楽しんだ後、プールが凍った
「やっともと通りになったな……」
僕はすぐ横で楽しそうにビーチボールをぽんぽんしている三人をのんびり浮きながら眺めていた。
つまり三人の様子がプールに入る前に戻ったということ。
ぶへ。
ビーチボールが僕の顔面に日食のようにぴったり重なった。
三人が爆笑しているのが見えた。笑い声は水音とぼくの後方で遊んでいる小さな子たちで聞こえないが。
ビーチボールは僕の顔より大きいから僕の後ろから見れば金環日食かな。僕が小さいの頃くらいにそういえばあったな、懐かしい。
僕はぷかぷか浮いているビーチボールを手にとって山なりに打ち返した。
よし、雰囲気が平穏なことだし、僕もプールを満喫してやろう。ぼくは三人に混ざりに行った。
ここから、可愛い水着美少女たちとのぽんぽんぽよんぽよんビーチボール遊びの始まりだ。ちなみにぽんぽんはビーチボールを打ち合う音、ぽよんぽよんは何かがリズミカルに揺れる音だから一応解説をつけておく。
そしてその後は流れるプールで追いかけっこ。楽しすぎる。ていうか、何周流れたか全くわからないほど流れ続けた。
あまりに僕が今まで経験したことない空間すぎて、そろそろお子様ランチというものがなんだったか忘れそうになった頃、休憩することになった。
座って休んでいる時、
「てか、みかんと凛太はさ、私たちに気遣わなくていつでもいちゃつきオッケーなんでもオッケーだからね」
未来がちょっと笑いながら言った。
「というか私と未来、ちょっと離れまーす」
あ、みかんと僕を二人きりにするつもりだな。
未来と遊びに行くの久々だし、柚川とはそこまで話せてなかったのに。
逆に向こうが気を遣ってるから申し訳ないな。
と思いながらみかんを振り向こうと思ったらみかんがいない。
見れば普通に未来と柚川と一緒に僕から離れていた。
僕を一人にして何がしたい。
「みかんー! なんでこっち来るの? だめじゃん」
「……だって、いきなり二人にしようとするからですわ」
「え、だって無限に二人でいるんでしょいつも」
未来が不思議がって、すべすべ紅葉と同じくらい幼い顔になる。確かに僕と二人で緊張する理由はないよな。
「だって……格好が水着ですわ……」
みかんがもじもじするから僕は太ももを見てしまっていてみかんの顔を見ていなかった。けどきっと恥ずかしがるみかんの顔は、いつもと違った風に可愛かったに違いない。
そしてみかんの太ももと太もも、つまりダブル太ももを眺めながら僕は思い出した。
水着をさりげなく褒めるのを忘れていた!
なるべく迅速に実行に移すことにしよう。
と、みかんの方を見ればみかんはぼっちになっていた。どうやらみかんがもじもじしている間に二人が逃げてしまったらしい。
仕方なさそうにみかんは僕の方へ歩いてきた。
僕もみかんの方へと歩いて行き、ちょうど中央くらいで僕とみかんは出会った。
運命の瞬間かな。お互い水着だけど。
というかチャンス早速到来したじゃん。
「みかん水着……」
僕が言いかけたと同時にみかんが水着を隠した。
いや、水着を隠すと露出度が上がったように感じるという錯覚みたいなのが起きるんですけど。
「水着、似合っててすごい可愛いな……」
よし。言えたぞ。
「どどどどどど、どういうところですわ?」
うわ、トナカイの大群かなんかが押し寄せる擬音の後に難しい質問が来た。
そうだな……。
「柔らかそうなところとかかな……?」
ミスった。これ水着の感想じゃなくて、みかん本人についての感想じゃん。しかもへんたい度丸出しの発言。
ああ、プールが全部凍ってる気がする。
すごいな、凍ったプールの中を小学生たちもおじいちゃん達もみんな泳いでいる。
みんな寒くないのかな。
僕は全身が凍って動きませんね。
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