二度目の電話
万佐樹はただノリで来ただけだと思っていたが、真面目にお子様ランチの作り方を知りたいようで、僕に質問を色々して来た。
万実音ちゃんは僕と万佐樹の間に可愛らしく座って、可愛らしくスプーンをお皿から口に動かしている。
「そこまで詳しく知りたいのなら……僕のレシピノート……写真撮るか?」
「え? まじかよ。ありがと。よし、これで俺も第一歩を踏み出せるな」
「やる気あるな……」
僕はそう呟いて、自分の食べ終わった食器を持って行くついでに、ノートを持って来た。
「はい……」
「うおお! 細かい……! しかも見やすい! そのまま本になって全国の兄が殺到してバトルしてまで買いそうだな」
「全国の兄というのはさすがに大袈裟な……」
というか妹にお子様ランチを作ることを目標にしている男子高校生なんて多分ほとんどいない……というかこの二人だけの可能性がお子様ランチが神料理である確率と同じくらい高い。
「あ、じゃあ、ここでシャッター音ずっと鳴らすのも悪いから、廊下で撮って来るな」
万佐樹はそう言って若干万実音ちゃんと離れるのが寂しそうな感じを見せ、廊下に出て行った。ことあるごとにかしゃりんしてくる花凛とは大違い。
「私と花凛、少し私の家に行きますわ」
ここで、みかんと花凛が立ち上がった。
「どうした……?」
「みかんが本貸してくれるっていうから借りに行こうと思ってー」
「あ、なるほど……行ってらっしゃい」
僕は二人を座ったまま見送った。
そして……万実音ちゃんと二人だ。
「たうったうだけになったね〜」
ゆっくり僕のお子様ランチを味わっていた万実音ちゃんもちょうど食べ終わった。
「おいしかったよ〜。すごくうれしくて、全部、また食べたくなるよ」
「そうか……ありがと」
そう、僕は少しでも多くの子供たちにそう思ってもらって、笑顔になってもらうためにお子様ランチを作るんだ。そうだな……それが大きな目標。
心の中にそんな気持ちが育ち始めたと同時に、スマホが鳴った。
またかよ。また未来だ。しかもなんか嫌な予感がする。
「もしもし」
『もしもし』
「たうったうでんわきたの?」
「あ、そう……ちょっとごめん」
『なんか小さな女の子の声っぽいのが……?』
「ああ、そっちまで聞こえてたか……」
『っているのそこに?』
「いるが……」
『まさかふたりきりじゃないよね?』
「二人だが……」
「え? みかんじゃない女の子……しかも幼い……と二人? なにが起こったの? 私凛太信用してもいいんだよね? お昼は体育倉庫……いや、きっと私が勘違いしているだけで、問題ないよね」
「僕は普通に問題ない……と思う。友達の妹だから……」
「友達の妹だとおっけーなの? なんかよくわからないけど……私は凛太を信じていて、きっと今もこれからもずっとそうだよ!」
「そうか……ありがとう」
未来の電話は僕がお礼を言って、そこで切れてしまった。要件はきっと遊びに行きたいって話の続きのつもりだったのだと思う。
体育倉庫の時もこんな感じで電話切れてしまったので、話が進んでいない。
次は僕から電話かけるか。
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