしていた。


「ここって、普段は料理の道に進みたい人が集まる学校なんですよね。すごいですね」


 中見さんが廊下を歩きながらそう言った。


「あ、でもちゃんと運動施設があるよ」


 萌門さんが指差した窓の外には、バレーボールコートがあった。


 と、その時、


「一緒にバレーボールやりませんか?」


 見知らぬ学校の人が後ろにたくさん立っていた。


 うわこういう唐突なの無理。コミュ障なことを再確認する絶好の機会みたいな。


「やります!」


 だけど、僕の代わりに元気で社交的な浜辺さんが返事をした。


「だけど、ここって勝手に使っていいのかな?」


 萌門さんがなぜか真面目ポジションに立ってそう言った。


「いいらしいですよ。私たち許可とってボールも借りました」


 見知らぬ学校の人が答えた。


「あ、じゃあ一緒にやらせていただきたいと思います……」


 頭の中で台本を決めていた僕はそれを読み上げて堅くそう言った。


「じゃあ、学校対決しましょう! ちょうど六対六だし」


 向こうの提案で、バレーボール対決をやることになった。





「えいっ……ふんっっ!」


「ふわぁぁぁぁ……!」


 阿田さんが運動音痴美少女みたいに綺麗にレシーブをからぶる。


 ていうか相手料理部じゃない説があるな。バレーボールうますぎな。全員女子だけどなんか背高い気もするし。


 ちなみに僕はバレーボールはあんまりやったことないけど、よくテレビで見てはいる。バレーボール選手の太ももいいよね。


 だから少しはできると思うんだけど……。


「先輩来ました!」


「お……」


 やばい届かない。と思ったら昔のくせで足を出していた。


「なんで蹴るのたうちゃん!」


「なんかつい……届かなくて」


 やばいなこれ。この下手さだと相手に申し訳ないのでがんばろ。



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お読みいただきありがとうございます。

あんまりのんびりしてなくてごめんなさい。


十万字を超えました。

初めは十話完結予定だったこの話が十万字になったのは読んでくださる方がいるからで、こんな変な話なのにここまで読んでくださったことに感謝しています。ありがとうございます!

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