#17:バックステージ
「ステージの結果について、
男の冷たい声がする。私の好きではない声。この声から、いつ逃れられるだろう。しかし私は我慢しなければならない。もう少しだけ。
本当にもう少しだけだろうか。あとどれくらい? 判らない。考えないでおこう。信じ続けよう。
「今回のステージでは初日に肩書き変更が不能となる
それは、予想していた。
「まず、第一の競争者に対する過剰な報復行為に対する注意。監禁後、衣服を剥がれるという辱めに対する報復が過剰であった。同様に相手の衣服を剥ぐことによって達成されており、銃による威嚇は不適切である。
次に、第二の競争者からターゲットを奪取する際の過剰な暴力行為に対する警告。死角からの襲撃により相手を昏倒させるだけでなく、ターゲットを奪った後にも更に打撃を加え、重度の負傷を負わせた。回復可能な負傷ではあるものの、不必要な乱暴行為である。本警告に伴い、ターゲットを没収する。
なお
「ありません。全て受け容れます」
「次に、通信機逸失時の行動について。
「理解しました」
「次に、競合している
「それは不当な指示と考えます。今回私は彼に対し、虚偽の情報を間接的に提供して、彼がターゲットの存在場所へ来ないよう仕向けました。情報の真偽の判断は彼の責任であり、私が接触を控える理由にはならないはずです」
ターゲットはイデオン洞窟にあった。フェードラは祖母アリアドネから彼へのメッセージとして、イデオン洞窟とディクテオン洞窟を教えることになっていた。私はフェードラが彼に会う前に、ディクテオン洞窟のみ伝えるよう提案した。彼はイデオン洞窟のことを、リタから聞いて知っているはずだ、と。
彼をイデオン洞窟に来させたくなかった本当の理由は、私がSVに報復したかったからであり、彼とフェードラをディクテオン洞窟で二人きりにしたかったから。だが別の理由として、私を観察する人たちを欺くことにもなると考えていた。
「
「では彼との競合の解消を要求します」
「現状ではシステムの仕様上不可能である。言い換えると、
観察者たちは何を危惧しているのだろうか。私と彼を結び付けておきながら、なぜ今さら切り離そうとしているのだろうか。私がこの世界の真実に近付いたのか、それとも彼か。
あるいは、私がこれ以上彼を知ることに、何か問題があるのだろうか?
私は、アルテムに会いたいだけなのに。この世界で。
「では可能な限り善処します」
「その回答をもって制約と見做す。以下、先ほどのステージに対する質問を受け付けます」
「2度の地震による負傷者や死者はなかったの?」
「仮想世界内で地震を実際に発生させたわけではありません。体感として認識したのは
理解した。何か不自然なものを感じたのは、動物が動揺しているところを見なかったからだ。もっとも、動物の行動も制御しようと思えば可能なのだろうけれど。
「他に質問はありません。次のステージへ」
「では、ハンナ・イヴァンチェンコは第19ステージに移ります。このステージでは、
ティーラの姿が現れた。愛すべきティーラ。私の第3の姿。ようやく彼に会わせてあげることができそうだ。
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