ステージ#11:第6日

#11:第6日 (1) モノローグ (6)

  第6日 2037年10月16日(土)


 今日は、雨が降るだろう。

 もしかしたら、雪になるかもしれない。風が冷たくなってゆく。夜明けにはまだ時間がある。明けても、気温は上がらないだろう。だが、移動には支障ないに違いない。

 それでも、濡れながら歩くのは寂しい。二人でいれば、その寂しさに耐えられるかもしれない。しかし、私は独りだ。彼もまた、独りだ。

 暗い夜空。そして、暗い谷底。その境目すらも判らない、一面の闇。私の心も身体も、この闇に溶けていきそうだ。いっそ闇に溶けてしまいたい。そうすればあなたと一つになれるだろう。光すらも要らない。あなたを見る必要がなくなるから。

 彼はなぜ間違えたのだろうか。私の導きが届かなかったからだろうか。彼が独りでいることを望んだからだろうか。

 彼は私を必要としていない。しかし、私には彼が必要だ。もう一人の競争者コンクルサントを攪乱する道具として。だが、彼は私の手の中から逃げてしまう。私を拒絶するかのように。意図したものではない。彼の身体が、自然に動くのだろう。

 それは無意識に危険を察知する能力かもしれない。私は彼にとって、危険な存在。

 朝露が身体を湿らせる。濡れた土の香り。西風が運んでくる、雪の匂い。夜が明ければ、私はそちらへ歩き出す。

 空が私を呼んでいる。水が私を求めている。風が私を捜している。

 光に身をゆだね、闇に身を浸す。そして私は、あなたに巡り会うことを願う。私はあなたを追い続ける。私は信じ続ける。あなたに会える日が、まもなく来ることを。

 東の空が、明けそうな色をしている……

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