みかん⑥レストラン
七割くらい水族館を周り終えたところで、お昼の時間帯になった。
私も凛太は、レストランに行くことにした。
ほぼ全面窓のレストラン。人は多いが、窓の外を見れば、綺麗な形の砂浜に、波がゆったりしたリズムで打ち寄せていた。
私は向かいに座った凛太に視線を戻した。
そろそろスイッチが入りそうだと思っている。
だって、今日の凛太は普通だった。
あまりに普通すぎる。お子様ランチの話をしないし、普通に私の隣で水族館を満喫していた。
ある意味で、理想的なデートだったのかもしれない。だけど、凛太はおそらく普段はお子様ランチのことばかり考えているわけで、だから、そろそろ限界がきて、おそらくきっかけはここのメニュー……。
「おおおおお……! すごいお子様ランチがある、が……」
やっぱりここだと思った。だけど、凛太の顔は天気の良い外の海の景色と対照的な感じになっていった。
「どうしたのですわ?」
「ほら、ここに……なんともひどいことが……」
凛太が指をさしたところ。指さきよりだいぶ小さな字で、「お子様ランチのご注文は、小学生以下の方に限らせていただきます」とあった。
「ああ……よくあるルールですわ。残念でしたわね」
「絶対……本物を見て、そして味わいたい……」
メニューに頭を近づける凛太。水のコップにひじが当たりそうになっているので私がずらす。
「そうだ。みかん……今思いついたことを実行するために……頼みがある」
「なんですわ? 凛太がお子様ランチを食べるためだったら、協力したいですわ」
「……女子小学生のふりをしてほしい」
「……ぜっったいにそれは無理ですわ。何があっても凛太が困りに困っててもしませんわ」
凛太、突拍子も無いことを言いすぎ……。したとしても一瞬でバレるのに、そんなことしたくない。ダンスで大失敗した時より恥ずかしい。
「まあ嫌だよな。ごめん……JSのふりはさすがに」
私がとても嫌そうな顔をしていたのか、凛太は私の胸を見てそう言った。もしかしたら胸の大きさを見て言ったのかもしれない。もうそこはどっちでもいい。
「こうなったら、最後の手段……僕は、本物にお願いする……」
そう呟いて凛太が立った。
向かう先には……羽有くんと、女子小学生三人が楽しそうに話していた。
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