夜の考え事
みかんをお姫様だっこして、写真も十かしゃりんくらい撮られてしまった夜。花凛は寝て、僕は自分のベッドの中で、未来と話したことを思い出していた。
告白されてからの、続きだ。
「……ごめん。僕は……みかんと付き合ってて……」
「やっぱりそっか……そんな気がしてたよ。でも私の気持ちを知ってほしいというか……伝えたくなっちゃって……」
「……」
「じゃあ、沙愛の応援行かないと、あ、沙愛ってさっきまで凛太達が一緒に応援してた人ね」
「ああ……」
未来は勢いよく立ち上がった。そして、僕より先に歩き出す。
僕はついて行った。未来はいつもと同じスピードで歩く代わりに、体育館に戻るまで少し遠回りをしていた。
その間に、涙を乾かしていたのかもしれない。その涙は、何による涙だったのか。
「ふう……」
難しい。僕の未来に対するイメージは、おそらく、自分にないものを持っている魅力的な女の子だ。ぼそぼそ喋りでない、明るい口調。様々なプレーで相手に挑戦する未来の卓球のスタイルは、僕と対照的だ。
みかんや花凛、料理部の後輩たち、そして児童館の小学生たちにお子様ランチを美味しいって言ってもらっただけで満足している僕とは、本当に対照的だ。
僕はみかんに好かれるような人なのか、僕は考えていた。そして違う気がしてきた。
ならばすることは一つ。
僕は新しいことに一歩踏み出す必要がある。
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