調理開始
「なんですかその自信のなさは! 先輩!」
「ああはい……」
「ダメだよたうちゃん。チーム名訊かれた時なんで名簿指差して『これです』っていうの?」
「ごめん……だけど変なチーム名だから恥ずかしいからさ……」
「何にも恥ずかしくないですよ先輩、事実を並べただけなんですから」
「そうだな……わかったよそう思うから今から」
僕は後輩たちに説得される形で、チーム名を恥ずかしがることをやめた。
そういえばだいぶ前に、みかんに、お子様ランチを作っていることを恥ずかしがることはないって言われたな……。
そうだな。確かにもう少し自信を持たないと。
会場は、それぞれの部屋に調理台が並んでいるところ。たくさんの部屋に分かれている。
自分たちのチームの番号(あと名前もあった……)が書かれた札が置いてある調理台にたどりつき、周りを見てみると、少し離れたところに、万佐樹たちのグループがいた。つまりおそらく試食する審査員たちが同じっていうことだ。
調理開始まではまだ時間があるので、着替える前にトイレに行ったりゆっくりしたり。
コンテスト三日前にWEB経由であらかじめ献立提出をしているので、今から特に相談することもない。
しかし、この状況だと、かなり周りの様子が見える。
周りが本格的な料理を作っている中、自分たちがお子様ランチをちゃんと思うように作れるのか。
そこがポイントだろう。
有利な点もあって、今回の料理は、試食用なので量を少なく作る。
お子様ランチはもともと子供用の少なめの量の料理を究極まで極めたものといっても差し支えないので、その点では他の料理と比べてやりたいように作れるだろう。
……そういえば、万佐樹たちはお子様ランチを作るのだろうか。それとも他の料理を作るのだろうか。
わからないけど、周りはあまり気にしない方が良さそうだ。
やがて、時間が近づいてきて、僕たちはエプロンや帽子を被り、スタンバイしていた。
衛生的な格好をした試験監督のような人が入ってきた。
もともとみんなマスクもしていて衛生に気を遣っている状態なのであまりしゃべっている人はいなかったが、さらに静かになった。
そして、放送が流れた。
開始を合図する放送だ。
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